高橋芳朗 ドナルド・トランプ大統領誕生とミュージシャンの反応を語る

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高橋芳朗さんがTBSラジオ『ジェーン・スー生活は踊る』の中でアメリカ大統領選とドナルド・トランプに対する著名ミュージシャンたちの反応について紹介していました。



(高橋芳朗)こういうテーマでお送りします。アメリカ大統領選、ドナルド・トランプに対するミュージシャンの反応は? みなさんもご存知の通りアメリカ大統領選、日本時間の水曜日に開票が行われまして、大番狂わせでドナルド・トランプの勝利という結果になったわけでございます。で、いま後ろで流れているのは、ローリング・ストーンズの『You Can’t Always Get What You Want』。1969年の曲なんですけども。



(高橋芳朗)この曲をトランプが選挙期間中にキャンペーンソングとして使用して。ストーンズに無許可で使用して、ストーンズ側から使用の中止を求める抗議を受けたっていう経緯があるんですけども。にもかかわらず、トランプは勝利宣言の後で会場から退場する時にこの曲を後ろで流しながら去っていったというですね。

(ジェーン・スー)うん。

(高橋芳朗)ストーンズはキース・リチャーズが「トランプが大統領になったら悪夢だ」っていう風に前からコメントをしていたんで、いまごろ激昂しているんじゃないかな? と思いますけども。で、このストーンズに限らず、今回のアメリカ大統領選ではほとんどのミュージシャンが反トランプの姿勢を打ち出していたわけで。トランプ勝利が報じられた直後は、そういったミュージシャンたちがSNSを通じて一斉に失望、落胆の意を表明して、なんかもうこの世の終わりみたいな感じになっておりましたけども。それでも、時間の経過とともに人々に団結を促して鼓舞するような力強いメッセージが増えていって。日本でも結構大きく報じられましたけども、たとえばレディ・ガガはトランプタワーにまでかけつけて、「Love Trumps Hate.(愛は憎しみに勝る)」と書かれたプラカードを掲げて抗議活動を行ったり……

レディ・ガガ Love Trumps Hate


(高橋芳朗)ヒラリー・クリントンのキャンペーンソングを歌っていましたケイティ・ペリーなんかはTwitterで「We Will Never Be Silenced.(私たちは絶対に屈しない)」みたいなメッセージを発信して失意にくれる人々を勇気づけたりしていました。


(ジェーン・スー)はい。

(高橋芳朗)で、今日はこの1週間、反トランプ・ヒラリー支持を打ち出していたミュージシャンたちが取った行動を振り返ってみたいんですども。ちょうど先週の金曜日ぐらいからですね。ミュージシャンの動きが活発化してきて。特にヒラリーを支援する無料コンサートが投票日に向けてほぼ毎日のように行われていたような状況で。主だったところではビヨンセ、ジェイ・Z、ブルース・スプリングスティーン、スティービー・ワンダー、ボンジョビ、レディ・ガガ、マドンナなどなど、大物ミュージシャンがヒラリーをサポートする、もしくは投票に行こうと行動を促す無料コンサートを開催したり、パフォーマンスを行ったりしていたんですけども。日本では結構、ヒラリー有利と……

(ジェーン・スー)言われてましたね。

(高橋芳朗)伝えられていたんだけど、ミュージシャンがここまで積極的な行動に出ていたっていうことは、アメリカでは意外と……アメリカでもヒラリー有利とは言われていたんだけど、日本以上に「トランプが勝つかもな」っていう、そういう危機感というか、ムードが強かったのかな? という気がいたします。ミュージシャンの動向を見ているとね。

(ジェーン・スー)地域差がすごく出たりとか、いろいろ属性に投票がよってはっきりと分かれたなんてことが話題になっていましたからね。

(高橋芳朗)まず1曲目は、そんな動きの中から代表してパンクバンドのグリーン・デイの『American Idiot』という曲を紹介したいと思います。グリーン・デイは6日の日曜日にオランダで開催されたMTVのイベントでこの『American Idiot』という曲を演奏したんですけども。この曲ってもともと2004年にリリースされた曲で当時イラク戦争に向かったアメリカに意義を唱えた反戦歌なんですね。

(ジェーン・スー)はい。

(高橋芳朗)で、タイトル『American Idiot(バカなアメリカ人)』みたいな意味になるんですけども。ちょっと歌い出しの歌詞の大意を紹介しますね。「バカなアメリカ人にはなりたくない。メディアに支配されるような国はごめんだ。あのヒステリックな音が聞こえるか? いつの間にかアメリカは頭の中を操られちまっている」みたいな、こういう歌詞になるんですけども。グリーン・デイは6日のパフォーマンスでこの「アメリカは頭の中を操られている(The subliminal mind fuck America)」っていう部分の歌詞を変えて、「The subliminal mind Trump America(アメリカはトランプに侵されている)」みたいな歌詞に変えてパフォーマンスを行ったんですね。



