町山智浩 映画『ザ・ウォーク』を語る

町山智浩 映画『ザ・ウォーク』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、世界貿易センタービルを綱渡りで渡った男を描く映画『ザ・ウォーク』を紹介していました。

ザ・ウォーク (字幕版)

(赤江珠緒)今日の本題をお願いいたしましょう。

(町山智浩)はい。まずちょっと曲を聞いてもらいましょう。はい。

(町山智浩)この歌はですね、スライ・アンド・ザ・ファミリーストーンっていうバンドの70年代のヒット曲で、『I Want to Take You Higher』っていう。『君を高い高いところに連れて行くぜ』っていう歌なんですね。で、今日紹介するのはですね、その当時世界でいちばん高かったビルのニューヨークの世界貿易センタービルって、2つあったんですけど覚えてますか?

(赤江珠緒)はい。もちろん。

(町山智浩)ツインタワーだった。あの間を綱渡りした男の話を描いた映画『ザ・ウォーク』という映画を紹介します。で、この曲がね、ずっとビルが建っているところにバーン!とかかるんですね。その映画の中で。で、これは1974年の8月7日にですね、フランスの大道芸人の人でフィリップ・プティっていう人がですね、当時23才だったんですけども。当時、世界一高かったビルのワールド・トレード・センター。世界貿易センタービルの2つのビルの間に綱を、ロープを渡して、その間を何度も行ったり来たり渡ったという事があったんですよ。

(赤江珠緒)ええ。もう40年以上前にね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、それはね、実は1回、アカデミー賞をとった映画になっているんですね。

(山里亮太)えっ?もう映画になってるんですね。

(町山智浩)はい。2008年にね、『マン・オン・ワイヤー』というドキュメンタリー映画になっていまして。それはアカデミー賞のドキュメンタリー部門で最優秀賞をとっているんですよ。

映画『マン・オン・ワイヤー』

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)ただそれは、どういう風に渡ったか?っていう綱渡りをするまでの経過とかを関係者にインタビューしているだけの映画なんですね。っていうのは、カメラは持っていってるんですけど。綱渡りをした。ところが、ムービーカメラ。だから映画とかビデオのカメラは持っていったんですけど、撮れなかったんですよ。

(赤江珠緒)えっ?

(町山智浩)ある事情で。それは後で話しますが。だから、映像が存在しないんですね。動画が。

(赤江珠緒)えっ?その、世紀のね、綱渡りなのに?

(町山智浩)そうなんですよ。だから今回、劇映画でそれが作られたと。それが『ザ・ウォーク』という映画なんですね。実際に動くところを見せてやるよ!っていうことなんですけども。はい。で、これはですね、まずどういう話か?っていうと、17才の少年の主人公のフィリップ・プティっていうのが、彼がフランスで大道芸人やっていたんですけど。雑誌でですね、パラパラとめくっていたら、『もうすぐニューヨークに世界一高いツインタワーができるよ』っていう記事を見つけるんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それは歓声予想図なんですね。世界貿易センタービルの。

(赤江珠緒)あ、まだできていなかった時?はい。

(町山智浩)できてないんですよ。で、それを見てですね、この2つの塔の間を綱渡りしてやるぜ!って誓うんですよ。その少年が。

(赤江珠緒)よくわからない夢だけど、すごいです。それを見て?

(町山智浩)まだできてないのにね。はい。で、そこからですね、何年もかけてその計画を実行するまでのいろんな作戦が映画になっているんですよ。

(赤江珠緒)はー!

(町山智浩)これ、もう本当何年もかかって。だから、17才の時にやろうと思って、実際にやった時は24才ですからね。すごいかかってるんですけど。

(山里亮太)壮大な計画だったんですね。

(町山智浩)そうなんですよ。で、どうしてそんなすごい計画になったか?っていうと、この2つのビルを綱渡りするっつったら、日本人だったら電通とかさ、テレビ局を巻き込んでイベントにするじゃないですか。

(赤江珠緒)そうでしょうね。

(町山智浩)金出してもらってね。でも、プティさんはそれが嫌だったんですよ。だから1人でやろうとしたんです。

(赤江珠緒)えっ?

