町山智浩 2016年アカデミー賞を振り返る

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TBSラジオ『赤江珠緒 たまむすび』の中で、町山智浩さんが前日に行われた第88回アカデミー賞の結果について振り返っていました。



(赤江珠緒)それでは映画評論家の町山智浩さん。今週はスタジオで生でということでございます。町山さん、こんにちは。

(町山智浩)はい、こんにちは。お邪魔します。

(山里亮太)お願いします!いやー、もうね、町山さん。昨日は一喜一憂、いろいろされていたみたいですけども。

(町山智浩)ああ、もう本当にね・・・まあ、ディカプリオはね、レオナルド・ディカプリオはやっとアカデミー主演男優賞をとれたので。よかったけど。彼、19の時にノミネートされてから、要するに俳優を始めてすぐにノミネートされてから、ずっといままでおあずけですから。

(赤江珠緒)だって、いろんな作品があったですもんね。いままでも。でも、とれなかった。

ディカプリオがついに主演男優賞に

(町山智浩)だから社会に出ようか出まいかっていうところでいきなり、『お前にこの賞をやるよ・・・でも、あげない!』ってされてから、ずーっと40いくつまで。それ、どんな人生?それ?

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)いや、もう何回も腐りそうになりますよね。『やめてやろうかな?』ってなっちゃいますよね。

(町山智浩)ねえ。そんなおあずけプレイはねえだろ、女王様?って思いますよね(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)でも、その女王様のおあずけがいい感じに長かったのか、もらった時の表情はすごかったですね!

(町山智浩)でも、すごく抑えてましたね。ディカプリオは賞をもらって、本当だったらものすごくうれしいわけじゃない?やっととれた!っていう感じなのに、すごく淡々と、環境問題について語ったりしてて。あれはすごく抑えていて。

(赤江珠緒)ほう。ちょっとそこはクールに?

(町山智浩)クールにやって。印象悪かったですね。

(山里亮太)(笑)

(赤江珠緒)あ、そうですか!えっ?

(町山智浩)だってほら、正直に、『ありがとう!』って言えばよかったんですよ。あれ。

(赤江珠緒)たしかに。

(町山智浩)だから、エンリオ・モリコーネさんっていう87才の音楽界の巨匠がやっととれたんですよ。したら、すごく正直に泣いたんですよ。

(赤江珠緒)あげた方もあげ甲斐があるというかね。

(町山智浩)そう。せっかくやったのに、なんだ?その態度!と思いましたよね。俺があげたわけじゃないですよね(笑)。

(赤江珠緒)そう(笑)。

(町山智浩)俺があげたわけじゃない(笑)。せっかくやったのに、なんだ?その淡々とした態度は!?おい!

(赤江珠緒)周りの会場の人たちも、ワーッ!って盛り上がったんでしょ?

(町山智浩)一応みんな、すごいスタンディングオベーションしてやったから。『いや、本当にありがとう。僕、本当みんなに嫌われていると思ったんだよ!』みたいなことを言えばよかったのにね。環境問題について語ったりしてね。

(山里亮太)そりゃでも、言えないですよ。やっぱね、おあずけを食らってやっとね、自分の力で勝ち取った中で・・・

(町山智浩)ああいうところで、かわいげがないんだろうなって思いましたよ。ディカプリオのかわいげのなさだと思ったな。俺は。

(赤江珠緒)なるほどね。そこですね。

(山里亮太)町山さんもずっとおっしゃってたんですけど、やっぱりちょっと投票権のある(アカデミー)会員があんまり入れたがらないところがあったって・・・

(町山智浩)すごく嫌な投票システムじゃないですか。あそこにいる人たちが投票者ですよ。

(赤江珠緒)仕事仲間の人がね。

(山里亮太)だから『おめでとう』って言ってる人たちが、いままで票を入れてなかったんでしょ?

(町山智浩)そうそう。それ、言えないの。だから、周りで一緒に仕事をしている人全員が投票者ですよね。で、『ああ、今回とれなかったね』とか言ってるのに、その『とれなかったね、大変だったね』って言ってるそいつが入れてない可能性があるわけですよ!

