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松尾潔 R&B定番曲解説 The O’Jays『Now That We Found Love』

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松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、The O’Jays『Now That We Found Love』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。



(松尾潔)続いては、いまなら間に合うスタンダードのコーナーです。2010年3月31日に始まった『松尾潔のメロウな夜』。この番組は、メロウをキーワードにして、僕の大好きなR&Bを中心に大人のための音楽をお届けしています。さて、R&Bの世界でも、ジャズやロックと同じように、スタンダードと呼びうる、時代を越えて歌い継がれてきた名曲は少なくありません。そこでこのコーナーでは、R&Bがソウル・ミュージックと呼ばれていた時代から現在に至るまでのタイムレスな名曲を厳選し、様々なバージョンを聞き比べながら、スタンダードナンバーが形成された過程を僕がわかりやすくご説明します。

第23回目となる今回は、ジ・オージェイズ(The O’Jays)が1973年に発表した名曲『Now That We Found Love』について探ってみます。そうなんです。前半、エディー・リバート(Eddie Levert)の話からしつこいぐらいオージェイズのご説明をしましたけども、実はね、今日番組後半にオージェイズのスタンダードが控えておりました。では、まずお届けしましょうか。カバーバージョン、大変多いこの『Now That We Found Love』ですね。いま、バックで流れていますのはこれ、僕が個人的に好きなBTエクスプレス(B.T. Express)のカバーバージョンですけども。



まあ、こういったその後、数多出てくるカバーの最初に位置するというか、オリジナルはこちらですというところで、ジ・オージェイズ。1973年にリリースされたアルバム『Ship Ahoy』の中から、『Now That We Found Love』。そしてその5年後ですね。一般的にはこちらの方が有名かもしれません。とりわけイギリスではこの曲の人気というか、知名度っていうのは支配的かもしれませんね。サード・ワールド(Third World)。レゲエカバーでございます。『Now That We Found Love』。それでは2曲続けてどうぞ。
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The O’Jays『Now That We Found Love』


Third World – Now That We Found Love



今夜のいまなら間に合うスタンダードのコーナー。『Now That We Found Love』を取り上げております。オリジナルのジ・オージェイズ『Now That We Found Love』。1973年にリリースされました。まずはそちらをご紹介して、続けて、ジャマイカのレゲエグループ。そして大変イギリスで人気のあったグループ、サード・ワールドの『Now That We Found Love』。こちらは1978年のカバー。2曲続けてお楽しみいただきました。

オージェイズ。この番組で何度となく名前を僕、口にしている。そういう記憶がありますね。まあオージェイズ、「フィリー・ソウル、フィリー・ソウル」って言いますけども、フィラデルフィアからヒットを飛ばしている時点でもうすでにオージェイズは第二期という感じでしたから。もうこの時点でプロキャリア15年ぐらいの時の1曲ですね。アルバム『Ship Ahoy』に収録されています。『Ship Ahoy』っていうのはこれ、当時仰々しい日本語タイトルがついていまして。『暁光の船出』っていうんですね。『暁光の船出』ってどういうことか?ってちょっと説明が必要だと思います。

このアルバム『Ship Ahoy』っていうのはヘビーな内容なんですよ。まあ、当時のオージェイズのプロデューサーであり、レーベルのオーナーでもありましたギャンブル&ハフ(Gamble and Huff)というこのプロデューサーチームは、いわゆるラブソングもたくさん作りましたけども、自分たち、アフリカ系の出自に目を向けた、そして目を向けさせるような曲もたくさんリリースしていまして。まあまあ、いわゆる社会意識に訴えかけるような曲っていうか、作品もいくつか作っているんですが。その中のひとつですね。で、この『Ship Ahoy』っていうアルバムはアルバムの内容自体がアフリカから奴隷として木製の船で北アメリカにやって来た自分たちの祖先と言える人たちがどんな苦しみ、そしてどんな苦労を経ていまの自分たちがあるのかという、それをアルバムでコンセプチュアルに表現したんですね。