(山里亮太)お金目当てとかでもないんですね。

(町山智浩)お金目当てじゃない。ただ、やりたい!っていう。前、『エベレスト3D』っていう映画を紹介しましたけど。あれも、山を登る理由ってないわけですよね。

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(赤江珠緒)うんうんうん。

(町山智浩)山があるから登るっていう。それと同じなんで。高いビルがあるから渡るんだっていうことなんですけど。はい。

(山里亮太)すごい発想だな・・・

(町山智浩)で、その間、何度もニューヨークに行って。彼はパリに住んでいたんですけど。ニューヨークに行って偵察するんですよ。建築中のビルを。で、建設現場に乗り込んで行って。工事をしている人のふりをしてですね。で、写真を撮りまくったり、あと設計図を手に入れたりして。で、フランスに帰ってその模型を作って、いろいろ試行錯誤するんですね。いったいどうやってロープを渡したらいいんだ?とか。

(赤江珠緒)すごい情熱ですね。

(町山智浩)すごいんですよ。だからこれね、見ているとね、この『ザ・ウォーク』っていう映画は『ミッション・インポッシブル』とかね、あと宝石強奪ものとか、そういった不可能な作戦に挑む泥棒とかスパイの映画に近いですね。

(山里亮太)へー!しかもそれが実話だっていうんだから、すごい。

(町山智浩)これ、実話なんですけどね。で、まずロープを渡すのにどうしたらいいか?要するに、ビルの間が何メートルか離れているわけですね。かなりね。

(赤江珠緒)たしかに、どうやって渡すんだろう?

(町山智浩)その間にロープを渡さなきゃならないわけですよ。60メートル離れているのかな?ビル同士が。で、どうしよう?って。ラジコンの飛行機を飛ばそうか?とかね、いろいろ考えるんですけど。で、考えたのはね、弓矢を射つんですね。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)釣り糸をね、弓矢のお尻にくっつけておくんですよ。すると、弓矢は60メートルぐらい飛ぶんですね。で、向こうにたどり着いたらその釣り糸を引っ張って。釣り糸の端っこにロープをつけて。そのロープをだんだん太くしていって、最後は鋼鉄製のワイヤーにして。で、鋼鉄製のワイヤーを渡すっていう風にね。何度も練習するんですけども。

(赤江珠緒)でも、不安。自分で引っかけていったロープ?ええっ!?

(町山智浩)そうなんですよ。仲間がいるんですけど。自分で引っかけるんじゃなくて、射つ人は向こう側のビルに登らせておいて。で、相棒と組んで。まあ、写真家なんですけども。何人かのチームを作って計画するんですね。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(町山智浩)で、今度その上に行くには、そこは港に近いから、国防上の非常に重要なところなんですね。世界貿易センタービルっていうのは。だから管理しているのが港なんですよ。ニューヨーク港なんですね。だからものすごく警備が厳重なんで。どうやってやるか?って、出入りの業者の写真をいっぱい撮って。出入りの業者の作業服と同じ服を作ったりするんですよ。

(赤江珠緒)そこまで?はい。

(町山智浩)そう。だから泥棒みたいなものですね(笑)。で、あとIDが必要なんですね。身分証明書が。それがないと入れないんで、それも偽造したりですね。そういう話がずっと続いていく映画なんですけども。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)ただやっぱり、この映画の最大の見せ場は綱渡りそのものなんですよ。で、映像がないから、それを全部実際に渡っている感じで体感させようっていうのがこの『ザ・ウォーク』っていう映画の主題なんですけど。っていうのは、これを監督したのはロバート・ゼメキスという監督の人なんですね。

(赤江珠緒)ふん。

ロバート・ゼメキス監督作品

(町山智浩)この人は、『バック・トゥ・ザ・フューチャー三部作』でいちばん有名ですね。で、彼は最近ずっと『ポーラー・エクスプレス』っていう映画があったの、覚えてます?

