宇多丸 映画『キングスマン』を語る

宇多丸 映画『キングスマン』を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『ウィークエンドシャッフル』でスパイ映画『キングスマン』を紹介。その魅力について解説していました。

キングスマン(字幕版)

(宇多丸)今夜扱う映画は、先週、ムービーガチャマシンを回して決まったこの映画。『キングスマン』!ロンドンの高級テーラー、キングスマンは実は世界で暗躍するスパイ機関だった。キングスマン所属のベテランエージェントと若き候補生がコンビを組み、人類の抹殺を企てる組織に立ち向かっていく。監督は『キック・アス』『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』などのマシュー・ヴォーン。主演は『英国王のスピーチ』などのオスカー俳優、コリン・ファースと今作映画初出演。新鋭、タロン・エガートンということでございます。

ということで『キングスマン』、もう見たよ!というですね、リスナーのみなさま。『キングスマン』ならぬウォッチメンからの監視報告をメールでいただいております。メールの量は、多い!非常に注目作というのもありますしね。賛否で言うと賛が8割以上。『今年ベスト!』『クライマックスのあるシーンにびっくり&爆笑』『キレキレのアクションがかっこいい』『スーツでメガネのコリン・ファースに萌え死んだ』などが主な意見。みなさんね、結構、8割以上の方が楽しんだ。

反面、『ストーリーやキャラクターに弱いところがある』という意見も少なくなかった。なので、『いい意味でB級映画だ』とか、『傑作になり損ねた。惜しい』なんていう声もございました。代表的なところをご紹介いたしましょう。

(リスナー投稿メール省略)

さあ、『キングスマン』。私もですね、TOHOシネマズ新宿で、劇場で。あと、輸入ブルーレイがもうすでに出ていて。それで通しで3回ぐらい見てますけども。まあ、このところ世界的になぜかスパイ映画ブームというのが時ならぬ、起こっていてですね。たとえば当番組。ちょうど1月前に扱った『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』とかですね。年末には本家本元。『007 スペクター』。サム・メンデス第二弾があったりとかですね。

世界的なスパイ映画ブーム

あと、今回の原案・脚本・監督・制作マシュー・ヴォーンの盟友というか、古くからのあれでありますガイ・リッチーの『コードネーム U.N.C.L.E.』。要するに『ナポレオン・ソロ』のリメイク版であるとか。あと、日本公開未定ですけども、ずばり『スパイ(Spy)』なんてのもね。あれは、『ブライズメイズ』『デンジャラス・バディ』コンビですよ。ポール・フェイグ監督とメリッサ・マッカーシーのね。これ、ちょっと日本公開を早く・・・しないの?DVDスルーだったりするのかな?これ。『スパイ』とか。

まあ、とにかくスパイ映画ブーム。で、世界的な公開順で言うと、実はいちばん早くこの流れに先鞭をつけたのが今回の『キングスマン』と言えるんじゃないかな?と。どういうスタンスの映画か?というのは、劇中のある会話がそのものズバリ、端的に表してくれていますと。まあ、悪役がいるわけですよ。サミュエル・L・ジャクソン演じる、スティーブ・ジョブズ的なIT長者なんだけど、サミュエル・L・ジャクソンだから、ラッセル・シモンズ風味っていうかですね。

ラッセル・シモンズ、わかります?ヒップホップ業界のお金持ちのおじさんがいてですね。RUN DMCのRUNのお兄さんという人がいてですね。ヒップホップファッションベースなんだけど、ちょっとプレッピー感のあるアイテムを入れるっていう。ラッセル・シモンズがやっていたファットファームっていうブランドがちょうどそのバランスなんですけど。なんかあの服装も含めて、まあラッセル・シモンズ風味のスティーブ・ジョブズ的な悪役。なおかつ、思想的には『007 ムーンレイカー』というね、1979年の。ドラックスっていう悪役がいるんだけど。的な。まあ、要は行き過ぎたエコロジー思想を持った悪役。

ヴァレンタインっていう悪役がいて。と、いかにも正統英国紳士といった佇まいのコリン・ファース演じる正義のスパイがいてですね。ハリー・ハート。コードネーム ガラハッド。要するにアーサー王伝説。コードネームは全部円卓の騎士の名前がついているわけですけど。とにかくこの2人がね、こんな会話をする。『スパイ映画は好きか?』『最近のはシリアスすぎてちょっとあまり好きじゃないけど、昔のは最高だった。現実離れしてるからね』『おお、昔のボンド映画だな』なんて。こんな会話がある。

