鳥居咲子 韓国ヒップホップシーンを語る

鳥居咲子 韓国ヒップホップシーンを語る dommune

『ヒップホップコリア』の著者、鳥居咲子(a.k.a ヴィヴィアン)さんがDommune『ヒップホップコリア』特集に出演。FNMNLのWardaaさんとともに韓国ヒップホップシーン、特にILLIONAIRE RECORDSについて話していました。

(鳥居咲子)ちょっと韓国のヒップホップについても簡単に説明したいんですけど。韓国っていま、すっごいヒップホップが人気なんですよね。

(Wardaa)ヤバいですよね。

(鳥居咲子)ヤバいんですよ。で、チャートのトップ10の半分以上がラップミュージックが占めているっていう、日本では絶対に考えられない現象が起きていて。で、アメリカも同じだと思うんですけど、最近ではメジャー/アンダーだっていう概念がなくなってきていて。レーベルに所属してなくても、自分で無料公開したのがすごいヒットするみたいな。そういうようなのも起こっているんですよね。それのいちばん有名なのが、たぶんキース・エイプ(Keith Ape)っていうラッパーが去年出した『It G Ma』っていう……聞いたことがある方は多いと思うんですけども。

Keith Ape『It G Ma』


https://miyearnzzlabo.com/archives/23640

(Wardaa)うん。

(鳥居咲子)キース・エイプ、その時にレーベルには所属はしていたんですけどね。

(Wardaa)そうですね。あれはでも、無料ですよね。

(鳥居咲子)そうそう。でも、友達だけで集まって。日本人が2人、KOHHさんとLOOTAさん。あとは韓国のラッパー3人で一緒に作って無料公開して。それがとんでもないことになってしまって。で、そのキース・エイプがもうアメリカに渡ってしまったっていう。

(Wardaa)その1曲だけでですよね。

(鳥居咲子)そうそうそう!(笑)。

(Wardaa)それはすごいですよね。

(鳥居咲子)そう。でも、そういうことが起こっちゃうぐらい、ヒップホップがすごく盛んな国になっています。で、理由はいろいろあると思うんですけども。私もこの本(『ヒップホップコリア: 韓国語ラップ読本』)の中にそういう理由についてもちょっと書いたんですが。まず、サウンドに多様性がある。ヒップホップっていうと一般的にみんなゴリゴリのあの感じを思い浮かべると思うんですけども。

(Wardaa)うんうん。

(鳥居咲子)割とポップだったり、ロックだったり、ジャズだったり。サウンドの幅が広くてですね。そういうところがいろんな人に聞きやすくなっているというのと、あと韓国語自体がラップに合っているんですよね。

(Wardaa)それはよく言いますよね。

(鳥居咲子)韓国のドラマとかを見ても、強いじゃないですか。イントネーションとか、言葉とかが。やっぱりラップにそういうののリズムが合っているっていうのと、あと日本語と違って子音が多いんで。日本語って母音だけで「あいうえお」ってできているんですけど。そういうのもあってひとつの音にいっぱい音が乗るからリズミカルになる。そういう面白さもあって韓国では結構ラップが盛んになっています。

(Wardaa)うん。

(鳥居咲子)まあそういう、知れば知るほど面白みがどんどん広がる。それが韓国のヒップホップの魅力だと思うんですけども。

(Wardaa)そうですね。はい。

(鳥居咲子)でも、私とWardaaさんはちょっと得意分野が違くて。

(Wardaa)なんか、きれいに違いますよね。

(鳥居咲子)きれいに違うんですね。私はもともとヒップホップを聞かない人間で。ポップスとかロック、ジャズとかそっち系を聞くんで。やっぱりそういう感じの曲を聞くんですよ。で、Wardaaさんはもう純粋にヒップホップで来た方ですよね?