(赤江珠緒)ん?ちょっとわからないです。

(町山智浩)全部CGで作るアニメーションなんですよ。人間の演技を全部モーションキャプチャーって言ってコンピューターに取り込んで。それを全部アニメーションにするっていう仕事をずっとしてた人なんですね。

(赤江珠緒)ええ、ええ。

(町山智浩)ところが、それで何本か映画を撮るんですけど。『ベオウルフ』とか『クリスマス・キャロル』とか。そのプロジェクトにもう10年ぐらいかかりきりになっていたんですけども、大失敗しちゃうんですよ。プロジェクト自体がぜんぜん利益があがらなくて、会社がもうガタガタになっちゃうんですね。彼の。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、それをたたんで、実写映画に戻るんです。2012年に『フライト』っていう映画で、酔っぱらいのパイロットの話だったんですけども。デンゼル・ワシントンが演じていたやつですね。あれも実話がもとなんですけども。で、今回はいままで培ったCG技術を徹底的に応用してですね、観客全員に綱渡りを体感させるっていう映画にしてるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?(笑)。

観客全員に綱渡りを体感させる

(町山智浩)これがすごいですね。これね。だから、本当に綱渡りしているところにカメラを持ってくる感じになっているんですね。まあ、コンピューターグラフィックスなんですけど。だから俳優たち以外は全部背景はニューヨークとか、全部コンピューターグラフィックスで作っているんですけども。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、フラフラしながら綱を渡って、カメラが渡っているそのプティさんの横にいるかと思うと、時々落ちるんですよ。カメラが。

(赤江珠緒)うん!

(町山智浩)ギューッと落ちていくんですよ。落ちたらどうなるだろう?っていうのが高所恐怖症の人のいちばんの恐怖じゃないですか。高所恐怖症の人って、自分が落ちるところを想像しちゃうらしいんですね。吸い寄せられてくような感じがあるんですけど。それをカメラの動きがなぞる感じで、ヒュッと落ちるんですよ。

(赤江珠緒)うわー・・・ここに写真がありますけど、ものすごい高さですね。改めて見ると。

(町山智浩)これ、400メートルかなんかなんですね。高さ。すごいんですよ。それを、本当に落ちる感じを何度も何度も味わせるっていう、すごい嫌な映画になってますね。

(赤江珠緒)うわー・・・

(山里亮太)すごい映画だ。しかもいま、3Dですよ。IMAXとかで見たらえらいことになっちゃいますよ、これ。

(町山智浩)そう。これ、3Dなんですよ。3D IMAXで。前の『エベレスト』もエベレストの8千メートルの高さを味わせるために3D IMAXで作られたって言いましたけど。これも3Dのために作られた映画ですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、このロバート・ゼメキス監督は『いままで試行錯誤したり、会社がガタガタになったり、いろんな苦労をしたけれども、この「ザ・ウォーク」を作るためにいままでの苦労と大損はあったんだ』って言ってるぐらいなんですよ。

(赤江珠緒)あ、そこまで!注ぎこみましたか。

(町山智浩)そこまで気合い入っている。でね、これはやっぱり3D映画としての意味がすごくある映画になっていて。で、すごくおかしかったのは僕ね、これを見ていて思い出したのは、昔に見た3D映画なんでね。『悪魔のはらわた』っていう映画があったんですよ。

(赤江珠緒)ほうほうほう。はい。

(町山智浩)僕が子供の頃の3D映画で。あと、『13日の金曜日3D』っていう映画もあったんですけど。当時。その頃は3Dがものすごく珍しかったんで。たとえばぜんぜん関係ない野球をしているシーンでも、野球のバットをカメラに向けてグイグイ押し付けたりするんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)3D感を出すために。