もう、このまんまのスタンスで作られた映画と言って過言じゃないと思います。これが『キングスマン』。つまり、仮想的として、たとえばジェイソン・ボーンシリーズとか。特にやっぱり近年の、ダニエル・クレイグ主演になってからの『007』のリアル化というか、シリアス化というか。ただ私、『スカイフォール』はリアル化とは違うと思いますけどね。あれは、アート化でしょうね。ただ、まあシリアスではある。

とにかくそういう、なん暗い。みんな暗い顔して、なんか深刻な顔をしているような近年のそういうスパイアクションの映画の潮流に対するアンチとして。要は荒唐無稽上等。不謹慎上等っていうかね。60年代から70年代、スパイ映画全盛期のポップなテイストを復活させるというスタンス。たとえば、スパイ専用の、現実には絶対あり得なさそうな秘密兵器であるとか。あるいは、特殊な殺人技術を持つ敵用心棒みたいなね、ことですね。で、さっき言った昔のね、『007』がどうだとか。

あるいは、マイケル・ケインが出ているわけですけど。マイケル・ケインは『国際諜報局』っていう、ハリー・パーマーっていうスパイを演じているマイケル・ケイン本人が出てたりして。メガネがハリー・パーマーと同じだっていうのは、監督は『偶然だ』って言ってるけど。あるポイントでマイケル・ケインがね、『自分たちは上流の出だからさ・・・』なんてことを言ってるんだけど。あるポイントで、これ、ちょっとネタバレになるから言いませんけど。あるポイントでマイケル・ケインが思わず、コックニー訛りでしゃべり出しちゃう。

つまり、下層階級というか、品の悪いしゃべり方を始めちゃう。それによって、ハリー・パーマーっていうキャラクターはまさにそのコックニー訛り。あまり育ちがよくないしゃべり方をするキャラクター。だから要するに、今回のアーサーっていう役を演じているマイケル・ケイン自身が、ひょっとしたらハリー・パーマーの年老いた姿かも?って思わせるような役柄で登場してたりとか。とにかく、いちいちポイントを挙げていくとキリがないくらい、過去のスパイ映画とかドラマとかのオマージュが全編に散りばめられている。

で、それが要するに劇中でこれみよがしに。劇中でスパイ映画のあり方の話をしちゃうような、要するにメタな構造を持っている。マシュー・ヴォーン自らが語っている通り、ポストモダン的なアプローチをしていると。でも、そのネタっていうのが、ポストモダン的なアプローチを露骨にしている分、それ自体、毎回説明してくれるので。まあ知らなくても、『ああ、まあそういう昔の何かをなぞらえているな』っていうのはわかるようになってたりするんですけど。

で、もうこの時点で、最近の暗い顔をしたスパイ映画とは違う路線。十分楽しいんですけど。この『キングスマン』葉ですね、そういう古き良きスパイ映画的な記号っていうのを、たとえば『オースティン・パワーズ』とかあったじゃないですか。『オースティン・パワーズ』みたいな、アナクロ感を面白がるみたいな、パロディーとして扱うんじゃなくて。現代に、文字通り本当にこの言葉が相応しい映画だと思いますけども。正しく継承して見せるというね。で、そのスタンス自体もこの作品内でメタ的に表明していると。

『古き良きものを正しく継承するんだ、現代に』と。たとえばね、ジェームズ・ボンド的な、タキシードを着ているようなキザなスパイみたいなのに対して、現代的な若者が世代交代しますよっていうお話は、たとえばヴィン・ディーゼル主演の『トリプルX』っていう映画。みなさん、覚えてますか?2002年にね。あれでやっていたわけですよね。露骨な構図として。タキシードを着たジェームズ・ボンド風のスパイが殺されちゃって、ストリートからやって来た今風の。『いまのワルはこうだぜ!』みたいなのが来るんだけど。