(ジェーン・スー)はい。

(高橋芳朗)本来、イラク戦争の反戦歌だったこの曲が、トランプの当選に伴ってまた新しい意味を帯びてくるんじゃないかなという気がします。実際にYouTubeにアップされている『American Idiot』の公式ミュージックビデオのコメント欄を見てみると、「いまこそ聞かれるべき歌なんじゃないか」とか、「これが新しいアメリカの国家なんだよ」とか、そういうコメントが付けられていたりして。今後、なにかとこの曲を聞く機会、歌われる機会が増えてくるんじゃないかなと思います。じゃあ、聞いてください。グリーン・デイで『American Idiot』です。

Green Day『American Idiot』



(高橋芳朗)はい。グリーン・デイの2004年の作品で『American Idiot』を聞いていただいております。その他、投票日に向けたミュージシャンによる反トランプの動きとしては『30 days,30 songs』っていうキャンペーンが展開されておりました。「30日で30曲」みたいなタイトルになるんですけども。このタイトル通り、投票日の1ヶ月前から1日1曲ずついろいろなミュージシャンが反トランプの曲を発表していくというキャンペーンなんですけども……これ、どんどん参加希望者が、「俺にもやらせろ、俺にも歌わせろ」っていう人が増えていって、最終的に『30 days,50 songs』に。30日で50曲にまでなったんですね。

(ジェーン・スー)ふーん!

(高橋芳朗)これ、日本のApple Musicでも聞くことができます。で、今度はこの『30 days,30 songs』キャンペーンから1曲ご紹介したいと思うんですけども。エイミー・マンの『Can’t You Tell』という曲を紹介したいと思います。エイミー・マンは映画『マグノリア』の主題歌を歌った女性シンガーソングライターなんですけども。これがちょっとひねった歌詞になっていてですね。トランプの頭の中に潜り込んで、トランプの視点から歌ったような歌詞だったんですね。ちょっと歌詞の大意をご紹介します。

(ジェーン・スー)はい。

(高橋芳朗)「バカ野郎どもが仲間の前で俺を笑い者にする。メディアは俺を道化のように報じるが、俺に言わせりゃ大衆が俺を道化に仕立てようとしているんだ。誰か俺を止めないのか? 俺はこんな仕事につきたくない。こんな仕事、やりたくないんだ。俺は気分が悪いんだ」という、ちょっとツイストの効いた歌詞になっております。じゃあ、聞いてください。エイミー・マンで『Can’t You Tell』です。

Aimee Mann『Can’t You Tell?』



(ジェーン・スー)反トランプのキャンペーン『30 days,30 songs』からエイミー・マンの『Can’t You Tell?』を聞いていただきました。CMを挟んで、投票日のタイミングにニューアルバムをぶつけてきましたある黒人ラッパーの曲を紹介したいと思います。

(CM明け)

(ジェーン・スー)今日はドナルド・トランプに対するミュージシャンの反応についてお送りしています。

(高橋芳朗)最後に紹介するのはコモンという、ジェーン・スーさんも大好きな黒人アーティスト、ラッパーの『Letter To The Free』という曲を紹介したいと思います。これ、ちょうど1週間前、11月4日にリリースされたコモンのニューアルバム『Black America Again』の最後に収録されている曲で、このニューアルバムが選挙を視野に入れて、投票日を狙って作られたことは『Black America Again』というタイトルからも明らかだと思うんですけども。これは、言うまでもないと思います。トランプのスローガン『Make America Great Again』をもじったものですね。

(ジェーン・スー)はい。

(高橋芳朗)差別的な発言を繰り返すトランプに対する黒人アーティストからのレスポンスと考えていいと思います。で、この曲なんですけども、結構ゴスペル調の重厚な曲で。2番、セカンドバースの歌詞の一部を紹介しますね。まず、こういう一節があります。「Shot me with your ray-gun And now you want to trump me(レーザー銃で俺たちを撃ったやつらが、今度は俺たちを欺こうとしている)」と。これはいわゆるワードプレイ(言葉遊び)ですね。