(町山智浩)『ほら、3Dだよ』っていう感じで。それとか、ヨーヨーをしたりするんですよ。主人公がいきなり。で、カメラに向かってヨーヨーしたりして、しょうがねえなと思ったんですけど。あの頃は3Dっていう技術の使い方がわからなかったんですよ。みんな。

(赤江珠緒)ヨーヨーね(笑)。

(町山智浩)3Dはあるんだけれど、どうしたらいいかわからない。これはいったい、なにに使おうか?って困っていて。ずーっとみんな困っていて、怪獣映画とかホラー映画にしか使えなかったんですけども。これで、最近は本当にやっと3Dの意味がね、だんだんわかってきて。みんな使い方がわかってきたっていうのがね、すごく思いましたよ。見ていて。

(山里亮太)たしかに奥行きの感じとか、高さとか。すっごい感じますもんね。3D。

(町山智浩)そうなんですよ。本当にロープが張ってある感じで。で、そのロープの、ワイヤーの上に、やじろべえみたいにバランスを取るための横棒を持って渡るんですね。このプティさんはね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)すると、途中で練習中に失敗してね、落ちるシーンがあるんですけども。まあ、何度も落ちるんですけど。練習中ですから、何度も落ちますよ。要するに、高さがそんなに高くないところで練習してるんですね。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)その時にね、横棒も一緒に落ちるんですけど。それ、カメラに向かって落ちてくるわけですよ。当然ね、下から撮っているから。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)思わず、観客全員が避けてましたよ(笑)。うわっ!っつって(笑)。

(赤江珠緒)そんなに?へー!

(町山智浩)すげー!全員避けた!って思いましたよ。見てて。うわっ!って反射的に体が動いちゃうんですね。あとね、このプティさんはやっと作戦決行ということになって。で、もう直前にやっぱりね、工事現場の人の恰好をして。ヘルメットをかぶって作業着きて現場示唆とかするわけですよ。こっそりね。その時にやっぱり工事現場だから、釘を踏み抜いちゃうんですよ。足で。

(赤江珠緒)うわっ!大事な足なのに?

(町山智浩)ところが、釘を踏み抜くシーンも3Dなんで・・・(笑)。

(赤江珠緒)えっ!?

(町山智浩)うわっ!と思いましたよ(笑)。釘、出っ張ってる。刺さる!みたいな感じなんですよ。

(赤江珠緒)怖いですね。いろんな意味でね。

(町山智浩)いろんな意味で。直前に足、大ケガしてね。それでも登んなきゃなんなくなるんですけどね。一生に一度のチャンスだ!って。

(赤江珠緒)でもプティさんは完全に無許可で渡ったんですね。

(町山智浩)完全に無許可ですよ。そうなんですよ。

(山里亮太)するともう、犯罪ですもんね。

(町山智浩)そう。だから警察がバーッ!と来たんで、映像を撮れなかったんですよ。

(赤江珠緒)ああ、なるほど!

(町山智浩)そうなんですよ。押さえられちゃうからね。だから誰も見たことがない映像を今回はCGの力でお見せします!っていう映画になっていますね。

(赤江珠緒)へー!渡っちゃうのか、ここを。

(町山智浩)高所恐怖症とか、ないですか?

(赤江珠緒)高所恐怖症ですね。私、結構無理ですね。

(町山智浩)どのくらい無理ですか?

(赤江珠緒)もうね、観覧車の結構上に来ると、動けないみたいな感じですもんね。席とかかわれないし。

(町山智浩)ああー。本当の高所恐怖症の人っていうのは、たとえば吊り橋とか渡るのに、完全にしゃがみこんで一歩も動けなくなるらしいんですよ。

(赤江珠緒)ああー。そこまでじゃないな。

(町山智浩)だからそういう人を助けるには、完全に目をつぶらせて誰かにつかまらせて歩くしかないんですよね。

(赤江珠緒)ふんふんふん。

(町山智浩)ところが、これニューヨークかなんかで試写やったらしいんですけど。やっぱり高所恐怖症の人がいて。本当に試写会場でゲロ吐いて大変だったらしいですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?(笑)。

(山里亮太)そんなに高い感情を味わせる演出になっている?

