ジェーン・スーとサンキュータツオ 歌詞がわからない問題を語る

ジェーン・スーとサンキュータツオ 歌詞がわからない問題を語る 東京ポッド許可局

ジェーン・スーさんがTBSラジオ『東京ポッド許可局』にゲスト出演。「曲の歌詞がわからない」というサンキュータツオさんと歌詞について話していました。

(サンキュータツオ)今日はそんなスーさんと語りたい議題がたくさんあるんですけども……

(プチ鹿島)タツオがですね、またちょっとわけのわからないことを言い出しはじめまして。ちょっとこれはスーさんに来ていただいた方がいいんじゃないかな? ちょっと叱っていただいた方がいいんじゃないかな?っていう。

(ジェーン・スー)聞きました。

(サンキュータツオ)叱り前提、やめてくださいよ。あ、聞いちゃった?

(プチ鹿島)僕らはそんなに仕掛けてないんですけど、タツオの方からポロッと出てきちゃったんですよ。「歌詞がわからない」っていう。

曲の歌詞が頭に入ってこない

(サンキュータツオ)これは初めて聞く方にも説明をしておきますと、僕は曲の歌詞が頭に入ってこないっていう。昔からそんなのがありまして。

(プチ鹿島)もう、やめとけ……

(サンキュータツオ)「この歌詞、いいよね」とかっていう人の気持ちがわからない。「だったら詩集を読みなさいよ」と。また、「ボブ・ディランの歌詞とかを評価するのもおかしい。曲を評価しなさいよ」っていうのもあるわけで。

(プチ鹿島)そのへんでいいんじゃないか?

(サンキュータツオ)いや、これスーさん、どう思いますか?っていう話ですよ。

(ジェーン・スー)あのね、タツオさんに歌詞は向いていてない。

(一同)(笑)

(プチ鹿島)向いてないんだ(笑)。

(サンキュータツオ)えっ、歌詞って向き・不向きがあるんですか?

(ジェーン・スー)あのですね、理屈っぽい人にとってはちょっと難しいかもしれないですね。たとえば私も作詞はやりますけど……「(歌詞が)降りてきた」とか言うことがファッて言える人とそうでない人がいるじゃないですか。作詞。

(サンキュータツオ)俺、アンチ・「降りてきた」。

(ジェーン・スー)でしょ? すごいわかる。

(プチ鹿島)タツオが「降りてきた」っていうのが本当に嫌いなんですよね。

(ジェーン・スー)わかります。で、私もどっちかって言うと非・「降りてきた」なんですよ。「降りてきた」っていう表現はどうかな? とも思うんですけど、でも「降りてきた」っていうことが言える人の感性とか説明しきれない行間みたいなものが情緒として人の心に訴えかけるんですよね。

(プチ鹿島)それぐらい自分中心な人の方が、堂々といい相撲を見せてくれるみたいな。

(ジェーン・スー)で、「ミュージカル的なものの……」っておっしゃっていたじゃないですか。

(サンキュータツオ)はい。最初、抵抗ありました。

(ジェーン・スー)だからそういう、理屈の人か、そうじゃないか? 理詰めか否か?っていうところで言うと、作詞の人はそうじゃないものの方がよく評価されたりはしているので。

(サンキュータツオ)作詞の評価っていうのはどういう評価なんですか?

(ジェーン・スー)いや、全然「いい/悪い」とかじゃなくて、たぶん「好き/嫌い」だけだと思うんですよ。

(サンキュータツオ)なるほどね。ああ、そうか。

(ジェーン・スー)だからその意味として理解しようとすると、そりゃあ穴だらけですよ。

(サンキュータツオ)まあまあ、もちろんそうですよね。

(ジェーン・スー)その間をみんな埋めて……だから短歌とか和歌とか。

(サンキュータツオ)ああ、なるほど。俺、もう短歌がマックスだな。31文字がマックスだな。それ以上になると、最初なにを言っていたかちょっとぼんやりしちゃうな。

(ジェーン・スー)だから理詰めの人には……だから私も気をつけないと基本理詰めの降りてこない派なので。すごい理詰めの歌詞みたいになっちゃって。「これ、つまんな!」って却下して。自分の中の……

(プチ鹿島)そういう時ってどう出すんですか? 自分の中の理詰めじゃないのを……

(ジェーン・スー)あの、爪の先ほどいる「降りてきた」メンタリティーの人を自分の中でパーッと拡大して。「降りてきた」って言えないですからね。

(マキタスポーツ)そうだよ。でも職業作詞家とかっていうのはほぼ、理詰めというかちゃんと自分の理屈で作っているんでしょ?

