菊地成孔『松尾潔のメロウな季節』の切なさを語る

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松尾潔さんがTBSラジオ『菊地成孔の粋な夜電波』に出演。松尾さんの著書『松尾潔のメロウな季節』から感じられる『切なさ』について、松尾さんと話し合っていました。


(菊地成孔)ですけどね。まあ、だから文章のね、本当にまあ、本の宣伝。とにかく1冊でも多く読まれたいという気持ちはありますね。この時代に。


(松尾潔)自分で言いづらいことを菊地さんに言っていただくっていうのは、本当に気持ちいいですね。

(菊地成孔)で、強調したいのは、『切なさ』ですよね。なにか、私、ちょっとあまりに論旨を強調するために少しバイアスがかかったかな?とも思うんですけども。全体にある時代の終わりっていうか。いろんな音産も含めて、R&Bっていうものの消費のされ方。まあ、たとえばある女の子がいて。普通のOLさんで。特別、なにかが秀でてるわけでも、なにかが劣っているわけでもなく、普通の女の子が生きていく上で何曲R&Bの曲が必要だろう?って考えた時に、15曲でいいんじゃないかな?っていう。

(松尾潔)それほどもいらないかもしれないですね。

(菊地成孔)いらないですよね。下手したら5曲で足りるわけ。だからそういう世にですね、こう、日々R&Bが量産されていくっていう世の中っていうのがどうなっていくんだろう?っていうことに対する、なにか、非常にスイートでメルテインメロウな感じなんだけれども、ひとつの喪の作業というか。のを感じましたよ。この本からは。だから・・・

(松尾潔)あのね、ひとつね、真面目に音楽ジャーナリズム的な話をすると、僕がこれを書いた時っていうか、書いているアーティストの書かれている情景っていうのはだいたい90年代半ば、後半かな?それぐらいが多いんですけど。

(菊地成孔)はい。いま、日本がいちばん戻りたいところですよね。

ミックステープ文化による転換期

(松尾潔)かもしれないですけど。それは、ミックステープ文化が正規のアルバムを食っちゃっていくぐらいの転換期なんですよ。ご存知のようにヒップホップのカルチャーとしてミックステープって始まったんだけど。それが歌ものとかもどんどんミックステープに入りだして。R&Bが入ってきて。で、R&Bのアーティストもミックステープを作るようになったわけですよ。

(菊地成孔)そうですね。

(松尾潔)R.ケリーのような大物が正規のアルバムと別に。で、正規のアルバムを出すっていうのは、それはもう、音楽産業の中で、まあ巨大なセールスを見込んで。1個1個、新しい会社を設立するぐらいのつもりでやっていたわけですよね。『Thriller』なんてその最たるものですけど。

(菊地成孔)上場企業ですよね。

(松尾潔)そういうことです。で、その時は当然、会社の立ち上げってことでいろんな人が動いたりするんだけど、ミックステープになったらずいぶん身軽になっちゃったでしょ?

(菊地成孔)そうですね。

(松尾潔)だから、潤う人の数も減ったんです。それで突出したリッチマンが出るんだけれども。

(菊地成孔)ああ、そうですね。はいはいはい。まあ、それはまさにヒップホップ、同じですよね。

(松尾潔)本当にそうです。で、僕のはまだひとつアルバムを出す時にいろんな人たちが、それぞれがみんなリッチを目指して集っていた、その終わりの始まりの頃なんで。だから当時、僕も気づいてなかったけれども、音楽産業の変化ってさっきちょっと大雑把な言い方をしましたけれども。ドラスティックに変わっていく、古き良きパッケージ文化の終わりの始まりを書いているから、どうしても切なくなっちゃう。エピソード・ゼロみたいなもんなんですよね。

(菊地成孔)そうですよね。だから、この・・・まあ、私はジャズミュージシャンですし、出も育ちもナスティーなんでなんでも、どうにでもなれと思っているんですけど(笑)。やっぱりこう、リュクスであることが一種のミッション化されているR&Bの世界っていうのが、今後その、たとえばアンダーグラウンドR&Bとかになってきちゃって。

(松尾潔)本当、そうですよね。

(菊地成孔)ですよね。どうなっていくのかな?っていうのを、まあ誰に聞くでもなく、とにかくたまに松尾さんに会って聞こうと思っているだけなんですけど(笑)。

(松尾潔)いや、たしかにそのR&Bの弟であるはずのヒップホップの美学が、お兄ちゃんをいま感化しちゃって。ファンタジーを描いていたR&Bに物足りなかった若い子たちが、リアルでアンダーグラウンドでハードコアなヒップホップをやろうとしてたのに、その美学をR&BがやんないとR&B生き残れないみたいになってきちゃって。

(菊地成孔)はいはいはい。

(松尾潔)デヴィ夫人でもユニクロを身につけちゃうみたいなね。うーん。ちょっといま、ごめんなさい。たとえ話、失敗しました?

(菊地成孔)(笑)

(松尾潔)まあけど、そういうことですよ。

(菊地成孔)はいはい。わかりますよ。でもね、ねじれは同じ・・・ねじれっちゅうのは総合的にねじれているわけで。オーバーグラウンドのヒップホップももう、リアルを捨ててますよね。

(松尾潔)たしかに。

(菊地成孔)要するに、ビヨンセのツアー見たら、クレイジー・ホースが元ネタで。まあ今日、ネタにしようと持ってきたものがいくらかあるんですが。とりあえず、1曲行きましょうか。ええと、たとえばですけど、こういったものを松尾さんは聞いておれますか?っていう感じなんですけど。Zo!。

(松尾潔)あ、聞いてますよ。あの、フォーリンエクスチェンジ一派ね。

(菊地成孔)そうです。そうです。ああ、やっぱり聞いてますね。

(松尾潔)自分のラジオではあまりかけませんけども、個人的に聞いております。

(菊地成孔)なるほど(笑)。『Manmade』というアルバムが出まして。五拍子の、なんて言うのかな?ハウスとは言わないけど。五拍子のこういった音楽は珍しいです。『Count To Five』という曲がクラブで話題になっております。Zo!の『Manmade』より『Count To Five』ですね。



(菊地成孔)はい。えー、とてもこんなかわいい曲を作るクリエイターには見えないZo!ですね。

(松尾潔)そうですね。そういうイメージじゃないですね。

(菊地成孔)えー、番組ホームページで確認してください。『Manmade』というアルバムから。


(松尾潔)まあ、変なたとえですけど、ヤン富田さんがちょっとたまにかわいいことをやっていたみたいな。そういう感覚ですね。

(菊地成孔)そうですね。ちょっとありますね。

<書き起こしおわり>
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