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)お前だろ!?みたいな。もう疑心暗鬼でディカプー、『あ、こいつが入れてないんだ。こいつが俺に入れてないんだ』って。ずっと思っていたんじゃないかな?って。勝手に想像してるだけですけどね。

(赤江珠緒)そうかそうか。へー。

(山里亮太)じゃあ会場でも、さっきの町山さんがおっしゃったみたいな人、いたんでしょうね。『おい、お前もっと喜べよ!せっかく入れてやったんだから!』って。

(町山智浩)そうそうそう。『せっかく許してやったんだからよ!』みたいなね。だから本当にシステムとしてね、アカデミー賞ってすごく残酷なシステムで。これってだって、お笑い界でやられたら、嫌でしょ?

(山里亮太)嫌ですよ!

(町山智浩)お笑い界の内輪の投票で、『あいつが好き、嫌い』みたいな話になっちゃうから。

(山里亮太)そうですね。エントリーだけされて、毎回一票も入らないって・・・

(町山智浩)そうそうそう(笑)。

(赤江珠緒)そうですね。人間関係の感情が入らないなんてこと、ないですもんね。

(町山智浩)そうそうそう。だからすごく人間関係を壊す賞だなと思いますね。アカデミー賞は。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)でも、それだけに結構、出てくる賞の威厳というか。同業者が認めるっていう・・・

(町山智浩)いやー、でもスタローンがとれなかったのがちょっと・・・ショックでしたね。

スタローンショック

(赤江珠緒)なんか町山さん、中継の時にも、WOWOWの生中継でもう本当に落ち込んでいたと(笑)。

(町山智浩)いやー、もう・・・僕ね、髪の毛が薄くなっているんで、あんまりこうガクッとしないようにしてるんですよ。でも思わず、スタローンがとれなかったんでガクッてうなだれていたから、思いっきり頭の薄いところが映っちゃって。

(赤江珠緒)(笑)。頭頂部がちゃんとカメラの方に向いちゃって。なんですか?隣の大根(仁)監督に慰められるという。

(町山智浩)慰められてますけどね。がっくりしてるんで(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)もう・・・だってこれ、ロッキーっていちばんの彼の人生の中で、いちばん大事な役で。しかも彼も、『ロッキー』で初めて主役を張った時に『アカデミー賞をあげるかもよ』って言われてノミネートされて、『はい、あげない!』って言われてからずーっと俳優人生ですよ。それから。

(赤江珠緒)はー!

(山里亮太)だいぶありましたね。40年?

(赤江珠緒)で、『クリード』か。それでやっと・・・もう、『ロッキー』は無理ですから。

(町山智浩)あと、もう1回『ロッキー』をやるか、『ランボー』をやるか?

(赤江珠緒)ええーっ!?

(山里亮太)『ランボー』、どういう形でやるんですか?(笑)。

(町山智浩)大変ですよ。本当にね。ランボー爺さんになるしかないですよね。

(赤江珠緒)スタローンって、おいくつでしたっけ?

(町山智浩)スタローン、もう69とかそんなですよ。たしか。70手前ですよ。

(山里亮太)町山さん、スタローンがこれからアカデミー賞、なにか賞をとろうと思ったら、どうするしかないですか?

(町山智浩)だからものすごい固い文芸作品。シェイクスピアみたいなやつ。それとあと、社会派のメッセージを持った映画を『エクスペンダブルズ』のメンバーで撮るといいと思います。

(赤江珠緒)(笑)。『エクスペンダブルズ』の!?

(町山智浩)はい。だからもうすごく真面目な、政治とか社会のいろんな問題。マイノリティーの問題であるとか、そういった問題をシュワルツネッガーとか、ジェット・リーとか、チャック・ノリスとか、ジャン=クロード・ヴァン・ダムとか、ドルフ・ラングレンが、なんとか頭を使って解決しようと思うんだけれども・・・できるはずないですね。はい。最後は全部ブチ壊して終わると思います(笑)。

(山里亮太)(笑)

(赤江珠緒)そうそう。ドッカンドッカン大砲とかを(笑)。

(町山智浩)はい。最後はバズーカ砲とか撃って全部終わり。『しまったー!国会、壊しちゃった!』とかね。それで、終わりっていう映画になると思いますね。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)『社会派エクスペンダブルズ』でアカデミー賞をとるしかない!と思います。はい。

(山里亮太)最後、解決は国会を爆破して終わる(笑)。

(町山智浩)こいつら、頭使ってもダメなんだもん、だって(笑)。筋肉なんだから。脳みその中まで。

(赤江珠緒)スタローンご自身も、やっぱり落ち込んでいる表情とかは映っていたんですか?

