町山智浩 イギリス EU脱退問題を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、国民投票が行われ、離脱派が勝利したイギリスのEUからの脱退問題について話していました。



(赤江珠緒)この時間は映画評論家の町山智浩さんの『アメリカ流れ者』。今週もアメリカ、カリフォルニア州バークレーからお電話です。町山さーん?

(町山智浩)はい。町山です。よろしくお願いします。

(赤江・山里)よろしくお願いします。



(町山智浩)あっ、「デンデケデケーデ、デンデケデケーデ♪」。

(山里亮太)これはレッド・ツェッペリンの……

(町山智浩)そうですね。これはレッド・ツェッペリンっていうイギリスのバンドがアイスランドにライブに行った時に作った歌なんですけども。『移民の歌』っていうタイトルですね。これ、移民問題でイギリスがヨーロッパ連合(EU)を出ちゃいましたね。出る方を選択しましたね。多数派の人がね。ややこしいですが。言い方が。国民投票で「EUを出る」という人たちの方が多かったですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、これはアイスランドに行った時に作った歌なんですけども、イギリスがEUを出た途端に、サッカーのヨーロッパ選手権でイングランドがアイスランドに負けましたね。はい(笑)。


(山里亮太)あっ、皮肉なもんだ。

(町山智浩)皮肉なもんですね。アイスランドの人ってあんまりイギリス人、好きじゃないんですね。1回、侵略されてますね。第二次大戦の時に、要するにドイツにアイスランドが取られると嫌だからって、イギリスが占領したりしてますし。あと、漁業権をめぐって戦争をしていますね。だからまあ、いろいろあるんで。アイスランドの人たちは大喜びで。サッカーのね、イングランドに勝った瞬間の中継のアイスランド側のアナウンサーがすごいですよ。これ。YouTubeとかで見ると。なに言ってるかわかんないんですよ。興奮しすぎて。うれしくて。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)もう、全然自分が中継をするっていう役割を完全に忘れて絶叫してて、めちゃくちゃおかしいんですけど。


(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)で、この歌も絶叫の歌ですけどね。これね、バイキングの歌なんですよ。バイキングってノルウェーとか北欧からヨーロッパを南の方にいろいろ侵略していったんですけども。まあ、ノルウェーのバイキングをノルマン人って言うんですけども。イギリスにも入っているんですよね。

(赤江珠緒)そうでしたね。

(町山智浩)そう。それでだからイギリスの王家って結構フランス語をずっと、最近まで使っていて。それはノルマン人が……ノルマンディーってフランスにありますよね? あそこでフランス語を覚えて、それがイギリスを侵略したんで、フランス語がイギリスの王家の言葉になったらしいですね。

(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)だからね、これ、移民の歌なんですけど、イギリスって移民国家なんですよ。もともとが。

(赤江珠緒)そうか。すっごい遡ると。

もともとイギリスは移民国家

(町山智浩)そうなんですよ。だからもともとは最初はケルト人がそこに入植して。で、「ブリテン(Britain)」って言うじゃないですか。イギリスのことを。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)ブリテンっていうのはブリテン人っていう……イギリスって言っていますけど、実はそのケルト人の種族の名前なんですよ。ブリテン人っていう。で、いまのイングランドっていうのはその後に来たアングロ人っていうゲルマン系の……だから、ドイツ系の人たちの名前がイングランドになっているんで。ブリテンとイングランドって実は違う民族なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん。

(町山智浩)「グレートブリテン」って言いますけど。で、もともと住んでいたケルト人の人たちを南の方のウェールズと、北の方のスコットランドに追いやって、真ん中へんをゲルマン人が占領したんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だからもう、みんな移民じゃないですか。そもそも。

(赤江珠緒)そうだね。「移民NO!」って言っても、もともとが。

(町山智浩)そう。もともとそういう世界なのに。そこにさらにノルマン人が来たりしているわけですからね。それなのに、やっぱり先に来た人が後から来た人を追い出すみたいなことはあるわけですよ。で、まあスコットランドの人たちはもともといた人たちのケルト系ですけども、「独立する」って言ってますよね。いまね。

(赤江珠緒)ねえ。うん。なんか分断しそうな勢いですけど。アメリカでは町山さん、このイギリスのEU離脱はどんな風に報じられたり見られてるんですか?