高所恐怖症の人がゲロを吐く臨場感

(町山智浩)そう。監督はね、インタビューでそのことを言っていて。『何人かゲロ吐いたけど、やった!って思ったね』って言ってましたね。

(山里亮太)いや、でもそっか。それぐらいのリアルな・・・

(町山智浩)そう。やった!って感じだったみたいですよ。

(山里亮太)『ゲロ吐いた!やった!』って(笑)。

(町山智浩)『ゲロ吐いたーっ!』みたいな。何をやってるんだ?と思いますけどね。はい。これね、主役のプティ役の人はですね、『プティ』っていうのは『ちっちゃい』っていう意味なんですよね。フランス語で。だからちっちゃい人が演じてるんですけど。ジョセフ・ゴードン=レヴィットくんという俳優さんですね。

(山里亮太)ふん。

(町山智浩)この人はですね、『(500)日のサマー』っていう映画がありましてですね。非常に痛い恋愛映画だったんですけど。それで男の子なのに恋に恋する草食系男子を演じて人気になった人なんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)で、背が低いだけじゃなくてね、なで肩なんですよ。ものすごい。で、本当に弱っちそうな少年だったんですけども。いまはですね、筋肉モリモリなんですよね。彼はね、自分で監督した映画で『ドン・ジョン』っていう映画のためにすごく身体を鍛えて、筋肉モリモリに変身したんですよ。

(赤江珠緒)ふんふん。

(町山智浩)『ドン・ジョン』っていうのはね、セックス中毒で、しかもネットポルノ中毒っていうどうしようもない筋肉男の役をやっていまして。そのためにね、身体を鍛えたんで。この映画でもね、もう鍛えまくって、すごい身体で出てきますけどね。

(赤江珠緒)ふーん。このプティさんのね、写真かな?これ、ちょっと見るとなんかパンタロンみたいな恰好で渡るんですか?

(町山智浩)あ、そうそうそう。これ、実はね、上にも衣装があったんですよ。で、なんかいわゆるサーカスの人が着てるような金ピカみたいな、パンタロンみたいなのを着る予定だったんですけど、上着はね、落っことしちゃったんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(町山智浩)ビルの上からね。で、それを・・・下ではね、恋人が双眼鏡で見てたんですけど。ドキュメンタリーの中にも出てくるんですけど。『マン・オン・ワイヤー』っていう。その服を落っことした時に、彼が落っこったと思って。死んだ!と思ったみたいですけどね。

(赤江珠緒)ちょっとちょっと!

(町山智浩)服が落ちただけだったんですけどね。はい。これね、『マン・オン・ワイヤー』っていうドキュメンタリーは結構ヒットしたんで。日本でも。アカデミー賞もとっているんで、見ている人は結構多いと思うんですよ。で、話はまったく同じなんですよ。映画と。

(赤江珠緒)ああ、そうですよね。うん。

(町山智浩)でも、こっちは3D体感ができるっていうことがね、売り担っていますね。

(赤江珠緒)ああ、じゃあストーリーをさらにおさえた上で体感するっていうのがいいかもしれないですね。

(町山智浩)見てから行ってもぜんぜん同じなんですけど。中身はね。ただ、言葉でしか言わなかったところが全部映像になって出てくるんですよ。

(山里亮太)ああ、今回のは。

(町山智浩)で、真夜中にそのロープを弓矢で射ちこむんですけど。真夜中だったんで弓矢がどこに当たったか、届いたかわかんなかったんですね。見えなくて。で、ライトをつけたら見つかっちゃうから、ライト無しで発見しなきゃなんないんですよ。

