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町山智浩 銃社会アメリカと銃規制問題を語る

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町山智浩さんがABCラジオ『おはようパーソナリティ道上洋三です』に電話出演。銃乱射事件や警官による黒人男性射殺事件などが頻発する銃社会アメリカの現状と、銃規制の難しさについて話していました。
※序盤のトークは録音できていないため、トーク途中からの書き起こしです。



(町山智浩)……で、日本の方がアメリカに行かれる場合は主にニューヨークとか、シカゴのあるイリノイ州とか、ディズニーワールドのあるフロリダとか。あと、カリフォルニアとかハワイとかなんですけども、そこだけはオープンキャリー(公共の場で他人に見える形での拳銃の携帯)が禁じられている州なんですよ。

(道上洋三)はー……

(町山智浩)ところが、それ以外のほとんど全部の州ですね。要するに日本人が行かない州はすべて、オープンキャリーが可能で。僕はこの間、ドナルド・トランプの集会を見にアリゾナ州に行ったんですけども、ご飯を食べにレストランに行ったり、いろんなところに行ってもマシンガンとか……まあ、連発ができないように改造されたものなんですけど。アサルトライフルで。を、持ったまま、ショッピングモールとか子供がいっぱいいる公園とか、野球場とか酒場とかに敵を大量に殺せる銃を持った人が、銃をむき出しで持って入ってくるという状態です。

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ほとんどの州で銃のオープンキャリーが可能

(道上洋三)あの、テキサス州ダラスっていうと、ケネディ大統領が撃たれたところですよね?

(町山智浩)はい。そうです。1963年に。

(道上洋三)アメリカで、たとえば今回(警官による黒人男性射殺事件が)起こったミネソタ州とルイジアナ州、(抗議集会で警官が銃撃され射殺されたダラスのある)テキサス州っていうのは、治安的にどうなのか? あるいは、黒人と白人の差別の問題はどうなのか? あるいは銃についての法律の違いはどうなのか?っていうことで比べることができるような州なんですか?

(町山智浩)ええと、全く違うところですね。ルイジアナ州はもともと奴隷市場があったところなので、黒人の人口が非常に多くて生活のレベルが低いんですよ。ただ、ミネソタ州は非常に黒人が少ないです。ものすごく少ないところです。で、治安はいいです。ただ、どこの銃をみんな持ち歩いているようなところではあるんですよ。

(道上洋三)ああ、そうなんですか。

(町山智浩)で、ダラスの方はですね、黒人の人口は多いんですね。で、その黒人に対する警官の暴力に抗議している集会に集まった人たちの中でライフルを持っていた人は20人から30人と言われています。だから、もう戦闘ができる状態になっていたわけですね。だから、最初「犯人は複数である」と言われていたんですけども。実際は1人でしたけども。

(道上洋三)あの、さっきオープンキャリーと言われて。要するに合法的に銃を街で持ち歩いてもいいっていう場合はですね、その個人についていろいろ精神鑑定や身元を調べるとかっていう、そういうことをやって(銃を)渡しているわけですよね?

(町山智浩)一応、連邦法というアメリカという国家全体の法ではそれが義務付けられているんです。精神鑑定であるとか、犯罪歴であるとか、そういったものをチェックしなければ……銃を買いに来てもそれを渡すまでにチェックする期間をおくという連邦法はあるんですが。

(道上洋三)はい。

(町山智浩)それは、各州の法律と食い違っているんですよ。アメリカは州の法律の方が優先される場合が多いので。各州ではほとんどそのチェックもなしに売られていまして。特にフロリダでこの間、ゲイクラブで50人もの虐殺事件がありましたが、あの時に犯人がアサルトライフルという30発を一度に撃てる銃を買っているんですが。それを買う時にかかった時間は、お店に入ってから銃を持って出るまでに30分と言われています。

(道上洋三)はー……

(町山智浩)チェックは受けていないです。それで彼はFBIのテロリスト危険リストにも入っていたんですが、そのチェックも入っていませんでした。

(道上洋三)フロリダは、それでいけるんですか?