(Wardaa)そうですね。まあ、いろいろ聞くんですけど、結構いわゆる「トラップ」っていうサウスのヒップホップがすごい好きで。韓国のヒップホップの中にもそういう要素があるのがあるので。そこらへんが好きですね。

(鳥居咲子)そうですね。いわゆるゴリゴリとした、ヒップホップっていうイメージそのまま……

(Wardaa)いまのヒップホップっていうイメージですよね。

(鳥居咲子)そういう感じのが得意でっていうことで、得意分野がきれいにわかれているので、今日はそれぞれ違った味のある曲を紹介できると思うんですけど。じゃあ、まず私から1曲目、紹介したいと思うんですが。まず最初の方は芸能人的な人気というか。メジャーレーベルで第一線で活躍していたりとか、メジャーじゃないんだけど、インディペンデントでもテレビとかもすごい出て、知名度抜群みたいな。そういう人たちから最初におさえていきたいなと思って。本に忠実に……この本を持っている方は本を片手に見ていただけると。たまに「○ページ」とか言うんで、これを持って見ていただけると助かります(笑)。

(Wardaa)副読本として。

(鳥居咲子)そうですね。持っていない方は、今日番組を見て、「このアーティストかっこいいな」と思うのがいたら、メモしていただいて、この本を買って、復習してもらえたらという感じですね。で、本の12ページ。DOK2(ドキ)っていうラッパーの紹介から入りたいと思います。この方はいまは26才になっているんですけど……

(Wardaa)まだ26なんですね。

(鳥居咲子)まだ26だけど、15からプロのラッパーをやっているんで、キャリアが10年超えているっていう。で、見た目だけだとちょっと怖そうな感じがするんですけど、全然実際は怖くなくて。かわいらしい感じの人って言ったらたぶんイメージ管理があるからダメなんでしょうけど(笑)。

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GONZOさん(@dok2gonzo)が投稿した写真 –

(Wardaa)(笑)

(鳥居咲子)でも、結構本の中でバラしていて。甘いものが好きとか、酒もタバコもやらないみたいな。そういう感じなんですけど、見た目は結構タトゥーいっぱいで悪そうな感じで。で、このDOK2なんですけど、めちゃくちゃ稼いでいるんですよね。Instagramとか見たことあります?

(Wardaa)車がすごいですよね。

(鳥居咲子)そうそう。なんか高級外車10台ぐらい持っているっていう。ベンツにロールスロイスにランボルギーニに、みたいな。まあ、イマドキのヒップホップ、アメリカでもちょっと珍しくなってきているぐらいの、金品を見せびらかすみたいな。そういうスタイルとかで結構キャラも立っていて面白いんですけど。ラップのスキルも抜群に上手いという人で。

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GONZOさん(@dok2gonzo)が投稿した写真 –

(Wardaa)うんうん。

(鳥居咲子)で、ここではまず、最近このDOK2はトラップっていう、さっきWardaaさんが好きって言っていた。そういうのをよくやっているんですけど。まだ初期の10代だった頃とかはもうちょっと違う感じのをやっていたんで。それをちょっとかけていきたいと思うんですが。これは2009年、DOK2がまだ10代だった時に出した『It’s me』という曲を聞いてみたいと思います。

Dok2『It’s me』

(鳥居咲子)と、まあこういう感じでいまのDok2の感じとだいぶ違いますよね。

(Wardaa)うんうん。

(鳥居咲子)いまも、実は何気にメロディアスな曲だったり、ピアノのアルペジオがきれいな曲とかやったりするんで、たぶんそういう系が好きなんですけど。この頃は特にこういうドラマチックな感じのサウンドが多くて。最近はもっとトラップが多くなって、サウンドもシンプルになっているし。ラップもいま聞いたやつは「ダダダダダダダダ……」って、結構ずっとがっつりラップしてるんですけど、最近はもっとラップも切れてシンプルになって来ているっていう。

(Wardaa)だからそれは結構あれかもしれないですよね。USのトレンドと合わせているっていうことなんですよね。

(鳥居咲子)そう。USのトレンドの取り入れ方が本当に早いんですよね。1週間後ぐらいに取り入れるぐらいの勢いで(笑)。

(Wardaa)もう出た瞬間に研究を始めているみたいな感じ、しますよね。

(鳥居咲子)そうなんですよ。なんで、最近で言うといま聞いてもらった曲と印象が違くなるんですけど。今年出した曲を次に、『Future Flame』っていう曲をご参考までにかけたいんですけども。