今回の『キングスマン』は過去とか伝統を否定するんじゃなくて、俺が現代版で正しく継承するよというスタンスの違い。まさに今回も、モロにジェームズ・ボンド風のやつが来て。似たような目にあうんだけど、現代版の更新の仕方に非常に対称的なスタンスがある。これはですね、当初、アメリカを舞台にするような案があったのを、原作はコミックなんですけどね。『キック・アス』コンビと全く同じコンビでの。しかも、作画がデイブ・ギボンズっていう『ウォッチメン』の作画の人ですけども。

その原作コミックの案を練っている段階で、アメリカを舞台にする案があったのを、イギリスにしたっていうのがこれ、大正解だと思うと。イギリスにおける現代的な若者、不良。ねえ。ヒップホップ風のファッション。ジャージを着たりっていう意味で、世界的に不良のしている格好って似てるんだけど。イギリスでは、僕、ぜんぜん知らなかったんだけど。映画秘宝とか読んで、『ああ、そうなんだ』って。『チャブ(Chav)』って言うんだって。で、『チャブ』って調べると、ああ、こういう風俗としてあるんだっていう。

イギリスの不良 チャブ

チャヴ 弱者を敵視する社会
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オーウェン・ジョーンズ, Owen Jones
海と月社

なんかね、Bボーイ風の、ヒップホップの格好をしてるんだけど、キャップはバーバリー柄だったりとかっていう。これはコミック版の方のキングスマン。まさにその格好がモロに出てきたりするんですけど。

で、公団住宅に住んで。これもね、アメリカでもプロジェクトで住んでるのと同じく、公団住宅住んで、パブ行ってっていう。まあ、なんだろうね?映画に出てくる中で言うと、『アタック・ザ・ブロック』に出てくる若者みたいな感じでしょうね。とにかく、イギリスの労働者階級っていうか、下層な世界がいて。とにかくイギリスっていうのは強固な階級社会があると。しゃべり方ひとつで、さっきちょこっと言ったけど、コックニー訛りとか、そういうしゃべり方ひとつで階級みたいなのがわかっちゃうっていうのがあると。

先ほどのメールにもあった通りですよね。厳然とそういうのがあって。アメリカの貧しさとはまたあり方が違って。昔からこう、社会構造として厳然とあって。上に行くなんてことはあまり考えられないような、チャンスなんかもないような世界があると。で、一方ではコリン・ファース。ザ・英国紳士っていう感じでね。今回、衣装デザインをやっているアリアン・フィリップさんっていう人は、『シングルマン』のトム・フォードのスーツを見事に着せたアリアン・フィリップさんでもありますから。

コリン・ファースの見事な感じであるとか、さっき言ったマイケル・ケインであるとか。マーク・ストロングでもいいですよ。とにかく、英国紳士たち感と、その一方では現代の若者感。アメリカのそれとはまたちょっとニュアンスが違う若者っていうのがいて。で、とにかくその、強固な階級社会の差っていうのが背景にあるから、『伝統を正しく継承するのは俺たち。貴族じゃねーぞ、俺たちだ。生まれではなく、学びと、真の意味での内面の気高さこそが紳士を作るんだ』というメッセージがものすごく感動的に響く。先ほどのメールにあった通りだと思います。

すごく、誰もがグッと来る。あとは、たとえば騎士団の精神を継承する。さっきね、コードネームは円卓の騎士。アーサー王伝説の名前から取っているよって言いましたけど。まあ、マシュー・ヴォーン大好きな『スターウォーズ』がまさにね、騎士団の意思を継ぐというね。で、くすぶっていた若者に『いや、お前は才能があるよ』って言って。ある種、直接の血縁じゃないけども、教えこむ。だから、オビ=ワンですよね。コリン・ファースはオビ=ワン的な立場という。そういう比較もできる。

あと、あるポイントで、超悪い・・・これもネタバレしないように。超悪いやつがこう、『俺はお前に与しないよ』って主人公が言う時に、返すのは『よかろう(So be it)』って言うんですね。これはもう完全に皇帝のね、『So be it…Jedi』っていうね、あのセリフをたぶん模しているんだと思うんですけどね。ということでですね、イギリス的な不良。チャブのあり方っていうのをね、体現する、ほぼ無名の新人ですよね。

