町山智浩 日本人が誤解しているアメリカ像を語る

町山智浩 日本人が誤解しているアメリカ像を語る J-WAVE

町山智浩さんがJ-WAVE『Others』にゲスト出演。ふかわりょうさん、稲垣えみ子さんと日本人が誤解しているアメリカ像、そしてアメリカ人が誤解している日本像について話していました。

(ふかわりょう)では、ご紹介します。今夜のSpecial Others。映画評論家の町山智浩さんです。よろしくお願いします。

(町山智浩)よろしくお願いします。

(稲垣えみ子)よろしくお願いします。

(ふかわりょう)いまの曲(The Mamas And The Papas『California Dreamin’』)が私をアメリカの大地へいざなってくれたわけなんです。ママス&パパス。これ、歌詞はカリフォルニアの空を?

(町山智浩)これは歌詞は、歌詞の中で1回もカリフォルニアに行ってないんですよ。この歌の中で。

(ふかわりょう)行ってない? 憧れ?

(町山智浩)憧れなんですよ。

(ふかわりょう)「いつか行きたいな」?

(町山智浩)そうなんですよ。すごく灰色の空の暗い枯れ葉の舞う街で、「カリフォルニアに行ってみたいな」って言ってるだけの歌なんですよ。

(ふかわりょう)ああー、やっぱり憧れ。ホルストの『木星・ジュピター』と一緒ですよ。やっぱり行きたいから書けるっていうね。ありますよね。さあ、では稲垣さん、プロフィールをお願いします。

(稲垣えみ子)はい。町山智浩さん。1962年7月5日生まれの54才。大学生の頃からアルバイトとして編集に携わり、その流れで宝島社に入社。『宝島』『別冊宝島』の編集に携わることになります。その後は映画関連の雑誌を中心に企画、取材、執筆などを重ねた後、映画の勉強をするために渡米。以降は日本人のあまり知らないアメリカ映画の動向やアメリカの人気テレビ番組、B級文化、政治状況などを様々なメディアを通じて紹介しています。映画批評、物言い全般に関して刺激的な論調は幅広く支持されるとともに、たまに火種になったりすることもあるようです。

(ふかわりょう)はい。

(町山智浩)そんなこともないと思いますよ(笑)。

(ふかわりょう)あの、まずちょっとざっくりお尋ねしますが、日本人はアメリカを誤解してますか?

(町山智浩)誤解してますね。特に音楽。さっき言った歌詞を誤解しているところがあって。

(ふかわりょう)ああ、いま曲を聞いている時に我々、話していましたが。

(町山智浩)そうなんです。だからベッキーさんがね、出ていた自動車のコマーシャルで流れている歌っていうのは『堕ちた天使』っていう歌で。あれは高校の時のすごく清楚で清純な憧れの初恋の女の子がエロ雑誌でお股を広げているっていう歌詞なんですよ。

J・ガイルズ・バンド『堕ちた天使』

(ふかわりょう)ああー。あの、僕の解釈ですけど、洋楽が日本でものすごいヒットしたりする要因のひとつは、日本人が英語を理解できないからと……

(町山智浩)それもあるし、ベッキーさんのああいうスキャンダルの原因はあの歌をコマーシャルに使ったせいだと僕は思いますね。

(ふかわりょう)(笑)。それは全然、変なリンクはないですよね? 制作上の……

(町山智浩)あるんじゃないですか?

(ふかわりょう)いや、それはさすがに……(笑)。

(稲垣えみ子)えっ? 呪い?

(町山智浩)呪いだと思いますよ。あれ、『堕ちた天使』ですからね。『Centerfold』っていう歌で、エロ本を見ていたら俺の高校の頃のあの憧れの女の子がお股を広げている!っていう歌なんですよ。

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(ふかわりょう)それ、ツイートのみでお願いしていいですか?

(町山智浩)あ、そうですか。はい。すいません(笑)。

(ふかわりょう)でも、そういう歌詞の誤解ではなく、イメージの誤解ってありますか?