(町山智浩)フロリダでは、全く銃を持っていない少年をつけ回して殺した男が無罪になっているようなところなんですよ。そのぐらい、銃を持つ権利の方が強い州ですね。で、あまりにもひどい状態なんで、民主党はこれに対してバックグラウンドチェックという、犯罪歴とか精神医療鑑定とかをすることを法律で完全に方式化することを求めて、先日、6月に議会で座り込みをしました。一晩中、寝ないで。

(道上洋三)ええ。

(町山智浩)でも、議会を多数で支配している共和党はその審議そのものを拒絶して終わりました。

(道上洋三)これ、もうひとつは「ロボットを使って容疑者を爆殺」っていう前代未聞の解決を図られたんですけども。あれは合法的なんですか?

(町山智浩)いまもこれ、意見がわかれていますね。これ、アメリカでも初めてなので。警察が犯人を爆殺するというのは。だから、前例がないので法的にどうなんだ?っていうことで論議がわかれている状態ですね。

(道上洋三)こういうのは報道とかテレビなんかで我々が見ていると、「もう内戦状態じゃないか」と見えるんですけども。

(町山智浩)はい。まあ、実際に戦争ではロボット兵器を使って敵を爆殺するっていうことはナチスドイツもやっていたことなんで。小型戦車っていうのを使ってやっていたんですよね。ナチスは。なので、全く戦場と同じ状態になっちゃってはいるんですよね。

(道上洋三)ああ、そうなんですか。アメリカは何度も銃の規制っていうのが話題になるんですが、銃の所持が禁止されないっていうのは、なぜなんですか?

なぜ、アメリカで銃規制が進まないのか?

(町山智浩)はい。これは「銃の所持に関して規制をした方がいい」って言っている人たちは世論調査によると9割ぐらいなんですよ。ところが、その中で党別に見ると、政党では民主党支持者の8割が「銃規制をした方がいい」って言ってるんですけども、共和党支持者の中には「規制をした方がいい」って言ってる人が3割弱しかいないんですよ。

(道上洋三)ああ、そうなんですか。

(町山智浩)支持政党でものすごくわかれていて。それで、実際に共和党が上院も下院も支配しているので規制する法律は実施されないという状態です。

(道上洋三)これ、銃は一応持っていていいけれど、身を守るためですよと。一応のいくつかの条件があって持ってもいいですよけど、でもこういうことになったら殺人事件ですよね? だから法律と現実がものすごく矛盾しているみたいに思えるんですけども。そういうことは共和党の人っていうのは……つまり、3割しか銃規制に賛同がないっていうのは、やっぱり「目には目を歯には歯を」っていう方が強いんですか?

(町山智浩)これはアメリカの非常に複雑な事情で。アメリカの憲法の修正第二条で「国民は自分で自分を銃で武装できる」という風に規定されているんですね。それは、アメリカの独立戦争がもともと民間人のゲリラによって戦われたので。個人の武装を否定しちゃうと、政府がすごく国民をいじめた時に、それを倒す力が国民にないっていうことになってしまうんですよ。アメリカは国会の憲法が政府を暴力革命によって倒すことを保障しているんですよ。その権利を。

(道上洋三)なるほど。

(町山智浩)それがアメリカの国家の根幹にあるので、銃の武装は禁止できないんですね。

(道上洋三)警察官は民間人を殺害した場合は、起訴されたりはしないんですか?

(町山智浩)本来は起訴されるんですが。最近、すごくそういう事件が続いているんですが、基礎されないまま終わっています。それは、起訴するかどうかを決める会議があるんですね。それは警察によるデタラメな起訴を防ぐために作られたシステムなんですけども、それがいま、逆に働いてしまって。警察官を起訴しないで終わるという方に使われてしまっているんですよ。

(道上洋三)はー……ということは、短絡的に考えると警官は撃ちやすいと?

(町山智浩)いま現在はほとんどが起訴されないまま終わっている状態です。

(道上洋三)そうなんですか。これ以外にも、銃の乱射事件が後を絶たないんですけども。いま、大統領選挙の最中なんですが、今後の大統領選挙にこの銃規制問題っていうのは論争になったり、影響をするもんなんでしょう? たとえば、クリントンさんはどういう考え方かを言ってるんですか?

