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松尾潔 1989年アメリカR&Bチャートを振り返る

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松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中で1989年のR&Bチャートを振り返り。この年にヒットした曲を聞きながら、解説をしていきました。



(松尾潔)続いては、こちらのコーナーです。いまでも聞きたいナンバーワン。2010年3月31日に始まった『松尾潔のメロウな夜』。この番組は、メロウをキーワードにして、僕の大好きなR&Bを中心に大人のための音楽をお届けしています。ですが、リスナーのみなさんの中には『そもそもR&Bって何だろう?』という方も少なくないようです。そこでこのコーナーでは、アメリカのR&Bチャートのナンバーワンヒットを年度別にピックアップ。歴史的名曲の数々を聞きながら、僕がわかりやすくご説明します。

第23回目となる今回は、1989年のR&Bナンバーワンヒットをご紹介しましょう。この番組、松尾潔のメロウな夜を毎回欠かさずお聞きくださっている。そんなヘビーリスナーのみなさんは1988年という年。この88年を重要視していることっていうのはきっとご存知だと思います。もう何度も言っておりますね。『88年 ニュージャックスウィング元年』。まあ、こういうことを言うとかならず、『いやいや、キース・スウェットは87年にデビューしてますよ』なんてことを言う方はおっしゃるんですけども。

本格化したのが88年ということです。本当に、細かいことは気にしないように!って僕が言うなっていう話なんですけども(笑)。じゃあ、この89年っていうのはどういう位置づけか?っていうと、はい。『88年の翌年』って覚えればいいです。なんでしょう?この日本語。88年の翌年。つまり、ニュージャックスウィングというムーブメントが猛烈な勢いで定着していく、まだまだ上り坂の頃の1年と言えるでしょう。けど、これ定着していくっていうのは別の表現をしますと、まあ定着しきる前っていうことですから。つまり、ニュージャックスウィングという音色がこのR&Bシーンの景色を塗り替えていく前からの、もともとの色合いがまだまだ残っていた、そんな1年でもあります。1989年。

ニュージャックスウィング以外ですと、イギリスはロンドン、ブリクストンからのムーブメントでありました、ソウル・II・ソウル(Soul II Soul)のジャジー・B(Jazzie B)が仕掛け人になりました、グラウンド・ビートという、そんなムーブメントもございました。アメリカのR&Bシーンに時として、イギリスから新しい風っていうのが吹いてくることがあるんですけどもね。この年、R&Bチャートナンバーワンに輝いた曲は全部で37曲ありますね。さすがに、そのアーティストを全部ご紹介することはちょっと曲数的に難しいんですけども。この年の1曲目。これがね、もう大変象徴的です。ロバータ・フラック(Roberta Flack)の『Oasis』っていう曲が1位に入りました。



まだ・・・『まだ』っていう言い方も変ですけども、ロバータ・フラックのような、70年代のニュー・ソウルの香りを漂わせる人がチャートのトップに。まあ、もちろんスティービー(・ワンダー)とかそういった人たちはいますよ。だけど、ロバータ・フラックがチャートの1位になる時代だったんだなっていうのは、このソウル・ミュージック、R&Bっていうのを20年、30年に渡って聞いている人たちからすると、『なるほどな。ちょっと、うん。懐かしい景色だよな』っていう気がするんじゃないか?と思います。

で、そのロバータ・フラックの1週限りの1位という、まあある種の快挙ですよね。に、続きましたのが、キャリン・ホワイト(Karyn White)の『Superwoman』です。キャリン・ホワイトという人はですね、これはもう大変な美女でありまして。もともとはミスコンの常連だったっていうね。あと、R&Bファンの間ではジャム&ルイス(Jam&Lewis)のルイスさんの奥さまでもあったというのはこれ、本当有名なお話ですが。

この頃のキャリン・ホワイトはね、デビュー・アルバムをリリースした頃で。うん。まあ、西海岸のセッションでは大変有名になりつつありましたし。ジェフ・ローバー(Jeff Lorber)っていうキーボーディストに大変寵愛を受けてましてね。彼女の歌声っていうのはジェフ・ローバーのアルバムで聞くことができた。そんなプロセスを経て、自分自身のアルバムを世に放ったという。それで最初からドカン!ときたのがこの『Superwoman』なんですね。