(町山智浩)これはまあ、とにかく株価がものすごく落っこちゃったんで。ダウが。もう、みんな怒ってますね。すごい、だから全世界的な問題ですけど。だいたい1千万円ぐらい株に入れている人は、金曜日だけで50万円ぐらい失っているわけですよ。で、今日もあったから、もう大変な金額を失っていて。みんな怒ってますけどね。本当にね。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)で、スコットランドってほら、「独立する」って言っていて。その時に(通貨の)ポンドがすごく強いから、ポンドが使えなくなるとやっぱり困るっていうんで独立しなかったんですよね。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)でも、ポンドが落ちたじゃないですか。今回。すると、イギリスにいる理由がなくなってくるんですよ。

(山里亮太)なるほど!

(町山智浩)したらもう、出るだろうなと。っていうか、もうすでに54%のスコットランド人が「イギリスから出たい」って言ってるみたいですね。

(赤江珠緒)はー! どうなっちゃうの?

(町山智浩)そうするとね、スコットランドは恐ろしいことにね、(北海)油田を持って行っちゃいますね。

(山里亮太)あっ、油田あるんですか? スコットランドに。

(町山智浩)海底油田を持っているんですよ。それで、石油ごと持って行っちゃうし。すると今度、北アイルランドっていうところがイギリスの連合王国の中に入っているんですけど。北アイルランドに住んでいる人たちもスコットランドから入植してきた、スコットランド派なんですよ。だから彼らも一緒にスコットランドにくっついて出る可能性があるんですよ。

(赤江珠緒)ええーっ?

(町山智浩)そうすると、大英帝国っていうかイギリスの連合王国ってユニオンジャックっていう旗があるじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)あの旗っていうのは、実は赤い十字がイングランドの旗で。青地に白のバッテンがスコットランドの旗なんですよ。それを、合体させているんですよ。

(赤江珠緒)上手い具合に合わせて。

(町山智浩)そうそう。赤いバッテンがアイルランドの旗なんですね。その3つの旗を合体させてユニオンジャックになるんですけど、そっから赤いバッテンと青地に白いバッテンが抜けるんで。ユニオンジャックっていう旗自体がただの白地に赤い十字の旗になっちゃいますよね。

Development of the Union Jack.
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(赤江珠緒)そうかー。

(町山智浩)これはすごいですよ。解体ですよね。

(赤江珠緒)うん。だからいま、離脱に入れた人も「あれあれ?」みたいにちょっと慌てている人とかもいますもんね。

(町山智浩)うん。なんかね、「離脱をすると得をする」っていう風に、離脱派の政治家が言っていたことのかなり多くが嘘だったことがわかって。要するに、EUに毎週お金を入れていた額があって。拠出していたお金が。それを全部払わなくて済むっていう風に言っていたんですけど。実はそこからバックして、イングランド国内の貧しい地域にEUからお金が送られていたんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)EUからね。で、それがなくなっちゃうんですよ。補助金が。だから彼らは「イギリスからEUにお金を入れると、それがギリシャとか貧乏な国の方に回るから嫌だ」って言っていたんですけど、イギリスの国内にも回っていたんですよ。貧乏な地域には。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、特にイギリスの田舎の貧乏な地域ほど、「離脱したい」って言っていたんですね。経済格差があるから。実は彼らはでも、EUからお金をもらっていたんですよ。

(赤江珠緒)なんと、それはもう皮肉な……

(山里亮太)それはだけど、結果が出た後にわかったってもうどうしようもないですよね。

(町山智浩)そう。だから、要するにデマとかが飛び交うわけですけど。で、イギリスのGDP……要するに経済の2割ぐらいが金融なんですよね。ほとんどね。で、その金融っていうのはどうしてお金が入ってくるか?っていうと、日本とかアジアとかアメリカからEUにお金を入れる時って、かならずロンドンを通るようになっているんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

金融大国 イギリス

(町山智浩)まあ、ポンドが安定しているとか、いろんな理由があって。それでイギリスは経済の2割をそれで支えている形なわけですけど、それがなくなっちゃうわけです。EUを抜けると。いきなり2割分がガタガタになるわけですよね。それでもうすでにポンドは(価値が)落ちてますから。だから全然ダメになっちゃうんですけどね(笑)。

(山里亮太)これ、いま「見直しに動いてくれ」って言ってるけど、まあ見直されることなんて、ないんですか? 絶対に。

(町山智浩)いや、これ、だから実は離脱って言っていた人たち自身も「ちょっと考え直そうか?」みたいになっていて。で、すでに署名では「もう1回、国民投票をやり直しをしたい」って言ってる人が300万を超えているんですよね。で、まあこの国民投票自体に法的拘束力はないので。

(山里亮太)ああ、そうなんだ。

(町山智浩)わかんないんですよね。はい。だからいろいろ駆け引きをやっているうちに、国民投票に追い込まれたっていう感じなんですよ。ただね、EU側は「出るって言ったんだから、早く出ろ! バーカ!」って言ってますね。

(赤江珠緒)そんな感じですよね。

(町山智浩)そう。で、EUの公式文書ってずっと英語だったんですね。英語を使う人が多いから。だから「公式文書から英語も削除する」って言ってますよね。

(赤江珠緒)ええーっ?