(ジェーン・スー)そうですね。

(高橋芳朗)「レーザー銃(ray-gun)」はもちろんレーガン大統領のことで、「you want to trump me」はドナルド・トランプと引っ掛けているんですね。で、レーガンの時代に結構黒人は苦渋を味わっているから、そこにトランプを重ね合わせて「悪夢が再びやってくる」みたいなニュアンスですかね。歌詞を続けますと、「俺たちはいま、また憎悪と直面することになる。やつらはこの憎悪が”Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国にする”なんて言っているんだ。アメリカが前進できるかどうかは”Matter Of Black Lives(黒人の命の問題)”にかかわっている。やつらを自由にしてやれば、きっと俺たちも自由になれるだろう。アメリカがジーザスにジャッジされる時が来た」と。コモンがこのタイミングでニューアルバムをリリースしたのはもちろんトランプの当選を阻止するような目的もあったと思うんですけども……

(ジェーン・スー)はい。

(高橋芳朗)この歌詞を読むと、もうちょっと先のことも視野に入れた曲なのかなっていう気がしていて。仮にヒラリーが当選していたとしても、一度こうして憎悪の勘定がバラまかれて煽られてしまった以上、マイノリティーにとっては厳しい現実と直面せざるをえないというか。厳しい時代を迎えることになるっていうことだと思います。ただ、全て悲観的になっているわけじゃなくて、曲のサビでは「自由になれるから、いまを耐えよう あと少しだけ我慢しよう」みたいな歌詞を歌ってリスナーを鼓舞していたりするところもあります。じゃあ、聞いてください。コモン feat. ビラルで『Letter To The Free』。

Common『Letter To The Free ft. Bilal』



(高橋芳朗)はい。コモンのニューアルバム『Black America Again』からフィーチャリング ビラルで『Letter To the Free』を聞いていただきました。この曲、いまNetflixで公開されている『13th -憲法修正第13条-』という人種差別の問題を扱ったドキュメンタリーのテーマソングとしても使用されているので、興味のある方はこちらと合わせてチェックしていただきたいなと思います。


(ジェーン・スー)この監督(エヴァ・デュヴァネイ)って誰だろう? なにを撮った人だったっけ? 結構、「ああ、そうなんだ」っていう監督だった気がしたんですけども。すいません。(※『グローリー: 明日への行進』の監督です)

(高橋芳朗)まあ3曲、聞いていただきましたけども。なにか印象に残るメッセージだったり、思うところはありましたか?

(ジェーン・スー)たくさんのミュージシャンがいろいろ話をしていて、私ももちろんトランプが大統領になったということにびっくりしている1人ではあるんですけども。まあ、他国の事情ではあるとはいえ、ある種私はあの国に夢を見ていたところがあって。それはまあ、厳しい現実があったとしてもマイノリティーだったりとか女性だったりとかっていうのが、なにかしら突破口を見出だせる国なのではないか? という期待をずっと……それはある種、夢なのかもしれないけど思っていたけれど……

(高橋芳朗)うん。

(ジェーン・スー)20万票差はついているとはいえ、票数だけで見たとしても、少なくともほぼ過半数の人はトランプを選んだわけですよね。っていう状態まで追い詰められていることに対して、私は全然無自覚だったし。本当にでも、対岸の火事じゃなくて日本も全然そうだし。「こんなの、ひどい!」って思っていることって、実は日本に変えてみたら全部もちろんそれ以上のことが起こっていたりっていうのがたくさんあったり。ただ、1個だけどうしても気になったのは、今回「本音」みたいなものがすごいポイントにされたじゃないですか。「隠れトランプ」とか。

(高橋芳朗)うん。

(ジェーン・スー)「みんな本音ではさ……」みたいな。だけど、これは私自身もすごく戦っているところではあるんだけど、本音なんてさ、自分が満たされているか否かでコロッコロ変わるじゃん? で、本音が軽んじられうべきだとは思わない。絶対に。だけど、そのよく生きるための信条っていうさ、完璧に自分が満たされた時に選べるであろう選択肢っていう「美学」とか「矜持」っていわれるようなものっていうのをやっぱり、持っているのが必要なんじゃないのかな?って思うんだよね。

(高橋芳朗)うん、うん。

(ジェーン・スー)なんか「本音であればいい、ぶっちゃければいい」って……そこはちょっと違うんじゃないの?って。あともう1個だけ言いたいんだけど、だってそれでさ、本音で自分が満足しないからっていうことで、「こいつが悪い! あそこが悪い!」って思うわけじゃん? じゃあそれを取り除いたところで自分が不満だと思っていたところが取り除かれなかった時、あんたどうすんの? マジで。全然違うところに原因があるかもしれないし、全然違う方法で回復できたかもしれないことだったりとかね。ちょっとそういうのはね、考えたよ。

(高橋芳朗)まあね……これ、1時間できるね。

(ジェーン・スー)このコーナーだけでね。枠、くれ!

(高橋芳朗)はい。

(ジェーン・スー)というわけで高橋さん、ありがとうございました!

(高橋芳朗)ありがとうございました!

<書き起こしおわり>

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