ただ、そのふてぶてしさがすっげーハマっていると思います。この人。タロン・エガートンさん演じるエグジーが、何もない人なわけですから。スパイ養成トレーニングを積んでいくっていうのが中盤の流れになって。要は、スパイ映画でありながら、同時に、いわゆる新兵ものっていうか。なんにも知らない若者が訓練を積んでいくもの。あるいは、『ハリー・ポッター』的と言ってもいいかもしれない。全寮学園もの。ただの学園ものじゃなくて、全寮学園もの。要は、若者たちの成長物語としても楽しいなというような感じ。

『キングスマン』の銃器

とにかくこのようにですね、1個1個の要素は既存の、過去のいろんなもののモザイクでできていたりするんだけど。それをトータルでまとめあげるデザインセンスとかバランスが絶妙っていうのが今回のミソだと思います。象徴的なのは、キングスマンが持つ専用のピストルがあったじゃないですか。すいません。多少銃器の話をさせてください。専用のピストルがあって。あれ、架空の銃なんですけど。ベースになっているのはトカレフ。いわゆるTT-33っていう、共産圏で作られた銃ですね。

で、トカレフなんだけど、引き金。トリガーの形を見るに、ちょっとそれをダブルアクション化とかしてるのかな?と。あと、多少は多弾数化してて。モデルチェンジはしているけど、相当多弾数化してて。なおかつ、ピカピカに再仕上げしてあって。なおかつ、メインの銃口。バレルの下にもう1個、普通だったらそこ、ライトとかレーザーとかをいまどきだったら置く、光学ユニットかな?っていう形なんだけど、話を聞くと散弾を発射できるっていう機構がついているっていう。

まあ、そういう架空のカスタムガンを専用銃にしてると。これって、もちろん完全に嘘なんですよ。しかも、近代戦とかに使うものとしてはもう、嘘もいいところ。リアリティーはゼロです、これ。なんだけど、同時に妙に、らしいっていうか。いや、本当に闇でずーっと受け継がれていた、これこそがいちばん使い勝手がいいんだ!っていう武器ってこんな感じなのかも!?っていう説得力がある。嘘なんだけど、妙にらしい。

あるいは、非常にクラシカルなんですよね。形とかもさ。いまどきのその近代銃じゃないんだけど。でも、その下にぼっこり付いている、そのデザインが妙に新しめにも見える。クラシカルなんだけど、妙に新しい。嘘だけど、妙にらしい。クラシカルだけど、妙に新しい。このバランス感覚!このデザインセンス!これがやっぱり『キングスマン』全体の素晴らしさを象徴する。あの銃のデザイン1個とってみても、象徴されているということじゃないかと思いますね。

ちなみにマシュー・ヴォーンさんね、監督作としては前作にあたる『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』。シネマハスラーでも2011年6月にやりましたけど。あれも完全に60年代スパイ映画テイスト。なおかつ、全寮学園ものでしたよね。まあ、傑作でしたけど。特にマイケル・ファスベンダー演じる、後のマグニートーはモロにショーン・コネリーボンド風に描かれていたわけですよね。

その意味で、今回の『キングスマン』。主人公エグジーくんは、あのヘラヘラふてぶてしい感じはどっちかって言えばロジャー・ムーアボンドのノリ。さっき言った『ムーンレイカー』感はいろんな意味で強いなという風に思います。本当に、どこがっていうのは言っていくとキリがないんで飛ばしますけど。で、ですね、これ、どういうことか?っていうと、当番組でも以前特集した、これです。『人を殺して捨てゼリフ』感ですよね。ロジャー・ムーアっていうのは。

ロジャー・ムーアボンドはそれがブラックコメディーの域に達していたという。これがまあ、特徴なわけですけど。実は今回の『キングスマン』ですね、最大の特徴は、そういうブラックコメディー要素。人を殺して捨てゼリフ的なブラックコメディー要素が、これは褒めてますが、どう考えても行きすぎているっていう(笑)。このポイントだと思います。古き良きスパイ映画ルネッサンスっていうね、そういう要素をいま、話してきましたけど。はっきり言って、こんなこと昔のスパイ映画はぜったいにやらないから!っていうことをやるわけです。

ちょっとね、雑誌とかでは結構ストレートにネタバレしまくっちゃっているようですけど、ここでは一応、大筋は伏せておきますけど。特に中盤のあるシーンと、クライマックス直前のあるシーン。音楽で言うと、レナード・スキナード『Free Bird』。これ、『デビルズ・リジェクト』のエンディングでかかる。レナード・スキナード『Free Bird』。南部のすごい代表的なね、ロックの曲ですけど。終わりの方のギターが盛り上がるところと、先ほどメールにもありました、『威風堂々』。クラシックが流れる2つのシーン。