(町山智浩)はい。クリントンさんは他の民主党と同じで。オバマ政権とも同じで、犯罪歴や精神病歴やテロリスト疑惑のチェックをしなければ銃を売れないという風にしようと言ってるんですね。で、アメリカで行われる犯罪のほとんどが、ちゃんとしたルートで買った銃で行われているんですよ。だから闇ルートではないので、ちゃんとした規制ルートで禁じればほとんどの犯罪がじわじわ阻止できるんですよ。

(道上洋三)ああー。

(町山智浩)ところが、それを強く出しすぎると銃をたくさん持っている人が集中しているのは五大湖周辺の工業地帯に住んでいる白人のブルーカラーの人たちなんです。で、いわゆるデトロイトもそうですし、オハイオとかペンシルバニアにはすごく銃を持っている人たちがたくさん住んでいるんですね。だから『ディア・ハンター』っていう映画を覚えてらっしゃいますか?



(道上洋三)はい、はい。

(町山智浩)あれはペンシルバニアの鉄工所で働く白人の労働者たちで。彼らの趣味は銃だったじゃないですか。鹿撃ちに行って。ああいう人たちがすごく多いんです。森が多くて。で、あの人たちは「銃を絶対に守る!」って言ってるんですね。だから、銃をあまり規制すると打ち出していくと、クリントンは(大統領選挙で)勝てなくなっちゃうんですよ。で、このオハイオとペンシルバニアを取れば、はっきり言って大統領選は勝てるんです。これ、激戦区なんで。

(道上洋三)ああー、そうなんだ。

(町山智浩)で、トランプは……トランプの息子さん2人ともハンターなんですよ。で、銃が大好きなんで。NRAっていうアメリカの全米ライフル協会はトランプを全面的に支持しています。

(道上洋三)ああ、そうですか。と、なるとやっぱり世の中のストレスとか、差別の激化というのがあると、さっき町山さんがおっしゃった、つまり個人が自分の身を守るということが国家に優先すると。だから個人のそういうことで国家を倒すっていう思想はずーっと受け継がれているわけですね?

(町山智浩)はい。だからこういう事件が多くなってくると、みんな銃を怖い怖いと言いながらも、銃の売上はものすごく、もう急上昇していまして。白人も黒人も銃を買いまくっている状態です。現在、自分たちを守るために。

銃犯罪が増えると、銃が売れる

(道上洋三)それは、あちらからの報道でもそうなんですけども、事件が起こるたびに「規制しようじゃないか」っていう声とともに、銃の売上も上がるという。

(町山智浩)はい。そうなんです。「規制しよう」と言っている人も銃を買いに来るんです。怖いから。

(道上洋三)っていうことは、これからもそういう事件が繰り返される可能性の方が大きいということですね?

(町山智浩)大きいですね。いま現在、その乱射事件と言われている不特定多数の人を標的にした銃撃事件は年間に370件以上起きていてい。1日1件以上なんですよ。これはもう、どうしようもない状態ではありますね。

(道上洋三)そういうお話をうかがっていると、町山さんはアメリカにもう何年お住まいですか?

(町山智浩)ええと、もう20年近くですね(笑)。

(道上洋三)20年近くですね。よく、無事で生きてこれましたね。

(町山智浩)僕も本当、不思議です。自分でも。

(道上洋三)町山さんは銃を持ってらっしゃいます?

(町山智浩)持ってないんですけど、僕、全米で最も殺人事件が多い地区に住んでいるんですよ。もう、10年以上。

(道上洋三)丸腰で、大丈夫なんですか?

(町山智浩)オークランドというところで、アメリカでもベスト3に入るぐらい殺人事件が多いんですね。

(道上洋三)それ、”ベスト”3って言うんですか?(笑)。

(町山智浩)ベストじゃないですね(笑)。ワーストの方ですね(笑)。

(道上洋三)(笑)

(町山智浩)で、もういつも1人亡くなるたびに近くの教会に1個、十字架が立てられるんですけども。いつも、300本くらい立っちゃうんですよね。下手すると。で、しょっちゅう銃声も聞いていますし。知り合いが撃たれた話もありますけども。なぜか、僕だけは……(笑)。

(道上洋三)なぜか(笑)。

(町山智浩)まあ、間抜け面をしてるからだと思います。はい(笑)。

(道上洋三)そんなことはないと思いますけども(笑)。

(町山智浩)うちの娘が行っていた保育園の角のところで、1人ショットガンで殺されていますしね。ジャーナリストの人が。新聞記者の人が。はい。そういうところなんですよ。

(道上洋三)そうですか。そういう事件が起こるたびに、教会に十字架が増えると。お祈りをする人も当然増えるわけでしょうけど。

(町山智浩)もちろん。はい。

(道上洋三)それとともに銃を買う人も増えるという。アメリカの絶対矛盾っていうのはやっぱり、ますます深刻になっているという風に見えるんですけども。どうなんでしょう?