(山里亮太)ブチ切れてるじゃないですか。EU。

(町山智浩)そう。「出るって言ったんだからよ!」みたいな。だから、よく家庭でやるじゃないですか。「私、出て行っちゃうわよ!」とか、「俺、出てくよ!」って言ったら、「出てけば!」って、いきなり家に帰ってきたら荷物が全部出されているっていうのがよくありますけどね。

(山里亮太)うわー……よくあるんですか?

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)ねえ。鍵が替わっているとかね。そういう世界ですよね。

(山里亮太)うわー、どうなるんだろう?

(赤江珠緒)ねえ。これも引くに引けないような感じになっちゃって。

(町山智浩)ねえ。僕ね、最近3回ぐらい、イギリスに行ってますけど。やっぱり景気がめちゃくちゃよかったんですよ。お金がジャブジャブに入ってくるから。だから前も話したんですけど、地下鉄の一区間の料金がね、700円とかとんでもない金額になっていたりしてね。まあ、人があふれていて。ボンド・ストリートっていう買い物街があるんですけど、もう歩けないぐらいなんですよ。人で。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)もう、お金がある感じなんですけど。ただ、その一方でハイド・パークっていう真ん中の大きい公園があるんですけど、そこはテント村になっていたんですね。ルーマニアから来た、ルーマニアでものすごい民族浄化的なひどい差別があって。いわゆるジプシーと呼ばれている、ロマっていう人たちが大量にイギリスに流れ込んでいたんですよ。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)それで、その人たちが物乞いをしてたりする状態だったんで。で、イギリスって医療費がタダなんですよね。住んでいる人は。で、その医療費が難民に使われていると。で、向こうのタブロイド紙とかも「こいつらを追い出せ!」みたいな記事ばっかり書いていたんですよ。当時から。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)でも実は、そのロンドンにはたくさん難民とか移民が入っているんですけど、ロンドンの人たちは「EUに残りたい」って言っていたんですよね。

(赤江珠緒)そうでしたね。

(町山智浩)で、難民とか移民があんまりいない田舎の方。要するに、仕事がなかったりする方の人たちが「追い出せ」って言っていたんで。結局、地方と都市部の経済的な格差に対する不満を、移民をスケープゴートにしてたっていう感じになっていますね。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)やっぱりね、ジプシーの人がいるんですけど。まあ、たしかにテントとかを張っていて困るっていうところはあったんでしょうけど、チャップリンもジプシーなんですよね。

(赤江珠緒)えっ、チャップリンも?

(町山智浩)チャップリンのお母さんはジプシーなんですよ。で、やっぱりすごく差別されて。それでまあ、結局イギリスを出たわけですけども。結構イギリスってやっぱりさっきの『移民の歌』じゃないけど、移民によって支えられている国なんですよ。ある程度、文化とかは。だから、いちばん有名なのはビートルズですよね。

(赤江珠緒)あ、そうですか。

(町山智浩)ビートルズはおじいさんがアイルランドから来た移民ですよね。ジョン・レノンとか。ポール・マッカトニーもそうですし。

(赤江珠緒)イギリスを代表するようなね、人たちが。

(町山智浩)イギリスを代表する人ですけども。おじいさんはアイルランド移民なんですよ。1850年代に来たんですね。まあ、食えなくなっちゃって。で、あとだから、ヘレン・ミレンっていう女優さんがいるんですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)イギリスを代表する女優さんでアカデミー賞とかをいっぱいとっていて。エリザベス女王を演じていたりするんですけど。


(赤江珠緒)ああー。

(町山智浩)彼女はロシア系の移民ですよね。でね、あと『007』の主題歌を何度も歌っている、『ゴールドフィンガー』とかを歌っていたシャーリー・バッシーっていう歌手の人。あの人はナイジェリア移民の子供ですね。


(山里亮太)そりゃあ移民の人がね、多いのは当たり前の中で。移民の問題でね。

(町山智浩)そう。だからそういう人たちが、イギリスを代表する文化を作っているんで。まあ、しょうがねえなと思いますけどね。移民追い出しとかいう形はね。

<書き起こしおわり>

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