繰り返しますが、これ、褒め言葉として、誰もが『ふざけすぎ!』って呆れ返ること必至の場面があるわけですね。もう本当に他の印象が正直、吹き飛んでしまうほど。と、同時に前者。レナード・スキナード『Free Bird』が流れるところは、恐ろしく複雑な振り付けを一気に見せ切る、超絶アクションシーンでもあるということだと思います。アクションの主体が常に画面の中心からブレない、独特の構図を全編でしてて。それがすごい活きている場面だったりですね。

あと、後者の『威風堂々』が流れる、もう本当にびっくりする場面っていうのは、ビデオゲームで『セインツロウ』っていうGTAのパクリゲームがありますけど。『セインツロウ』の中に出てくるサイケドラッグシーンを非常に彷彿とさせる場面でございまして。とにかくですね、不謹慎の極みみたいなもんなんですね。まあ、これは褒めてますけど。バイオレンスをちょっと、あんた無邪気に楽しげに描きすぎじゃないの?っていうのは『キック・アス』の時からマシュー・ヴォーン作品。ちょっと気としてはあったと思いますが。

ただ、今回の『キングスマン』の場合、そのウルトラバイオレンスがあるわけですけど。そのウルトラバイオレンスの対象は、言っちゃえば最低の差別主義者なわけですよ。で、描写的にも割とポップに描かれている。要するに、ゴアとかグロはないわけです。切り株とか、血がビューッ!とか、そういうのはちょっと抑え気味になっていて。そこはもう、嘘をついているわけですけど。なので、要は最低の差別主義者たちなので。対象が。割と良心は傷まない配慮は一応あるという。はい。

もちろん、作品全体のテーマとも一致してるわけですよ。差別主義者なんてのは最低だ!っていうのでね。これはあとですね、『イングロリアス・バスターズ』以降のタランティーノ作品の、こういうやつらはやっていいんだ!っていうイズムにちょっと通じるものじゃないかと思います。つまり、ちゃんといまの映画のある種の主張というか、バランスみたいなのにちゃんとなっているということだと思います。

欲を言えば、悪役のヴァレンタイン。さっき言ったラッセル・シモンズ風味のスティーブ・ジョブズ。せっかく伝記映画を公開してるっていうところ、ニュースで映るじゃないですか。そこさ、ちょっとダイジェストでいいから、彼がどうやって成功してきたか?のプロセスとか、見せてくれてほしかったんだよね。最初はたぶん、それこそラッセル・シモンズみたいにヒップホップレコードで儲けましたとかさ。なんかそういうの、なんか見たかったなとかね。

ないものねだりですけど。あと、主人公のエグジーがスーツを満を持して着るところ。現状でもすごく盛り上がるんですけど。俺、もっとこう・・・もっとためて!って思ったのは俺だけですかね?スタイリストの伊賀大介さんが言ってたのは、こうやってガーッ!って。決まったー!ってカメラが上がっていくと、ベースボールキャップをまだかぶっていて。『それは、取れ』って言われるとか。そういうのは、どう?みたいなの、言ってましたけど。

とにかくもうちょっと、ためてくんねえかな?って。それはないものねだりですね。うん。そんぐらいにもう十分に楽しんだ。まあ、公開順から言うと、世界的にはこの『キングスマン』より後に公開された『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』が、もう本当に豪速球ストレート。真っ向勝負。要はもう、別にポストモダンとかふざけとか、別に無しでもぜんぜん勝負できっし!みたいな。あれな大傑作だったのとはまた違うというか。対称的な楽しさ、うれしさというか。劇場でみんなで盛り上がるには、本当に最適じゃないでしょうか。

文句なしに面白かった作品だったと思います。10月10日の、みんな全員参加のパーティースタイルなんか、本当に似合う映画じゃないでしょうかね。はい。音楽の使い方の話とかももっとしたかったですけども。時間がもうないので締めたいと思います。ぜひぜひ、劇場でウォッチしてください!

<書き起こしおわり>

キングスマン(字幕版)
Posted with Amakuri
マシュー・ヴォーン, マーク・ミラー

https://miyearnzzlabo.com/archives/24341

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