で、そのキャリン・ホワイトは3週間に渡って1位で。この89年、結果としていちばんヒットしたR&Bヒットになったんですけども。そこに続きますのがニュー・エディション(New Edition)ですとかね、ヴァネッサ・ウィリアムス(Vanessa Williams)。ヴァネッサ・ウィリアムスなんていうのはね、本当にミスコン荒しどころか、ミス・アメリカに輝いた人ですからね。ちょっとこう、ロバータ・フラックのように、まあお世辞にも、なんて言うんだろう?容姿で売れたわけじゃないという人ですからね。その後にキャリン・ホワイトとかヴァネッサ・ウィリアムスみたいな、いわゆるキレイどころがどんどんセンセーションを巻き起こしていく様っていうのは、なんか時代の変革点だったんだなっていう気が改めていたします。

そんな89年のナンバーワンヒットの中から、まずは2曲聞いていただきましょう。11月4日、11日付け。2週連続ナンバーワンを記録したのは男性3人組。サーフィス(Surface)でございました。『You Are My Everything』。この年、大活躍したレジーナ・ベル(Regina Belle)っていう女性シンガー、いましたよね。レジーナ・ベル。『Baby Come to Me』っていう曲も1位をとったんですけども。



10月の終わりに1位になったレジーナ・ベルの次の1位は、そのレジーナ・ベルをフィーチャーした『You Are My Everything』でしたね。そして、もう1曲。もういまとなってはね、忘れかけられているグループですね。トゥデイ(Today)という人たちをご紹介しましょう。これ、ニュージャックスウィングムーブメントの中では、割と中心に近いところにいた、テディー・ライリー(Teddy Riley)とも近いところにいた人たちなんですけども。4月8日、1週限りのナンバーワンになりました『Girl I Got My Eyes On You』。もう、いまとなっては隠れ名曲と言ってもいいかもしれません。

では、2曲続けてお楽しみください。男性グループ2組。サーフィスで『You Are My Everything』。そしてトゥデイで『Girl I Got My Eyes On You』。
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Surface & Regina Belle『You Are My Everything』


Today『Girl I Got My Eyes On You』



1989年のナンバーワンヒットを集めてご紹介しております、いまでも聞きたいナンバーワン。サーフィス、トゥデイと男性ボーカルグループを2曲続けてご紹介しました。サーフィスの場合、まあボーカルグループのように見えて、実はバンドでもあったりするんですけども。デビッド・ピック・コンリー(David “Pic” Conley)という、なかなかの、音楽に造詣の深いメンバーが降りました。プロデューサーとして大変活躍した時期でもありますね。デビッド・ピック・コンリー。

で、バーナード・ジャクソン(Bernard Jackson)という大変耳あたりのよいボーカルを聞かせるリードシンガーがいて。で、もう1人のメンバーはね、マーヴィン・ゲイと大変つながりの深い父親を持つという。まあ、そういう意味じゃ、あれですね。割とスターになるべくしてなった、そんな3人組だったんですけどね。僕も当時、来日公演。渋谷のライブハウスでやったのを見にいって。結構長いインタビューをやったな。デビッド・ピック・コンリーっていうのは日本の女性とも付き合いがあってね。尺八とかも上手いんですよね。

で、実際に尺八なんかのソロをレコーディングやライブでも披露するというね、本当にもう多才な人でございましたね。サーフィスはなんとこの年、3曲のナンバーワンヒットを出してるんですね。これ、あんまり語られないですね。『Closer Than Friends』っていう曲。



そして、『Shower Me With Your Love』というバラード。



で、さっきお聞きいただきました『You Are My Everything』という曲。うーん、もう本当に、見事な活躍でございましたね。『2nd Wave』というアルバムが大ヒットいたしました。



まあ、80年代の後半をカラフルに演出してくれた、そんな人たちです。で、トゥデイはね、ニュージャックスウィングムーブメントの中では最もハーモニーに重きを置いていた、そんなボーカルグループという印象がございますね。音作りは、いわゆるテディー・ライリーが作り出したニュージャックスウィングの直系のサウンド。人脈的にもそういうところにあるんですけども。非常に丁寧なね、コーラスを聞かせるっていう意味で、僕はちょっとフォースMD’S(Force M.D.’S)とかに近い印象を当時持っておりました。

この89年、うーん。まあ以前からの大物バンド、大物グループっていう人たちもちゃんと結果を出しているんですね。大所帯バンドっていうのはいまでは本当に減りましたけど。この頃はまだギリギリ残っておりまして。スカイ(Skyy)っていうグループ『Start of a Romance』なんていうのが5月に2週連続ナンバーワンになっております。