(町山智浩)そうですね。だから僕、西部劇の時代よりひどいことになっているなと思いますね。

(道上洋三)なんか、いまのお話を聞いていると無法地帯の西部劇の……(笑)。

(町山智浩)うちの奥さんは駅の前で黒人の男の子にひったくられて。その時に、日系人のパトカーのお巡りさんが助けてくれたんですね。その人は、オークランド警察のSWAT隊の隊長だったんですけども、犯人との銃撃戦で射殺されましたね。

(道上洋三)あらー……

(町山智浩)防弾チョッキを着ていたんですけども、敵がロシア製のすごいライフルを持っていたんで、防弾チョッキを撃ち抜かれて死んでしまいましたね。

(道上洋三)ジョン・ウェインの頃の保安官がいりますね。

(町山智浩)だからもう、こういう状態なので。銃の機能がすごく高すぎるんですよね。だから防弾チョッキではもう貫通しちゃうんで。はい。だから、ロボットが出てくるんですね(笑)。もう、映画の世界ですよ。『ロボコップ』ですね。

(道上洋三)ねえ。でも、町山さんはやっぱりアメリカに住んでいたい?

(町山智浩)いやー、面白いことも多いんで。はい。難しいところですね(笑)。

(道上洋三)命をかけてでも、やっぱり面白いことが多いんですね?

(町山智浩)面白いことが多いですよね。でも、うちの娘なんかはそういうところでずっと育っているから完全に慣れちゃっていて、あんまり何も感じていないですね。

(道上洋三)ええーっ?

(吉田詩織)いま、おいくつですか?

(町山智浩)いま、17になるんですけども。はい。

(道上洋三)いちばん多感なお年ごろですね。

(町山智浩)いちいち何も感じていないですよ(笑)。あ、そう。だからうちの娘の学校の友達は、お父さんが一家心中を銃でやりましたよね。

(道上洋三)ええっ? どういう事情で?

(町山智浩)元CIAの人だったんですけども、病院の経営に失敗して。で、娘2人と奥さんを銃で殺して自殺しましたけども。うちのすぐ近所です。日本人の奥さんでした。

(道上洋三)ああ、そうなんですか……

(町山智浩)はい、まあそういう状況ですよ。

(道上洋三)そういう状況が、まあ日常茶飯事。しょっちゅう起っていると、お嬢さんもあまり反応されなくなる?

(町山智浩)だんだん麻痺してきますね。

(道上洋三)ああ、そうですか。いやー、でもやっぱり……(※音声途切れ)。

(中略)

(町山智浩)……そうですよね。はい。

アメリカ大統領選挙の今後の展望

(道上洋三)一言だけ。大統領選挙はどちらになりそうなんですか?

(町山智浩)ああ、まあさっき申し上げましたが、オハイオ州とペンシルバニア州を取れるかどうかということだと思います。

(道上洋三)そうですか。

(町山智浩)で、現在アメリカ全体ではトランプは負けているんですけども、オハイオとペンシルバニアではトランプの支持率は伸びているんですよ。白人ブルーカラー優先の政策を取っているんで。だから、本当に難しいところだと思います。

(道上洋三)ああ、そうですか。それでしかも息子さん2人がハンターで。やっぱり銃が強いぞっていうのが……

(町山智浩)そう。アフリカでなんか動物を殺しまくっていましたよ。あの息子2人。

(道上洋三)ああー……(笑)。

(吉田詩織)ええーっ?

(道上洋三)と、なると、トランプさんということもあり得るっていうことですね。

(町山智浩)あり得るというところですね。とにかく、もうオハイオ、ペンシルバニアにかかっている状態です。

(道上洋三)なるほど。どうぞ、お気をつけになって。

(町山智浩)はい。ありがとうございます。

(道上洋三)また、お話を聞かせてください。ありがとうございました。

(吉田詩織)ありがとうございました。

(町山智浩)どうもでした。

(電話を切る)

(道上洋三)なんか、ちょっとやっぱり住む世界が全然違うんだなっていうことをしみじみ感じましたが。アメリカの銃社会、身を持って20年近く。アメリカで最も銃の規制がゆるいっていうか、ワーストだとおっしゃるオークランドにお住まいのコラムニスト、町山さんにお話をうかがいました。

<書き起こしおわり>

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