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)で、どっかにてぐすが引っかかっているはずなんですね。釣り糸がね。でも、真夜中に釣り糸が引っかかっているのを探すの、大変じゃないですか。見えないから。それでね、このプティさんが考えたのはね、全裸になって貿易センタービルの上をウロウロすれば、体のどっかがてぐすに引っかかって感じるはずだ!って。ビルの上で全裸になって小一時間ウロウロしてたんですよ。この人。

(赤江珠緒)(笑)。プティさん、本当に不思議な人ですね。

(町山智浩)不思議ですね。パンツを脱ぐ必要はなかったんですけど、なぜかパンツを脱いだらしくて。ただ、それはドキュメンタリー映画では話の中で出てくるだけなんですけど。今回は、ちゃんとジョセフ・ゴードン=レヴィットくんが全裸になりますから!

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)出た!町山さんの。

(赤江珠緒)『安心してください』みたいに言われても(笑)。

(町山智浩)出ました!

(山里亮太)出ました。男性の全裸情報。

(町山智浩)そこが一応売りっていうことで。しかも3Dですからね。

(赤江珠緒)3Dの意味(笑)。

(町山智浩)3Dですから。

(山里亮太)じゃあちょっと、お尻がドーン!と出てくるかも(笑)。

(町山智浩)そう。3Dの、ちゃんと役に立ってますね。はい。というのがね、『ザ・ウォーク』っていう映画なんですけど。すごく、ハッピーな映画じゃないですか。事実としてはね。ただね、やっぱり言えないんですけど、最後にすっごい切ない気持ちになる終わり方をしてますね。

(赤江珠緒)ええっ?切ない気持ちにこの展開でなりますか!?不思議だなー。

(町山智浩)この展開でなるんですね。これはね、やっぱり世界貿易センタービルっていう建物がたどった運命と関係がありますね。

(赤江珠緒)なるほど。ほー。いや、たどった運命についてはみなさん、ご存知ですけど。ああ、そうですか。へー!

(山里亮太)ちょっと、楽しみだな。ドキュメンタリー出。

(赤江珠緒)じゃあ、フィリップ・プティさんはいまもご存命っていうことですか?

(町山智浩)ああ、そうです。いまも元気ですよ。はい。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)ただね、これはね、本当に高所恐怖症のふりしてしがみつくこともできるし。高所恐怖症の女の子を連れて行って、しがみつかせることもできるような映画ですね。はい。

(赤江珠緒)なるほど。ふんふん。

(町山智浩)という、デートムービー?わかんないけど(笑)。

(山里亮太)(笑)。ちょっと目的違う。ゼメキス監督もそのためには作ってないと思いますからね(笑)。

(町山智浩)そのためには作ってない。ゲロ吐かれたりしてね、はい(笑)。

(山里亮太)嫌だな、隣でゲロ吐かれたら(笑)。

(町山智浩)バーッ!って顔にかけられたりするっていう、そういう感じですね。はい。

(赤江珠緒)今日は3D映画『ザ・ウォーク』をご紹介いただきました。日本ではですね、来年の1月23日の公開予定です。はい。町山さん。来週、スペシャルウィークになるんですけども。来週は?

(町山智浩)はい。来週はマット・デイモンが火星に取り残されるってことで、アメリカで大ヒットしている映画『オデッセイ』をご紹介します。

(赤江珠緒)ねえ。なんか悲しそうだけども、割と明るいという映画ですね。

(町山智浩)いや、ものすごい明るい映画でした。火星に取り残されて、絶対死んじゃう!っていう状況で異常に明るいんですよ。

(赤江・山里)(笑)

(赤江珠緒)どんなお話なんでしょうか?はい。

(町山智浩)非常に明るかったですよ。履いてましたね。

(赤江珠緒)(笑)。脱げない。脱げない。はい。『オデッセイ』をご紹介いただきます。それでは町山さん、来週もよろしくお願いします。

(町山智浩)はい。よろしくお願いします。

(赤江珠緒)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

ザ・ウォーク (字幕版)
Posted with Amakuri at 2018.3.26
Robert Zemeckis, Steve Starkey, Jack Rapke

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