DOK2『Future Flame』

(鳥居咲子)はい。こういう感じに最近はなっているっていう。ミュージックビデオにもDOK2の私物の車が出ていましたけども。BMWのなんちゃらっていう、韓国で第一号で受け取ったらしいですね(笑)。だから、ラップの感じとかサウンドもすごく変わったのがお分かりいただけたんじゃないかな? と思うんですけども。去年、一昨年かな? DOK2っていうのがイリオネア・レコーズ(ILLIONAIRE RECORDS)っていうレーベルを自分でやっているんですよ。ザ・クワイエット(The Quiett)さんっていう方と2人で経営していて、そのイリオネア・レコーズのコンピレーションアルバムの中に『ヨンギョルゴリ(YGGR) 』っていう曲が入っていて。それが、「ノワ、ナエ、ヨンギョル、ゴリ♪」っていう。それがめちゃくちゃ韓国で流行ったんですけど。

(Wardaa)うんうん。

(鳥居咲子)この時くらいから、こういう二音節ずつ切るっていうか、本当に細切れにするラップとかがすごく増えていて。こういうスタイル、いっぱいいるんですけど、特にDOK2がしっくり来る感じがするんですよね。

(Wardaa)それはキャラクター的にもそういう感じに見せているからっていうのもありますかね?

(鳥居咲子)そうですね。キャラクター的にそうなんですよ。無理していないし。そのまんまでああいうトラップのヒップホップがかっこよくできる感じがすごくいいんですよね。で、いまDOK2がイリオネア・レコーズっていうレーベルをやっているっていう話をしたんですけど。それを一緒にやっているザ・クワイエットさんっていう方がいて、これがまた結構イケメンな感じの方で。

tryna be real

thequiettさん(@thequiett)が投稿した写真 –

この人と、さっきのDOK2が2人でレーベルをやっていて。クワイエットさんっていうのはイリオネア・レコーズを2011年にDOK2と一緒に立ち上げたんですけど。その前はジャジーヒップホップとか、柔らかい、誰にでも聞きやすいソフトな音楽をやっていたんですけど、イリオネア・レコーズでDOK2と一緒になってから突然、こういうサウスヒップホップだったり、なんかギャングスタ風に見せて……みたいな感じに変わってしまって、ファンをすごく戸惑わせたみたいなところがあったんですけど。まあ、それのおかげで成功した。

(Wardaa)イメチェンに成功したってことですね。

(鳥居咲子)イメチェンに成功したっていう。だけど、昔からのファンは相変わらず戸惑っているみたいな、そういうところがあるんですが。クワイエットさんも、だからあれなんです。イリオネア・レコーズに入ってからはこういう感じの。次は『2 Chainz & Rollies』っていうクワイエットさんの代表曲的なものをかけたいんですけども。

The Quiett『2 Chainz & Rollies (feat. Dok2)』

(鳥居咲子)はい。ちょっと短くてすいませんけども。ご参考までに。こんな感じにクワイエットさんはDOK2のスタイルにすごく寄せた感じの、こういう風になったんですけど。最近、去年ぐらいからちょっと昔のスタイルに若干戻しつつあるんですよ。アルバムの曲がやっぱり、ちょっと昔のスタイルも取り入れつつ、柔らかくしてきていて。だけど、シングルはやっぱり相変わらずゴリゴリな感じでやっているっていうところがあります。なので、ちょっと昔のスタイルに戻し気味な曲を次にかけたいんですが。

The Quiett『Your World MV』

(鳥居咲子)こういう感じなんですよ。

(Wardaa)だいぶ90年代っぽいというか、ジャジーな感じですよね。

(鳥居咲子)そういう感じに若干戻しつつ、でもたまにイリオネアらしくやりつつ……みたいな感じで最近はやってきています。次がですね、DOK2とザ・クワイエットさんが一緒にやっているイリオネア・レコーズに所属しているラッパーがもう1人いて。この表紙の3人なんですけどね。クワイエット、DOK2、で、ビンジノ(Beenzino)さんっていう人の説明をいまからしたいと思うんですが。ビンジノさんは同じレーベルとは思えないほど爽やかなんですよ。

(Wardaa)そうですよね(笑)。

(鳥居咲子)で、曲も爽やか。性格も見た目も爽やかっていう。で、ビンジノさん、イリオネア・レコーズから提供してもらった写真が妙に爽やかで。すっごい爽やかだなと思ったら……これ、韓国のポッキーなんですけど。ここ(パッケージ)にいるんですよ。角度が違うけど、同じ写真で。これ、ラッパーなんですよ。ビンジノさんってアイドルじゃなくてラッパーなのに、ポッキーに載っちゃうっていう。


(Wardaa)はいはい。

(鳥居咲子)それぐらい、やっぱり韓国でヒップホップがすごいっていうことなんですけど。

(Wardaa)だからやっぱりラッパーとアイドルのファンダムがかなり近いって言うことですよね?

