松尾潔・吉岡正晴 現代に最も影響を与えた90年代アーティストを語る

松尾潔・吉岡正晴 現代に最も影響を与えた90年代アーティストを語る WOWOWぷらすと

松尾潔さんと吉岡正晴さんがWOWOWぷらすと『90年代洋楽R&B考』に出演。西寺郷太さんと現代に最も影響を与えた90年代のR&Bアーティストは誰か?を語っていました。

(西寺郷太)いや、ちょっと最後の質問していいですか?僕も質問させてください。お二人にそれぞれ、聞きたいんですけど。まあ90年代がいまに残したものということで、これやっているんですが。吉岡さんにとっては、90年代最大の発明もしくは、ここに至るまで、90年代がいまに続いているなと思う、発火点というか。ひとつの。炎の。ものとか、あとは、もう1個言い方を変えると、誰がいちばん、いまに影響を与える・・・

(吉岡正晴)90年代?

(西寺郷太)うん。アーティストだったか?当時売れたとかの比べ方じゃなくて、なにかその、ひとつ巨大な・・・

(松尾潔)ちょっといい?郷太くん、司会者っぽくなってきたね。

(一同)(笑)

(西寺郷太)これ、最近、天明さんにも褒められるんですよ。

(天明晃太郎)(笑)

(松尾潔)ねえ。ちゃんとタイムキーピングしてたね。

(西寺郷太)いや・・・(笑)。今日は結構話がズレると、松尾さんが戻してくれてたんで。いや、ともかく、そっちの方が面白いかもしれない。誰がいちばん、いま。この2015年時点で大きな影響力を与えたか?それは当時売れたとか、そういうことに限らず。女性でも男性でも、トラックメイカー的な人でも、パフォーマーでもいいんですけど。

(吉岡正晴)僕はR.ケリー(R.Kelly)かな?90年代っていったら。で、現在にも至るっていう。

(西寺郷太)その、なんて言うかムーブメントを。それは、なぜですか?

R.ケリーが現代に与えた影響

(吉岡正晴)それはその、もうヒット曲の数。それから、僕はR.ケリーの好きなところは、R.ケリー、自伝が出たでしょ?

(松尾潔)『SOULACOASTER』。

(吉岡正晴)そう。デイヴィッド・リッツ(David Ritz)が一緒に書いたの。R.ケリーって僕、すごくマーヴィン・ゲイと近いものを感じるんですよ。それは、『性』と『聖』。それを両方歌うし。

(松尾潔)バランス取るようにリリースしていきますよね。

(吉岡正晴)そうそうそう。で、どっちもありで、しかも、キャッチーなわかりやすいメロディーで。

(西寺郷太)女の子もヒットさせて。

(松尾潔)まあね、論より証拠っていうか数字ってことで言うと、さっきから何度か出てくるね、このビルボードのR&Bチャートの90年代の1ディケイドのナンバーワンってR.ケリーなんですよ。

(吉岡正晴)あ、そうかそうか。そうだね。

(松尾潔)ちなみに2000年代に入ってのナンバーワンはジェイ・Z(Jay-Z)ですけど。で、R.ケリーとジェイ・Zがコラボアルバムを出しているって、象徴的な話ですよね。

(西寺郷太)結構、ツアー中にケンカしたんですよね。

(松尾潔)大変な話。それと別に90年代、ルーサー・ヴァンドロス(Luther Vandross)とアニタ・ベイカー(Anita Baker)のお姉さま同士のケンカっていうのもあったんですけどね。

(吉岡正晴)おネエ様同士なんだよ(笑)。

(西寺郷太)この前、話していた話ですかね。なんかラジオでも・・・

(松尾潔)話したっけ?

(西寺郷太)いやいや、まあまあまあ。それで、松尾さんの方は、どうですかね?

(松尾潔)僕もR.ケリーだね。

(西寺郷太)あ、そうですか。これだけ、ベイビーフェイス(Babyface)の話とかもめっちゃ出てたけど。

(松尾潔)R.ケリーです。90年代でしょ?