(ジェーン・スー)そういう人もいると思うし、自分の感覚で作っている人もいるし……

(マキタスポーツ)シンガーソングライター的な人とかっていうのは「降りてきた」系のこととか言いがちなイメージはあるけどな。

(プチ鹿島)お笑いで言うと僕ら、ボケとかツッコミでいろいろと物事をたとえますけども。やっぱり大いなるボケの方が自分中心の物語をバーン! とてらいなく出せる人の方がいいっていう話ですよ。だけどスーさんって、どっちかっていうとツッコミも全然できるじゃないですか。そこらへんの葛藤みたいなのって……

(ジェーン・スー)難しいです。だから、歌っている人のことを考えて、「その人だったら何て言うかな? その人だったどうかな?」っていうところは考えますけど。さっきの「リンリン・ランラン ソーセージ」とかもやっぱり西城秀樹さんが歌うって思うとあれが面白さが2倍にも3倍にもなるとか。そういうちょっとした総合芸術というか。まあ、大抵いまは……ボブ・ディランはわからないですけど、大抵いまは曲先行じゃないですか。曲が先にあって、そこに言葉をハメていくわけだから、ある種そこは、音のハマりとの相性っていうところで言葉を選ばないといけないのもあるし。

(サンキュータツオ)ふーん。

(ジェーン・スー)たとえば、あと「叫ぶ」なのか「叫べ」なのかっていう風に語尾が終わる時に「叫ぶ!」っていう風に切る音で終われば「叫ぶ!」だけど。ワーッて最後に伸ばして、「叫べー!」みたいな感じだったら、「べー」の方がたぶん歌いやすいだろうなとか。そういう事情がいろいろ入ってくると、たぶん文章としてはそんなに……

(サンキュータツオ)そっか。だからわかった。俺はセンテンスとして理解しようとしているんだ。

(ジェーン・スー)そう。

(マキタスポーツ)タツオはね、文字とか文章が好きすぎるんだよ。

(サンキュータツオ)まあでも俺は、理屈っぽいのかな?

(ジェーン・スー)うん。何を言ってるの?

(プチ鹿島)何、言ってんの?

(マキタ・スー)(笑)

(マキタスポーツ)はい。いま張り手が飛びました。ブルロープで引っ叩かれましたよ(笑)。

(サンキュータツオ)俺は感覚すら、理屈で御したい。

(ジェーン・スー)わかる、わかる。言いたいことは。理屈に勃起しすぎだよ。本当に。

(マキタスポーツ)(笑)。サーベルで突かれましたよ。

(プチ鹿島)突かれましたね。危ないですよ。

(サンキュータツオ)だってプロが感覚に頼ったら、安定できないじゃん。

(ジェーン・スー)Instagramできないタイプ。

(サンキュータツオ)できない! Instagram、できない!

(ジェーン・スー)超ツイッタラー。そういうことですよ。

(プチ鹿島)Facebookとかよりはね。

(マキタスポーツ)写真多め、無理だね。

Instagramができないタイプ

(サンキュータツオ)写真、無理。スーさんは音楽を聞く時はどうしているの? 歌詞、ばっちり入ってきますか?

(ジェーン・スー)フレーズが入ってくるのと、あとやっぱり歌詞が……いや、グワーッ持っていかれるのもありますよ。もちろん。

(サンキュータツオ)それは感情が持っていかれる?