(町山智浩)アメリカのイメージでは、アメリカっていうのはひとつの国として、ひとつのイメージで捉えられているのがいちばんの誤解ですね。

(ふかわりょう)おっ、それはどういうことでしょう? ひとつのイメージといいますと……

(町山智浩)もう、要するにニューヨークがあるところと……東海岸ですね。ロスアンゼルスとか僕の住んでいるサンフランシスコのあたり、都会のあるところと、真ん中へんのところ。テキサスとかミズーリとか。そこはもう、違う国なんで。

(ふかわりょう)ああー、なるほど。

(町山智浩)どのぐらい違うか? というと、アメリカの中で観光客が来る州ってあるんですね。ニューヨーク州であったり、フロリダであったり、ロスアンゼルスのあるカリフォルニア州には、オープンキャリーということが許されていないんですよ。観光客が来る州には。

(ふかわりょう)ああー、そうなんですか。

(町山智浩)オープンキャリーというのは銃とかライフルを持ったまま公園に行ったり、野球を見に行ったり、歩行者天国を歩いたり、ショッピングモールに行ったり、酒場に行ったりすることが許されていないのは観光客が来る州だけ。それ以外の州はみんな許されているんです。

(ふかわりょう)ああー、じゃあそういうところはちょっと危ないところもあるわけですか?

(町山智浩)僕、ドナルド・トランプの演説を……いま大統領候補で出てますよね? それで、回ったんですよ。アイオワに行って、アリゾナに行って、クリーブランドっていうオハイオに行ったんですけど。みんな、応援をしているわけですよ。M-16ライフルを背負って応援しているんですよ。「トランプ、イエーイ!」って。

(ふかわりょう)ええーっ? そうなんですか。じゃあ本当に我々の銃に対するイメージとかも全然違うわけですよね。

(町山智浩)そういうトランプに反対している人がいるじゃないですか。「トランプ、やめろ!」って言ってるじゃないですか。で、その人たちと押し合いへし合いしている人の腰に、銃が入っています。グロックですね。

(ふかわりょう)ああー……

(町山智浩)もう普通の銃とは違って、8発とかじゃなくて10何発で。一度撃ち始めれば10人以上殺せる銃を持って、「トランプをバカにするんじゃねえ!」って言いながらやっているんですけど。一触即発ですからね(笑)。

(ふかわりょう)そういう銃に対するイメージや、皆保険もないですよね? 日本のように。

(町山智浩)医療保険ですか?

(ふかわりょう)基本、日本の保険のシステムのように皆保険みたいな形ではないですよね?

(町山智浩)国民皆保険のことですね。それはオバマ大統領が2010年に改革して、いまはその保険があります。

(ふかわりょう)いまは、あるんですか?

(町山智浩)いまはあります。

(ふかわりょう)基本的に個人を尊重するっていうイメージがあるんですけど。やはりそれは、そういうものなんでしょうか?

(町山智浩)そういうものですね。だから「保険っていうものも国民全体に与えるのは共産主義だ」っていうことで、ずっと反対していたんです。でも、「そうじゃねえよと。アメリカ以外の国はみんなあるんだから、共産主義は関係ねえよ!」って言って、オバマさんがやっとそれを実施してくれたおかげで僕とかも保険に入れるようになったんですね。

(ふかわりょう)ああー、そういうことなんですね! いま現在もアメリカにお住い?

(町山智浩)はい、そうです。

(ふかわりょう)バークレー以外にも、いろいろと住まわれたんですか?

(町山智浩)最初はカリフォルニアに住んで、その後にニューヨークまで引っ越して。だからアメリカ大陸を西から東に車で横断して。その後にコロラドに住んで、それでいまはカリフォルニアに戻ってきて。

(ふかわりょう)はい。アメリカ人は日本のことをどういう風に見ているんですか?

(町山智浩)それもだから、都会に住んでいる人たちは日本を知っているんですよ。行ったことがあるとか、好きだとか。ラーメンが大好きだとか。いま、都会はラーメンブームなんですよ。1500円ぐらいするんですよ。ラーメンが。

(ふかわりょう)へー!

(稲垣えみ子)それは日本人がやっているんですか?

(町山智浩)日本人とは限らないですね。日本のラーメンがすごい好きで白人がやっている店も多いです。最近は。でも、1500円ですよ。一杯。高級料理なんですよ。おしゃれな。

(ふかわりょう)なるほど。

(稲垣えみ子)中身は日本のラーメンと一緒?

(町山智浩)基本的には同じですね。日本で勉強しているマニアの人がやっているお店が多いんで。ただ、それがあるのは都会だけで。田舎の方に行くと、僕はミズーリに行った時に「日本から来た」って言ったら、「貧乏だろ?」って言われたんですよ。

(ふかわりょう)えっ?

(町山智浩)「大変なんだろ? 子供、みんな裸足だろ?」とか言われるんですよ。

(ふかわりょう)ああー、まあそういうイメージが。

(町山智浩)「みんな食えないんだろ?」って。

(稲垣えみ子)それはいつの、どういうイメージですか? 昔のイメージ?