そして続けてアトランティックスター(Atlantic Starr)『My First Love』っていう超名曲ですね。出したこともありました。



あとはバンドで言いますと、我らがメイズ feat.フランキー・ビヴァリー(Maze featuring Frankie Beverly)『Can’t Get Over You』。これは9月2週ヒット。



で、チャーリー・ウィルソン(Charlie Wilson)おじさんを擁したザ・ギャップ・バンド(The Gap Band)、『All of My Love』。これはあの、おじさんジャックスウィングでしたね。おじさんジャックスウィング(笑)。これ、ニュージャックスウィングを踏まえて作っていることは間違いないんだけども、貫禄があるっていうね。ガイ(Guy)が大人になったらこうなるんだろうなっていう感じのサウンドでしたね。



いやー、いま本当、89年のチャートをこうやって見ていると、88年以上に面白いかな?っていう気がしますね。けど、88年の重要さを知っているからこそ、この89年の面白さがわかるという意味において、ゴッドファーザーの1本目とパート2の関係に似てるかな?という気もしますね。はい。話がわかりにくくなっていますね。失礼しました(笑)。

で、あと、イギリスからのムーブメント、グラウンド・ビートもこの年っていう話をしましたね。ソウル・II・ソウルの『Keep on Movin’』。7月に1位になりまして。



そして、『Back to Life』。これがちょっと遅れて10月にナンバーワン。



いずれもイギリスではちょっと前。その前の年から人気のあった曲ですね。もっと前からか?の、曲なんですけども、アメリカにもようやく伝わったという。そしてこの波はやがてソウルの世界のゴッドファーザーでもありますジェイムズ・ブラウン(James Brown)のプロデュースへとつながっていくわけですね。ソウル・II・ソウルのリーダー、ジャジー・B大躍進の1年でもございました。

さて、そんな感じで駆け足でご紹介してまいりました89年のR&Bナンバーワンヒットなんですが、最後にご紹介しますのは、冒頭で触れました。この年、最大のヒットを記録しましたキャリン・ホワイトのスーパー名曲でございますね。ええ。まあ、この曲のヒットと完成度の高さで、作者であるベイビーフェイス(Babyface)の名声も決定づけられたというのが僕の見立てでございます。タイトルが『Superwoman』ってなっているんで、これはなんでもできる女性を賛美している歌か?っていうと、さにあらず。



そこがベイビーフェイスマジックですね。『私はスーパーウーマンじゃないわ。あなたが求めるような完璧な女にはなれないけれど、私は私の、懸命な時間を生きてるの。わかってよ』っていう、妻から夫への切なる叫び。それを男性のベイビーフェイスが詞を書き上げたっていうことで、それはもう、女性ファンは『わかっているわ!ベイビーフェイスは!』っていう気持ちになりますよね。ええ。キャリン・ホワイト『Superwoman』。

Karyn White『Superwoman』



かつて、『冷静と情熱のあいだ』っていう小説がございましたね。まあ、冷静と情熱っていうのはこう、対立する概念ではありませんで。静かな熱情っていうのもたしかにあるという風に思います。クワイエット・ストームという言葉がこの世界にはありまして。これはあの、スモーキー・ロビンソン(Smokey Robinson)の名曲のタイトルなんですけども。そこから派生して、まあ静かな熱を持った、そんな曲の総称になりました。クワイエット・ストームムーブメントっていうのは80年代の半ばから後半にかけて、大変盛り上がりまして。その中心人物だったのが、アニタ・ベイカー(Anita Baker)であり、ルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)であり、レジーナ・ベル。そんな人たちだったんですが。いま挙げた名前、いずれもこの年、ナンバーワンを記録しております。

で、この新人キャリン・ホワイトもその流れのひとつだったとも言えますね。クワイエット・ストームの名曲『Superwoman』でした。まあ、クワイエット・ストームっていうのはもういま本当、ロストヒストリーっていうか。ニュージャックスウィングとかの華やかさの影で、80年代の終わりにもまだそういうクワイエット・ストームムーブメントがあったことは忘れられそうになっているんですけども。まあ、10月の終わりから11月にかけてね、レジーナ・ベル、そしてレジーナ・ベルをフィーチャーしたサーフィス、そしてサーフィスがプロデュースを手がけたジャーメイン・ジャクソン(Jermaine Jackson)の『Don’t Take It Personal』。



こういった曲が1位のリレーを果たしたという、そういったこともぜひ、メロ夜リスナーのみなさんは記憶にとどめていただきたいなという風に思います。以上、いまでも聞きたいナンバーワン 89年編でした。

<書き起こしおわり>
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