(鳥居咲子)完全に重なってきています。最近は。なので、こういう現象が起こっているんですが。まあ、いまの写真から見ても分かる通り、「同じレーベルなの?」っていう。そんな感じになっていますよね。で、曲も本当にそんな感じなので、聞いてみたいと思います。これはビンジノさんの『Break』という曲です。

Beenzino『Break』

(鳥居咲子)こんな感じなんですよ。全然違うよねっていう……

(Wardaa)髪型が、もう。

(鳥居咲子)爽やかな感じで。こういう、だからさっそく韓国のヒップホップって多様性がすごいんだっていうのが、最初のこれだけでお分かりいただけたんじゃないかな?って思うんですけど。

(Wardaa)かなり、あれですよね。同じ人でもいろんなスタイルでやったりするっていうのも。

(鳥居咲子)そうですね。ビンジノさんもイリオネア・レコーズとして曲を出す時はやっぱりちゃんとDOK2のスタイルに寄せて。で、金自慢とかももちろんしながらラップをするし。クワイエットさんも二面性があるっていう話をしましたけど。まあ、DOK2だけブレないですけどね。まあ、いろんな音楽があるし、しかも同じ人でもいろんなことができるっていう。そんな流れでいうと、最高にそうなのが、次はジェイ・パーク(Jay Park)について話したいんですけど。ジェイ・パークがまさにそうで。

(Wardaa)はい(笑)。もともとがね……

(鳥居咲子)そうなんですよ。アイドル出身で。2PMっていうアイドルグループ出身なんですけど。2PMは韓国の音楽をあまり知らない人でも聞いたことがあるかもしれないっていうぐらい有名なグループですよね。で、結構「元2PM」っていつまでも言われて、ファンはすごく嫌がるんですけど。だけど、アイドルとして訓練を受けたのってすごく大きくて。やっぱり表情とか動きの見せ方とかが完璧なんですよね。目でも楽しませるエンターテイナーみたいなところがあって。

(Wardaa)うんうん。

(鳥居咲子)音楽スタイルもめっちゃサウスのハードなラップをやる時もあれば、すっごい爽やかなラブソングを歌う時もあったり。ブレイクダンサーとしても一流だったり。すごいんですよね。タトゥーだらけの身体で。だけど、ミュージックビデオの中で純愛もちゃんと演じられているところとかがすごい人なんですけど。そのジェイ・パークの中でも去年出た曲なんですけど。だいぶ流行ったというか、代表曲にもなりつつありそうな『MOMMAE』っていう曲をお聞きいただきたいと思います。

Jay Park『MOMMAE』

(鳥居咲子)はい。これを見るだけでもすごいエンターテイナーだなっていうのがわかるし。

(Wardaa)しかも、音のスタイルもこの音のスタイルは歌詞の中でも言ってるんですけど、DJマスタード(DJ Mustard)っていうUSのいま、ひとつのスタイルを作り上げたプロデューサーのスタイルでモロにやっているんですよね。

(鳥居咲子)ああ、なるほど。

(Wardaa)だから本当にトレンドを取り入れているのが上手いし。

(鳥居咲子)DJマスタードさんって、DOK2ともやりましたよね?

(Wardaa)そうですね。だから韓国のヒップホップはそういう意味でUSとのコネクションとかも本当、強いですよね。

(鳥居咲子)本当、すっごい強いです。最近はだって、若手ラッパーBewhYとタリブ・クウェリ(Talib Kweli)が一緒にやったりとか。で、かなりびっくりしたんですけど。

(Wardaa)うんうん。

(鳥居咲子)そういうUSとのつながりが本当すごくってびっくりしますよね。

<書き起こしおわり>

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