(町山智浩)これはね、田舎の人たちはほとんど外国のことを知らないんですよ。で、一生に一度も出ない。だから、いちばん有名なのはアル・ヤンコビックという人が『Eat It』という歌を、マイケル・ジャクソンの『Beat It』のシャレで。『Beat It』じゃなくて『Eat It』。「食べろ! 食べろ!」っていう歌を作ったんですね。その時に、歌詞の中で「日本の子供たちは飢えている(Well, don’t you know that other kids are starving in Japan)」って歌っているんですが、あれはそんなに昔の歌じゃないですよ。

アル・ヤンコビック『Eat It』

(ふかわりょう)ああー、そうなんですね。

(町山智浩)その当時でも、まだ「日本人は飢えている」と思っていたんですよ。日本に経済で負けていたのに。その頃のアメリカは(笑)。それで、マンハッタンとかの土地を日本に買い取られていたのに、アメリカ人の一般レベルでは「日本人は飢えている」と思っていたんですよ。

(ふかわりょう)でもアメリカという国家は、世界の警察じゃないですけど、そういう役割というか使命感みたいなのって、みなさんあるんですか?

(町山智浩)全くないですね。

(ふかわりょう)全くない!?

(町山智浩)はい。僕、KKKという集団がアメリカにありまして。クー・クラックス・クランっていうんですが、黒人をリンチしていたりした人たちのところに遊びに行って、お祭りを彼らがやっていて……お祭りをやっているんですよ。本当に。「黒人嫌い~♪」とかかわいい女の子たちが歌を歌って。それでおもちゃとかを売っているお祭りがあって、そこに行ったんですけど(笑)。

(稲垣えみ子)こういう(頭巾を)かぶっているんですか?

(ふかわりょう)黒いのをかぶっているイメージがありますけども。

(町山智浩)三角のとんがりコーンみたいなのをかぶるのは、一応その街から禁止されていて。「普通の格好でお祭りをやれ」って言われてやっていたんですけど。そこに行って彼らの主張を聞いたら、「なぜ、日本や韓国に軍隊を送って我々が守らなきゃいけないのか、全くわからない。我々にとって外国っていうのは関係ない。一生出ないし、行かないし」っていう。真ん中らへんの人たちはそういう考え方なんで。だからドナルド・トランプがね、「韓国や日本やヨーロッパからアメリカ軍を撤退させたい」って言っているのは、その真ん中らへんに住んでいる人たちの気持ちをすごく汲んだ意見なんですね。

(ふかわりょう)「もっとお金を取りたい」みたいな発言もありましたけどね。

(町山智浩)そうそう。お金をくれるんだったら軍隊を置いてもいいけど、くれないんだったらなぜ行くのかわからないっていう。国際安全保障っていう考えが全くないんですよね。

(ふかわりょう)その街の声(日本の街頭インタビュー)の中にも差別意識というか、そういうもの……我々はなんだかんだ、日本人という島国の感覚なんですが、やはりアメリカはいろんな人種と共存なので、どうしても人間ですから区別、差別意識。やっぱり否めないんでしょうか?

(町山智浩)まあ、でも田舎の方に行くと差別をしたくても差別する相手がいないようなところが多いんですよ(笑)。

(ふかわりょう)ああー。

(町山智浩)白人ばっかりで。アイオワなんか行くと白人がもうほとんどですね。アイダホとかに行っちゃうと。だから、彼らは「黒人嫌いだ!」って言っても、見たことがないっていう人たちなんですよ(笑)。

(ふかわりょう)あ、そういう世界もあるんですね。

(町山智浩)「10年ぐらい前に、なんか見たな。なんか、色の黒い人たちだったな。テレビでは見るよ」とか。

(ふかわりょう)じゃあみんながみんな……場所によってはそういうところも?

(町山智浩)そういうところもあるんですよね。ただ、やっぱり南部の方は昔、黒人奴隷を使っていたところなんかは、僕は1962年生まれなんですけど、65年ぐらいまで黒人に人権がなかったですからね。最近までなかったところもありますから。

(ふかわりょう)じゃあ、それも昔に比べればだいぶ希薄になっているという?

(町山智浩)いや、だからトランプさんが出てきたんですよ。

(ふかわりょう)ああー。

(町山智浩)「メキシコ人を追い出せ!」とか、そういう意見を持っている白人の人たちの票を集めているということですね。

(ふかわりょう)さあ、というわけでこの後、町山さんにアメリカ大統領選についても聞いてみたいと思います。

<書き起こしおわり>

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