(西寺郷太)でも、いまにつながるっていうことで。

(松尾潔)R.ケリーです。

(西寺郷太)R.ケリー。

(松尾潔)R.ケリーが作ったスロウジャムの形っていうのは、いまなお有効なの。

(西寺郷太)なるほど。

(松尾潔)つまり、アップナンバーっていうのは割と時代を・・・

(西寺郷太)流行がある。なるほど。

(松尾潔)左右されちゃうんだけど。スロウジャムっていう形態。そしてスロウジャムっていうところにこそ、変わりゆく変わらない黒人文化っていうのを僕は感じているから。R.ケリーがやっぱり80・・・

(西寺郷太)いま、ゾッと来ましたよ。僕。

(松尾潔)82年以降、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の『Sexual Healing』の、やっぱりみんな呪縛から逃れきれなかったのに、逃げられなかったのに、彼が歴史を上書きしたんだよね。

(西寺郷太)なるほど。

(松尾潔)つまり、吉岡さんがおっしゃったことはたいへん象徴的で。マーヴィン・ゲイを思わせる。その通り。マーヴィン・ゲイを含んでいる。でも、マーヴィン・ゲイと似ていない何かがある。ヒップホップですよ。

(西寺郷太)はいはいはい。

(松尾潔)R.ケリーはヒップホップにあれだけ愛されている人だから。客演も多いし、本人もラップする時もあるし。つまり、伝統を含みながらも、そこにやっぱり新しいものを入れて、スロウジャムっていうね、既存の昔からあるスロウジャム。まあ、いろんな言い方、ありますけども。クワイエットストームとか、いろんな言い方あるけど。

(西寺郷太)アイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers)とかのね、影響が強いと言われてますけどね。

(松尾潔)アイズレーとも一緒にR.ケリー、やってるしね。だからその、先達にも受けがいいし。14、5才のね、アリーヤ(Aaliyah)にも大人っぽい、しかも、アイズレーを歌わせるんだよ。これ、象徴的な話。

(西寺郷太)『At Your Best (You Are Love)』。あれ、もう最高ですよね。

(松尾潔)これ、もうソウル・ミュージックと、まあ久保田利伸さん風に言うと、クラシックソウルとトゥデイズR&Bの架け橋。R.ケリー。

(西寺郷太)女性の曲では『At Your Best』のカバーがいちばん好きかもしれない。

(松尾潔)スティル・ゴーズ・オンですよ。

テディ・ライリーの功績

(西寺郷太)本当に、R.ケリーの初期のね。なるほど。いろんなアーティスト、いるけれどもということですね。その一方、じゃあその、テディ・ライリー(Teddy Riley)っていう人は、やっぱり80年代後半から90年代初期。まあ、ニュージャックスウィングの・・・

(松尾潔)95年ぐらいまでの・・・だから85年から95年までってことで区切れば、まあテディ・ライリーの功績も大きいっていう話になるけど。

(西寺郷太)あと、やっぱりアップテンポな、ダンサブルな曲で世に覚えられていることが多いですよね。

(吉岡正晴)ただ、やっぱりニュージャックスウィングって・・・

(松尾潔)登場は87年なんだよね。あれ。

(吉岡正晴)そう。87年の暮れぐらい。要は、ブラックミュージックの歴史、1955年から2015年までを見たら、R&Bの世界ってすごく流行がサイクル早く、移り変わるんですよね。で、ニュージャックスウィングもその87年の暮れから92年くらいまでの4、5年の間の大ブームのひとつなの。だから、そういう意味でいくと、やっぱりこう、流行のひとつなの。

(西寺郷太)ちょっと僕、もう2つ、すごく、せっかくこの2人が揃ったので・・・

(松尾潔)R.ケリー、長いんだよな。

(吉岡正晴)R.ケリーは長い。その、パブリック・アナウンスメント(Public Announcement)時代から。その時は別に、こんなにでっかくなるとはぜんぜん思わなかった。