で、ちょっとヘビーな内容でもありますし、そもそも『Ship Ahoy』っていうのが船に乗っている時のかけ声ですね。「Ahoy(アホイ)」っていうのはね。アルバム自体を聞き終えた後には、アメリカという国について考えるきっかけになりうるようなザラッとしたものが残るんですが。うーん、その中においてこの『Now That We Found Love』っていうのはもしかしてアルバムの中でいちばん、いわゆるフィリー然としたメロウな響きがあるかもしれませんね。アルバムの中から、実はこの『Now That We Found Love』はシングルカットされたわけじゃないんです。アメリカでこの曲、1回もシングルカットされたことがないんですよ。不思議なことにね。で、これを上回るほどのヒットポテンシャルがある曲が入っていたということでもあります。

『For The Love Of Money』という曲がこのアルバムの中に入っております。



これ、『緑色の神様』っていう邦題がついていました。「緑色」ってなんの色か?って言うと、アメリカのドル紙幣の色ですね。いわゆる拝金主義に対しての批判を込めた曲って言えばいいのかな? 『For The Love Of Money』。これがアルバムの中の有名な曲なんですが、これに先がけてオージェイズは70年代に入って大躍進を遂げる時に、まずは72年に『Back Stabbers(裏切り者のテーマ)』という曲で、彼らにとって悲願のソウルチャートナンバーワンを獲得します。



そして2曲目のナンバーワンとなった『Love Train』。ここではまあ、本当に全人類的な視野に立っての愛。ユニバーサルラブを訴えるんですが。これはもう本当に曲の思いが叶ったというか。ソウルチャートだけではなく、ブラックコミュニティーだけではなく、全米ナンバーワンにも輝いております。



それを受けてのアルバムで、『Ship Ahoy』っていうヘビーな内容。まず自分たちの認知度を高めて、そして本当に言いたいことを言ったという、そういう見方もできますね。この時の自分たちっていうのはオージェイズだけじゃなくてプロデューサーのギャンブル&ハフも含まれているというか、むしろ彼らの意向が色濃いのかもしれませんけどね。まあ、そういった時代背景のことも考えてこの曲のことを聞いてみると、やっぱり曲に立体的な解釈を抱くことができるんじゃないかな? という風に思いますね。

で、この曲はいろんなカバーがあると言いました。さっき聞いてもらったBTエクスプレスのバージョンもそうですし。いまバックに流れておりますのはこれはモータウンでかつてマーサ&ヴァンデラス(Martha & Vandellas)というグループで人気者でした、マーサ・リーブス(Martha Reeves)が取り上げたバージョンですね。これも70年代のもの。



そして、さっき聞いていただきましたサード・ワールドのバージョンも70年代のリメイクです。まあ、オリジナルが出てわずか5年ほどでこれだけのものを作り上げたサード・ワールドっていうのはあっぱれなんですが。サード・ワールドは80年代の頭に日本でも大変に人気がありましたね。『ラヴ・アイランド』という曲が大変ヒットしました。



オリジナルのタイトルは『Try Jah Love』っていう、かなりラスタな、かなりレゲエなタイトルだったんですが。彼らのもともとの持ち味っていうのはそういうR&B寄りというよりももうちょっとルーツ寄りという感じなので。この『Now That We Found Love』あたりは彼らならではの持ち味も含まれているという意味で、いいカバーじゃないかなという風に思いますね。まあ、このように同じソウル・ミュージックのエリアからちょっとはみ出して、レゲエの人たちにも支持された。で、このサード・ワールドの曲なんかは本当にイギリスのいわゆる全英チャートでもトップテンに入ったので、この曲の名声は高まりました。