(ジェーン・スー)そうですね。感情がワーッと持っていかれて、もうストーリーが全部頭の中に入ってしまうようなものもあるけど……だいたいはやっぱり1個、ズバッと忘れられないフレーズがあるとか。

(サンキュータツオ)たしかにな。うん。口をついて出るみたいなね。そういうのはまあ、あるわ。

(ジェーン・スー)あとは行間のニュアンスっていうのを好き勝手に解釈することができるから、歌詞って面白いというところもあると思うんですよね。

(サンキュータツオ)そこまで味わってないわ。

(ジェーン・スー)基本、全部理屈で自分自身を説得させることが気持ちいいわけじゃないですか。

(サンキュータツオ)うん。理屈じゃない部分が自分の中にすごく多いんです。

(プチ鹿島)ああ、だからこそ、理屈に頼るっていう?

(サンキュータツオ)だからどこまでが理屈なのか?っていうことを考えたいっていう……

(ジェーン・スー)作詞してみたらどうですか?

(サンキュータツオ)逆に? 難しいよ、俺。

(ジェーン・スー)マキタさんが曲を作って、作詞して。

(マキタスポーツ)曲先で?

(ジェーン・スー)曲先で(笑)。

(プチ鹿島)そういうリハビリ、あるよね。

(ジェーン・スー)理屈っぽいのを書くと思いますよ(笑)。

(プチ鹿島)『理屈っぽい歌』っていう(笑)。

(サンキュータツオ)(笑)

(マキタスポーツ)『理屈』っていうタイトルで(笑)。

(サンキュータツオ)『理屈』。いや、スーさんに書いてもらって、俺が歌うだったらまだいいけどさ。

(ジェーン・スー)いやいやいや、生みの苦しみとか、「降りてきた」とかを。

(サンキュータツオ)ああ、降りてきちゃうかな、俺?

(マキタスポーツ)タツオの私小説を読みたい。

(サンキュータツオ)私小説?

(マキタスポーツ)逆に、ちょっと歌詞から離れちゃうけど。どんだけそういうの、できるかって。

(サンキュータツオ)ああ、私小説は全然僕、書きますよ。

(マキタスポーツ)テクニックで書いちゃわない?

(サンキュータツオ)テクニックはないでしょう。だって、お笑いやる時だってそうでしょ? 技術論はもちろんあっても、でも最終的にはそこ、理屈じゃないっていうのはわかるじゃない。やれば。そういうところだと思いますけどね。

(マキタスポーツ)読んでみたい。

(サンキュータツオ)もう2人の顔が意地悪な顔に……

(プチ鹿島)っていう理屈だろ?

(マキタ・スー)(笑)

(サンキュータツオ)もう意地悪なんだよ。

(ジェーン・スー)『理屈』。『火花』の次は『理屈』。めっちゃ売れる!

(プチ鹿島)いいなー!(笑)。

(サンキュータツオ)えっ、スーさんにとっての”いい歌詞”っていうのはどういう歌詞なの? 一般論じゃなくて。

ジェーン・スーにとってのいい歌詞

(ジェーン・スー)ええと、私が好きなのは、パッとシーンが、絵が見えてくるとか色がボン!っと出てくるとか。言葉によって次のイメージっていうのが出てくるものが好きですね。

(サンキュータツオ)ああー、なるほどね。はいはい。『芝浜』です。桂三木助です。三木助っていう人は「落語は絵です」って言ったの。想像をさせること。絵を思い浮かばせることっていうことを言った人なの。だから『芝浜』とかの描写がすごいきれいとかっていう話……全然興味ねえだろ!

(プチ鹿島)あー、三木助派なのね。

(ジェーン・スー)(笑)

(サンキュータツオ)鹿島さん、適当すぎる(笑)。もう目が眠くなっているもん。

(プチ鹿島)いやいやいや、ちょっといま、感じ入ってたね。

(タツオ・スー)(笑)

(サンキュータツオ)歌詞については歌声を楽器の一部として考えて、音と判断すればいいっていう話もあったんですけど……

(ジェーン・スー)それがいま、互いにあるはありますね。というのは、たとえば私たちの世代で……って言っちゃいますけども、キョンキョンの『ヤマトナデシコ七変化』ってあったじゃないですか。あの時に「純情・愛情・過剰に異常♪」ってすでに韻も踏んでいるし、一音に「じゅんじょう、あいじょう、かじょう……」って入れているじゃないですか。あれはあそこに「広い、狭い、赤い、怖い」だとやっぱりテンポ感が出ないんですよ。