(西寺郷太)お笑いで言うと、有吉さんみたいな感じですか?途中からものすげー、のしてきたみたいな。

(吉岡正晴)あれ、だって最初、JIVEだからね。JIVEで普通にただのR&Bグループが出てきたっていう感じで。

(西寺郷太)いや、なんかね、僕ね、テディ・ライリーは・・・

(松尾潔)まあ、細かく書いてますけどね。R.ケリーの地味なデビューに関してはね。

(西寺郷太)そこも読ませてもらいますけど。テディ・ライリーに関して言うと、ここにも松尾さん、書かれてましたけど。『いまとなっては、「Dangerous」のプロデューサーって言われることが多いんじゃないか?』っておしゃってたんですよ。

(吉岡正晴)ああ、なるほど。

(西寺郷太)まあ、たしかにその、JAM以降の、いわゆるデンジャラスに入っている・・・まあ僕、あの時点で『いま、テディ・ライリーにたのむのかよ?遅えな!』って僕でも思ったんで。『マイケルがテディ・ライリーとやってる』っていうのは、えっ?って思って。まあ実際、あれをある意味歴史に残る作品にしたマイケルってすごいなと思うんですけど。なんかね、ひとつ聞きたいっていうか、どう思うか?っていうので。実はあのアルバムの『Remember The Time』って、バーナード・ベル(Bernard Bell)が7割ぐらいがんばった曲なんじゃないかな?って思うんですよ。

(松尾潔)テディ・ライリーと共作者でバーナード・ベルっていう人がいて。この人の名前が一緒にクレジットされている曲はだいたいメロウなんですよ。

(西寺郷太)めっちゃ名曲が多いのは、ボビー・ブラウン(Bobby Brown)も・・・

(松尾潔)テディ・ライリーが1人で書いているものっていうのは、あんまりそういうメロウな曲がないから。まあだから、いまで言うとこの、まあトップライナーなんですよね。トラックをテディ主導でやってるんだろうけど、歌メロとか、あとやっぱりコードのつけ方も、バーナード・ベル。ハイファイブ(Hi-Five)の『I Like the Way』とかもね、通じるところ、ありますよね。『Remember The Time』とね。

(西寺郷太)いや、なんか、あの時のエピソードで・・・

(松尾潔)こんなマニアックな話、していいの?

(西寺郷太)いや、最後なんで。

(松尾潔)バーナード・ベル。レジーナ・ベル(Regina Belle)の弟。

(西寺郷太)テディ・ライリー、テディ・ライリーって言うと、あっち側のことで。結局、『Remember The Time』の話とかになってくるところもあるけど、バーナード・ベル・・・じゃあ、それはじゃあ松尾さんも、それは思って。バーナード・ベルの・・・

(吉岡正晴)影響下。

(松尾潔)あ、僕もそう思うよ。

(西寺郷太)だからテディはもちろん、もっとリズムの人であり、もちろん素晴らしいと思うんだけど、あのメロウな要素。まさに。は、バーナードが注入したのかな?って。

(松尾潔)そうだね。でも、バーナード・ベルの単独だと、あれもできなかったことも事実だし。

(西寺郷太)それは、ロッド・テンパートン(”Rod” Temperton)も同じ気がしますけどね。ロッド・テンパートン単独じゃなくて、やっぱりクインシーとかマイケルとか。ニュー・エディション、ロッド・テンパートンがやったのとかも、ちょっと甘すぎるというか。

(吉岡正晴)そうね。ロッド・テンパートンはやっぱり・・・

(西寺郷太)『Rock With You』とかを書いた人。『Thriller』も書いた・・・

(吉岡正晴)だからそこはやっぱり、プロデューサーよね。クインシーがロッド・テンパートンの・・・

(松尾潔)クインシーとかね、アリフとかはやっぱりこう、最後に金粉を振りかける人だから。

(西寺郷太)そう。スパイスをね。金粉くんね。

(吉岡正晴)引っ張り上げるんだよね。だから、もちろん才能これぐらいで、クインシーがやると、この才能がこれぐらいに上がったりするの。だからそれがたぶん、いろんなところであるんだよね。アリフ・マーディン(Arif Mardin)がやれば、引っ張りあげられる。

<書き起こしおわり>


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