で、サード・ワールドならではの歌いまわしというか。いちばん有名なのは途中の「Come On Baby!」っていうところとか、もういろんな人たちにサンプリングされて。特にヒップホップアーティストなんかにサンプリングされて。このサード・ワールドのバージョンというのがまたアメリカに飛び火して、オージェイズ以上にサード・ワールドのバージョンがアメリカのブラックコミュニティーで強く支持されたという背景があって、91年に決定的なカバーが出ます。これを歌っていましたのはヘビー・D&ザ・ボーイズ(Heavy D & The Boyz)というヒップホップグループ。そうなんです。ラップでカバーされたんですね。

「ソウル」としか呼べないところから出てきた種がレゲエの畑で花開いて、そこから決して短くはない時間をおいて、今度ヒップホップの畑でまたまた大輪の花を咲かせたというね。「あ、名曲というのは仮に最初、力づくでシングルという形で世に出さなくても、こういう風にして愛されていくんだな」っていう、ひとつの音楽的な素晴らしい見本のような、そんな名曲秘話でございます。では、1991年にリリースされたヘビー・D&ザ・ボーイズ。アルバム『Peaceful Journey』の中から、聞いてください。『Now That We Found Love』。

Heavy D & The Boyz『Now That We Found Love ft. Aaron Hall』



今夜のいまなら間に合うスタンダード、オージェイズが73年に世に送り出しました『Now That We Found Love』。この曲の変遷をご紹介しております。ヘビー・D&ザ・ボーイズ、1991年にリリースされたアルバム『Peaceful Journey』の中から、アルバム最大のヒットになりました。当時、全米チャート11位、R&Bチャートでは5位まで行きました。『Now That We Found Love』。プロデュースを手がけていましたテディ・ライリー(Teddy Riley)というのはこの頃、時の人でして。まあ、ヘビー・Dもそうですね。ヘビー・Dはこれに先がけて1990年。ジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)の『Alright』という曲のリミックスバージョンというか、シングルバージョンに参加して。ミュージックビデオでもコミカルな踊りを見せて注目をされます。



そして、その1990年秋にガイ(Guy)がセカンド・アルバム『The Future』をリリースします。その中には、ヘビー・Dをフィーチャーした『Do Me Right』という曲が収められていました。これが注目を集めます。



で、その熱がまだ冷めやらぬ91年の7月にこの『Peaceful Journey』というアルバムが出たんですね。もっと言いますと、それからこれがロングセラーになって、11月。もう12月に入ろうかというあたりに、マイケル・ジャクソンの『Dangerous』がリリースされるんですが、そのメインプロデューサーを務めましたのが他ならぬテディ・ライリーでございまして。この『Dangerous』の中の『Jam』というアルバム冒頭の曲にはこのヘビー・Dがフィーチャーされておりました。



つまりこの『Now That We Found Love』が世に出る時点でテディ・ライリーですとか、ガイですとか、後にテディが展開することになるブラックストリート(Blackstreet)。マイケル・ジャクソン、ジャクソン5、オージェイズ。いろんなグループの運命がここで交錯するんですね。そして、これはもう作り手の誰もが考えてなかったと思うんですが、この曲日本でも局所的な大ヒットになります。ご記憶の方も多いでしょう。当時、日本でビートたけしさんがMCを務める民放のバラエティ番組の中で高校生たちがダンスをするというい大人気企画がありました。その中でもスターになったのが、後にR&Bボーカルデュオとして活躍することになるLL BROTHERSなんですが。LL BROTHERSがこの『Now That We Found Love』で非常にインパクトの強いダンスを見せて。

で、いまでも高校生のダンス選手権なんていう話になると、この曲がかならずBGMのようにして出てくるという。ねえ。この1973年にアフリカ大陸から北アメリカにやってきた奴隷船の話を描いたアルバムから、20年ぐらい経つと日本で高校生のダンスのBGMというところに昇華していくというね。これ、曲の運命というのは面白い話ですね。はい。しばし感慨にふけりましたが。今日は『Now That We Found Love』をご紹介いたしました。

<書き起こしおわり>
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