(町山智浩)いや、それがね、カメラ映さなかったんですよ。スタローンがその後、どういう表情をしているか。

(赤江珠緒)あ、そうなんだ。

(町山智浩)たぶんね、ものすごい握り拳をバーン!と握っていたと思うんですよ。その後、もうたぶんね、残念会で。シュワルツネッガー、ヴァン・ダム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレンと一緒に飲んだと思うんですよ。残念会。

(山里亮太)『エクスペンダブルズ』のチームで。

(町山智浩)そのバーはたぶん、跡形もないと思いますね。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)そのメンバー・・・ウェズリー・スナイプスとか、そいつらが1ヶ所に集まって酒を飲んだら、もう店がないですよ。それ(笑)。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)椅子に座っただけで、椅子が壊れますからね。大変なことになっていると思いますよ。

(山里亮太)(笑)。爆破も何回かあったでしょうしね。

(町山智浩)何回かありましたでしょうね。はい。もう最後は戦車で片付けるしかないですよね。このメンバーが集まって飲んだら。大変なことになっていると思いますよ。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)いや、そのメンバーがどう社会派やったらいいんですか?もう(笑)。

(町山智浩)ねえ。というそういう感じですけどもね。

(赤江珠緒)いや、でも『マッドマックス』、とりましたね。

(町山智浩)『マッドマックス』はまあ、とるだろうと思っていましたよ。とにかく、異常な映画なので。ただ、結構びっくりしたのが、特殊効果賞を『エクス・マキナ』っていう僕が前に紹介した映画がとっているんですけど。あれって、SFXで賞をとったんですけど。2人だけ、女のああいうアンドロイドが出てくるだけの映画なんですよ。で、制作費が数億円しかかかってなくて。それが、あの車を何百台もぶっ壊す『マッドマックス』に勝っちゃうっていうのも、『ええっ!?』と思いましたね。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)低予算でここまでのものを出せたっていうのが?

(町山智浩)アイデア賞なんでしょうね。だからやっぱり、金のかけ方とか規模じゃないところで評価されるんで。ちょっとびっくりしましたね。

(赤江珠緒)それが視覚効果賞をとったと。

(町山智浩)意外なことがやっぱりあって。面白かったですね。

(赤江珠緒)へー!

(山里亮太)ねえ。でもまあ、外国語映画賞はもちろん言ったら・・・

(町山智浩)もう、『サウルの息子』です。あ、そうそう。外国語映画賞と言えば、今回ご紹介する映画で『ロブスター』という映画を今回紹介するんですが。その監督はその前に、アカデミー外国語映画賞にノミネートされている人ですね。ええと、『籠の中の乙女』っていうタイトルが日本語タイトルですけど。アカデミー賞にノミネートされたのが。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)僕、たしかTBSラジオで、この映画は『Dogtooth』というタイトルで紹介したことがあって。ギリシャの映画なんですよ。で、『ルーム』っていう、女の子が監禁されて。それでそこで子供を産んで。そこで生まれた子供はずっと部屋の中で監禁されたまま育つっていう映画が今回、アカデミー主演女優賞をとった『ルーム』なんですけども。それと同じような話で『籠の中の乙女』っていうのは、男の子と女の子の兄妹が生まれた時から部屋の中でずっと監禁されて育てられるという映画なんですね。

(赤江珠緒)ええ。

(町山智浩)で、ところがその監禁状態を解決するのはなんと、『ロッキー』なんですよ。

(赤江珠緒)えっ!?

(町山智浩)まあその・・・オチになっちゃうから言えないけど、『ロッキー』のスピリットが監禁状態を破壊するんですよ。最後。突破するんですよ。『籠の中の乙女』っていう映画は。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)これ、ギリシャの映画なんですよ。ギリシャの低予算アート映画なのに、そこにまで『ロッキー』は染み込んでいるんですよ。

(山里亮太)あ、なるほど。『ロッキー』の何かが。スタローンが助けに来るとかじゃないんですね?

(町山智浩)まあだから、ブルース・リーとかロッキーとかは全世界の人を助ける映画ですよ。

(山里亮太)勇気をもらってきたんですね。町山少年も。

(町山智浩)町山少年も(笑)。で、今回紹介する映画がですね、その監督のヨルゴス・ランティモスという・・・

(赤江珠緒)あ、ちょっと待って下さいね。ここでちょっとニュース速報が入ってきたということなんで。町山さん、ちょっとお待ちください。

<書き起こしおわり>
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