宇多丸 篠崎誠監督との『SHARING』トークショーを語る

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宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中で、池袋の新文芸坐で行われた篠崎誠監督との『SHARING』上映会&トークショーの模様を紹介していました。



(宇多丸)あと、今週ですね、もうひとつ興味深い対談というか……「興味深い」って自分で言うのもあれですけどね、面白かった対談として、この放送が前回終わって翌日の日曜に、池袋の新文芸坐というところで。この番組が終わり際にチラッと、ほんの一瞬だけの告知になっちゃって本当に申し訳なかったですけど。篠崎誠監督による『SHARING』という作品がございまして。こちらの、僕は以前試写で拝見して、めちゃめちゃ面白くて、コメントを寄せたりもしていたんだけど、残念ながらムービーウォッチメンではガチャが当たらなくて。扱う機会を失っちゃっていたんだけど、その上映とトークショーっていうのがあって。で、そこで『SHARING』という作品に対して僕が思っている話とか、あるいは篠崎さんの「こうやって撮りました」みたいな話。これもめちゃめちゃ面白くてですね。

まず、なにがすごかったってやっぱり、「もう1回、ちゃんと見よう」と思って普通に客席に座って見ていたわけですよ。始まってですね、オープニングでなんか「フェー、フェー……」みたいなノイズから。まあ最初、女の子がインタビューを受けているという場面から始まるんだけど、もうセリフが聞き取れないぐらい、「フェー、フェー、ウェー、ウィー……」みたいなノイズになっちゃって。もう聞こえないみたいになって。で、僕も1回見ているんですよ。1回見ているんだけど、「あ、こういう演出だったかな? たしかね」みたいな(笑)。思っていたら……プッて消えて。まあ、「音声の事故でした」みたいな。で、俺も小声で思わず「だよね」ってつぶやいたっていう(笑)。

でもね、そんぐらいやっぱりね、作品自体が平たく言えば3.11の東日本大震災があって、その前に予知夢的なものを見ていた人の話っていうのが軸にあってという。その震災後の様々なものを扱った……でも、いろんな見方ができる映画で。たとえば、「感情移入と共感」っていう、ある意味僕は映画観客論だと思って見ていたんですけど。そういう見方もできるし、まさに三宅隆太さんが言うところの心霊映画という見方もできるという作品なんですけど。その中で、要は虚偽記憶っていうのが出てくるわけですよ。要するに、人間の記憶は後から「こうだった」って思い込んでしまうっていうのが出てきます。虚偽記憶っていうのが中で大きな言葉として出てくるんだけど、まさに虚偽記憶で。

虚偽記憶

「ああ、こういうオープニング。だったかな」みたいに思っちゃいかねない作品でもあるし。あと、エンディングね。ちょっとネタバレになるから、エンディングである大変な事態が……ドーン!って風呂敷が広がって終わるんですけど。僕が覚えていたつもりのエンディングの光景と、2度目に見直したら全然違ったんですよ(笑)。「あっ!」って。全然光景も違えば演出も違う。そんなに前に見た映画じゃないのに。で、実際に他の観客の方で、「俺もそう記憶していました」みたいな方もいらっしゃったようで。なので、面白いもんですね。やっぱり映画っていうのは、そのものとして具体的に「こういう場面だった、こういう場面だった」って解析することはもちろんできるけど。やっぱり各人の記憶の中に通ったものとして、振り返った時にしか、実は1本の映画っていうのはないものだから。体験としてね。

そう。映画っていうのはだから、実は本当に抽象的な意味じゃなく、本当にそれぞれの中でしか語り得ないものだから。そういう意味でも面白かったし、『SHARING』という作品がちょっとそういう映画と観客っていうのの本質論に踏み込むような。あと、感情移入とは何か? とか。感情移入とか共感って、まあ「いいこと」っていう風にされているし、まあいいことなはずなんだけど……そうでしょうか?っていうところまで踏み込んでいるというね。それこそ、時節柄、いろんなことを思い込んでいろんなことをやらかすバカも出てくるっていう、そういうところも含めて、さらに意味が重い作品になったかもしれませんね。ということで『SHARING』、見れる機会があったらぜひみなさん、ご覧いただければと思う次第でございます。

(中略)

あのさ、先ほど、7月24日に池袋の新文芸坐で篠崎誠監督『SHARING』、上映とトークショーに出たという話をしましたけど。で、その篠崎誠監督とずーっと1時間弱ぐらいかな? 結構やっちゃったんですけど。トークをしていたんですね。壇上で。そしたらその最前列に、ずーっとサラサラサラサラ書いている、まあおじいさんですよね。結構お年をめされていると思うんですけどね。80ぐらいいっていてもおかしくないぐらいのおじいさんがずーっとサラサラサラサラ書いていて。なんか対談の要素をね、ずっとメモでもしているのかな?って見ていたんですよ。ただ、その人ちょっと様子がおかしくて。上映中も結構肝心なところで出ていったりしてたんですよね。まあ、おじいさまだから目立つ方で。

で、「なんだろうな?」と思っていて。そしたら、終わったらですね、僕のところに寄ってきて。「サイン書いて、サイン書いて」って言うんですよ。なにか? と思ったら、ずっと2人の似顔絵を書いていてくれたということらしいんですよ。で、なんかそのおじいさんは新文芸坐で……もう一方いらっしゃって。その方もそこそこお年をめされている方で。まあ、おじさまというか。その2人がサインを求めてきて。で、特にその80才ぐらい……ひょっとしたらもっと若いかもしれないけど。ご年配の男性がいて。やっぱりよく文芸坐にいらっしゃるんだって。で、要はこういうトークショーがあると、結構人を選ばずに似顔絵を書いて、サインをもらうという。だからたぶん僕が何者かはよくわかっていないでいたと思うんですよ。

その証拠にというべきか、この方が似顔絵を、僕がサインを書いたのをコピーして……また外でっていうかいろんなところで待ち構えているんですよ。「いや、あのおじいさんはちょっと名物な人なんですよね」って僕、トイレのところから控室みたいなところがあるんですけど。関係者以外入っちゃいけないところなんですよ。「……ああ、そうなんですね。そういう方、いらっしゃるんですね。(ガチャ)」って開けたら、そこにいる! みたいな(笑)。「ええっ!?」っていう(笑)。『SHARING』! みたいな。(ガチャ)『SHARING』!っていう感じだったんだけど。その方が書いた似顔絵ね。まあ、ラジオなんで見えないと思うんですけど、まあ、こちらになるわけですね(笑)。

(古川耕)(笑)

(宇多丸)あの……僕ね、キャップをかぶっていたんですね。キャップをかぶっていたんですけど、まず、キャップをこの角度で書いたらあんまりキャップってわかんない……

(古川耕)目、こんな透けてたっけ?(笑)。

(宇多丸)そうなんですよね。そう。だから僕のたぶん人柄みたいなのがすごく出ていてね。いい似顔絵だとは思うんですよね。とっても。なんだけど逆に、「宇多丸とはこういう男」というのにとらわれていたら、これは出てこない絵だと思うんで。でもね、なんかいいでしょう? なんか、僕の感じが出ていると思うんで(笑)。あとでね、番組ホームページ、放送後記とかにも載せておきたいと思うんで。見てみてくださいということです。


<書き起こしおわり>

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