(サンキュータツオ)本当だ。面白い。

(ジェーン・スー)モー娘。とかすごいですよ。歌詞をどう詰めていったらテンポ感が出るか? とか。あと、前の方にインパクトを持ってくるとか。後ろに持ってくると特にズドン、ズドンとね、重い感じに耳に入ってきちゃうんですよ。だから前に詰めるとか。

(サンキュータツオ)へー、面白い! ちょっと歌詞、面白くなってきました。

(プチ鹿島)M-1の漫才みたいな感じじゃないですか。どこに何を……とか。

(サンキュータツオ)本当だ。本当だ。たしかに。

(ジェーン・スー)最近その構造論が楽しくてしょうがなくて。

(サンキュータツオ)やっぱ理屈っぽいじゃないですか。

(ジェーン・スー)そうなの。私たち、近親憎悪だよね。

(サンキュータツオ)(笑)

(ジェーン・スー)だからその、誰にでも書くことはできると思うんですよ。歌詞っていうのは。替え歌みたいに言葉をハメていけば。ただ……

(サンキュータツオ)ハマらせ方とかってことですね。そっか、なるほど。

(ジェーン・スー)画竜点睛を欠く、みたいな歌詞だったら書けるんですよ。ただそこに、目を入れられるかどうか?っていうところがやっぱり、センスだけじゃない技術があるとか。で、構造で言うとそれこそお笑いとかも全く気にしないで、面白いか面白くないかだけで見ていてそれでいいんだと思うんだけど、はっ!って気がつくと、「ああ、こうやって気持ちをここで引っ張っているんだ」っていうのを気がつくじゃないですか。

(サンキュータツオ)あるあるある。

(ジェーン・スー)そんなことを言ったら、映画もそうだし、ドラマもそうだし、ラジオもそうだし。なんかもう、そういう構造が超面白いって思って。

(マキタスポーツ)女性では珍しいよね。

(サンキュータツオ)たしかにね。

(プチ鹿島)気づきましたか。

(ジェーン・スー)(笑)。なんですか、その開いちゃいけない扉を開いちゃった、みたいな。「もう、帰れません」みたいな(笑)。

(サンキュータツオ)影のフィクサー感が。

(マキタスポーツ)そこで待ち伏せするんじゃないよ(笑)。

(サンキュータツオ)いやー、ちょっと歌詞、僕興味出てきました。

(ジェーン・スー)たぶん詰めたらすごい好きだと思います。

(サンキュータツオ)たぶんね、だからお笑いのネタでも、『オンバト』時期にあったじゃないですか。3分半と4分半に山を持ってこよう、みたいな。だからそういうのがあるんでしょうね。Aメロ、Bメロ、サビでちゃんと盛り上がるように……みたいな。それに合わせた歌詞がちゃんとあるっていうのがある……

(マキタスポーツ)そういうロマンはありますよ。

(ジェーン・スー)あと、やっぱり口にした時に楽しいとかいうのがすごく大事。

(サンキュータツオ)口が気持ちいい、楽しいね。

(マキタスポーツ)あと、歌う人の声質も結局すごい影響があるからね。キョンキョンのちょっと舌っ足らずな感じで「純情・愛情・過剰に異常」って言われた絶妙感とかさ。この歌詞でこの歌手の声っていうシグネチャーのモデルの声じゃないと……っていう部分はあるよ。

(サンキュータツオ)俺、でもそれで言ったら”ジェーン・スー”っていい歌詞だと思う。曲、ついてないけど。言いたくなる名前じゃん? 「ジェーン・スー♪」って。濁点が入っているのって、言いたくなるのよ。ジェーン・スー。

(マキタスポーツ)「ジェ」でちょっと口の中に抑圧が上で「スー……」って言っていく気持ちよさはあるよね。

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました