松尾潔 After 7『Runnin’ Out』を語る

松尾潔 After 7『Runnin’ Out』を語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でアフター7の最新アルバム『Timeless』の中から『Runnin’ Out』を紹介していました。

(松尾潔)この番組『メロウな夜』を毎年ずっと……これは7年目ですけども、毎年聞いてくださっていると、この時期になると僕がいつも口癖のように「年末商戦」という言葉を使います。「歳末商戦」と言ったこともあるかもしれませんけども。「ああ、また言ってるな」という風にお気づきかもしれませんが。まあ、そうでなくてもアメリカのゴスペルという音楽の歴史のもとに成り立っているR&B。元が宗教音楽ですから、となりますとクリスマス間近のシーズンというのは活況を呈するわけなんですね。

渾身のオリジナルアルバムを作る人もいれば、この時期、「今年はホリデー・アルバムを作ろうかな?」なんていうアーティストもいます。そろそろホリデー・アルバム、クリスマス・アルバムという言い方もしますが、そのラインナップも出揃いつつありますので、そちらの方もご紹介していきたいと思いますが。今日は、まだクリスマスナンバーといえる曲はプレイリストには入っていないですね。はい。もう王道のR&B新譜をたくさんご紹介したいと思います。まず、最初にお聞きいただきますのはボーカルトリオからいま、カルテット。4人組ボーカルグループとなりましたアフター7(After 7)でございます。彼らの現在の状況に関してはこの後にお伝えするとして、まずは曲を聞いていただきましょう。アフター7、ニューアルバム『Timeless』の中から『Runnin’ Out』。

After 7『Runnin’ Out』

お届けしましたのはアフター7の『Runnin’ Out』。これは彼らのなんとなんと21年ぶりのアルバムに収録されております。21年ぶり。「僕、ハタチですよ」っていうリスナーの方もいらっしゃるかもしれませんね。じゃあ、21年前のアルバムはなんだったか?っていうと、1995年にリリースされた『Reflections』っていうアルバムでしたね。これが彼らにとってのサードアルバムでした。今回4枚目のオリジナルアルバムということになります。その間にメンバーの増減がありましたね。アフター7というのはご存じの方も多いと思いますが、名プロデューサー、そして人気アーティストでもありますベイビーフェイス(Babyface)の実のお兄さんでもあります。

ケボン(Kevon)とメルヴィン(Melvin)。そしてその友人という3人体制でスタートしたんですが、その友人といわれていますメンバー、キース・ミッチェル(Keith Mitchell)っていうんですけども。このキース・ミッチェルはデビューの時にベイビーフェイスの音楽的なパートナーでありましたL.A.リード(L.A. Reid)の従兄弟という風に紹介されていました。つまり、ベイビーフェイスのお兄ちゃん2人とL.A.リードの従兄弟という、まあ90年代を代表する名プロデューサーチームの血縁3名で結成されたと言われていたんですが……このキース・ミッチェルがね、やさぐれたわけじゃないんですけども。「本当のことを言わせてくれ。俺は別に従兄弟じゃないよ。ただの友達だよ!」って言い出したんです。衝撃の告白でした(笑)。もう、21世紀に入っていましたけども。

「これはもう、キース・ミッチェルは音楽業界に戻ってくることはないな」って思っていたんですが、ちゃんといま、一緒に歌っているんですよね。何があったんでしょうか? どんな事情が? 世間ではこれを「大人の事情」って言うんでしょうけども。で、面白いのはその間に体調を崩したメルヴィンの代わりに、メルヴィンの息子が入っていたりしていたんですけども。で、お父さん戻ってきたんですけど、息子もいるんですよね。つまりいま、これ、親子でメンバーという非常に変わった構成になっております。面白いもんですよ。僕なんかの神経からすると、お父さんと息子が一緒にとろけるラブソングを歌うのって気恥ずかしくないのかな?って思うんですけども。それ、できちゃうんですね。

まあ、この世界のファンであればオージェイズ(The O’Jays)のエディ・リバート(Eddie Levert)と息子のジェラルド・リバート(Gerald Levert)、ショーン・リバート(Sean Levert)の関係を思い出す方もいらっしゃるかもしれませんけども。まあちょっと、それに近い話。やはりR&Bは血の音楽。ブラッドラインがものを言う世界なんだなという気がいたします。このアフター7のカムバック、この1年ぐらいに渡ってこの番組でずっとお話してまいりましたけども。アルバム、やっと完成しました。

で、アルバムを仕切っておりますのは、もちろんベイビーフェイス。そしてベイビーフェイスのL.A.リードともう1人、ちょっとおとなしめのパートナー。その名もサイレント・パートナーという事務所を主催しておりますダリル・シモンズ(Daryl Simmons)という人ですね。この人もなかなかに優れた名ソングライターですが、ベイビーフェイスとダリル・シモンズが全面的に今回のカムバック劇を演出しております。ベイビーフェイス本人も昨年ですか。久々に快作と呼べるアルバムをリリースしましたが、今回のアルバムもその流れにありますね。

松尾潔 BabyfaceとAfter 7を語る
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』でベイビーフェイスとそのお兄さんたちのユニット、アフター7について話していました。 まずは2曲続けて新譜のご紹介をしました。今年のソウル・トレイン・ミュージック・アワード(Soul Train ...

つまり、自分たちの過去のいろんなオイシイところ。美味なるところを含みながら、でもその時とは一味違うという……含んでいるが、似ていないという。まあ、ものづくりのある種の理想を体現したアルバムじゃないかと思います。『Timeless』。これは大変に聞き応えがあります。で、曲数が少ないのもいいですね。あっという間にすぐ、また1曲目に戻ってしまうんですけども。このアルバムの大変に肝要な役割を果たしております1曲目。それがこの『Runnin’ Out』でございました。お届けしたのはアフター7で『Runnin’ Out』。

<書き起こしおわり>

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