ジェーン・スーが語る 男性特有の生き方と働き方問題

ジェーン・スーが語る 男性特有の生き方と働き方問題 ジェーン・スー 相談は踊る

ジェーン・スーさんがTBSラジオ『相談は踊る』で男性リスナーからの相談『楽しい仕事がわからない』に対して回答。男性特有の生き方、働き方の問題について話していました。

(石井大裕)それではさっそく、今夜最初の相談です。男性からの相談です。(リスナーの相談メールを読む)『スーさん、こんばんは。はじめてメールさせてもらいます。僕の悩み相談は楽しい仕事は本当にあるのか?あるならば、どうやって自分の仕事にするのか?という、春っぽい、ガチめ、かつ抽象的な悩みです。先日、ある雑誌のトークショーに行った時に、スタイリストの方が当日の撮影のことを振り返って、「仕事人生って本当に楽しかった。こんなに楽しいことはあるのかと思った」と語っていて、やっぱりこんなに楽しい感情がすごく素敵な雑誌を作るんだなと感動しました。しかし、就職する際に、好きなことは趣味。仕事は辛いけど、生きるためのツールと決めてしまった就職氷河期世代の僕には、楽しい仕事をしていない自分を改めて突きつけられました。本の仕事に携わりたくて、大学生の時にバイトしていた編集プロダクションではすごく楽しかったけれど、このまま続けていても正社員にはなれないと知ってしまい、地元に帰り、堅めの仕事に就きました』。

(ジェーン・スー)うん、なるほどね。

(石井大裕)『しかし、仕事を楽しいと思えたことはなく、これはシルクロードを一歩一歩踏みしめるようなもので、いつか辿り着く定年退職という天竺までは辛い道なのだと考えてしまいます。いまの仕事をもっと好きになって、この道を全力で走るか、思いきって砂丘を超えて、蜃気楼のような向こうの世界に飛び込んで、新しい世界を探して砂まみれになるか。スーさん、楽しい仕事とは、なんですか?僕はそれを知らないのです。本当に迷っています。どうか、アドバイスをください』というお悩みでした。

(ジェーン・スー)あの、楽しい仕事に就いていない。なぜなら、仕事は生きるためのツールだから。好きなことは趣味にしないと、結局安定もしないし不幸になるというような考え方でいま、真面目に仕事をしてるんだけど、まあ仕事楽しくないし、楽しそうに仕事している人もいるし。どうしたもんかな?と。楽しい仕事はなんですか?っていうことなんですけども。いまの仕事、楽しいですか?

(石井大裕)私はもう、天職でございます。

(ジェーン・スー)天職?本当かよー?

(石井大裕)これを極めて私は天竺まで行きたいと思っております。

(ジェーン・スー)天竺まで(笑)。でもさ、これあの、『一歩一歩シルクロードを踏みしめて、定年という天竺まで』って言うけど、定年退職が天竺である可能性なんて100%とは言えないよね。

(石井大裕)そうですか?

(ジェーン・スー)勤めあげたことに対しての喜びっていうのがある人とない人といて当然じゃないですか。

(石井大裕)そうか。そうですね。まあ、だから職人気質な仕事。たとえばアナウンサー。実況アナウンサーなんてこれ、まさに職人ですけども。こういう仕事っていうのはとにかく日々の積み重ねで。もう、やってやってとことんやって、もういちばん、50才、60手前で脂が乗ってくるっていうことですよね。知識もね、経験も含めて。だからやっぱりそういう職人気質の仕事っていうのはそういう風にやらなきゃいけないけど。他のものっていうのはどうですかね?

(ジェーン・スー)あの、『男性学』っていう勉強があるのはご存じですか?

(石井大裕)いや、全く知りませんでした。

(ジェーン・スー)女性学があるように男性学っていうのがあって。もう1個、私、ラジオ番組やってて。そっちで、昨日その話をしていたんですけど。あの、社会学の先生で田中俊之先生っていうのがいて。昨日ぐらいにその本を出したんですよ。『男性学』っていう。


(石井大裕)男性学?

(ジェーン・スー)男性学ってどういうことか?っていうと、男性であるからこそ抱えてしまう問題。女性であるからこそ抱えてしまう問題っていうのがあるじゃないですか。たとえば女性だったら、妊娠・出産をした後に仕事を続けるべきか?そうじゃないか?っていうことが、女性だからこそ悩んでしまうこと。それが正しいか正しくないかじゃなくて、社会の環境として、それが問題になってくるっていうのがあるじゃないですか。で、男性は男性で、男性だからこそ抱えてしまう問題っていうのがあるっていうので。

(石井大裕)ああ、そうね。

(ジェーン・スー)やっぱりその、なんの話をしてるか?って言うと、その田中先生が、働き終わった定年退職の人たちにインタビューをした時に、『結局、私の人生、こんなもんでしたか』っていう、『残念でした』っていう声が結構多かったんだって。

(石井大裕)そうか。ええ。

(ジェーン・スー)で、その理由っていうのが、結局子どもの頃には大きな夢を持つことを期待されて。で、大人になるとでも、安定。親が期待するは安定。周囲が期待するのも安定。できるだけ安定して長く勤めるっていうね。でも子どもの頃、男の子ってやっぱり大きい夢を持つことを期待されるんですって。女の人よりも。たとえばね、なんかアンケートで出てたらしいんですけど、女性だと、小さい頃、『何になりたいですか?大人になったら』って、お花屋さんとか、看護師さんとか。そういう、人を助ける仕事だったり、比較的、自分のいまの生活の目の周りに入る仕事っていうのを挙げる人が多い。

(石井大裕)うん。

(ジェーン・スー)で、親も結構、『どういう風に、小学校1年生の子どもに将来なってほしいですか?』っていうと、まあ、なんとなく似てるんだって。

(石井大裕)ほう。うん、うん。

(ジェーン・スー)だけど、男の子の場合は、なんとなくやっぱりその、見ているテレビ、世の中で活躍している人、みんなこう、頂点の勝者になるみたいな。それこそが成功だ!っていうのを見させられているから。人によりますよ。もちろん、個人差はあるんですけど、パイロットとかさ、医者とかさ。それこそ、テニスプレーヤー。そういう風に思う。だけど、実際に親が期待するのって、公務員なんだって。一位。

(石井大裕)安定とね、信頼の公務員。

(ジェーン・スー)そのへんのさ、この方もそうだと思うんですよ。仕事っていうのは安定して長くちゃんと勤めて、定年退職まで行かないと良くないものだ。好きなことなんかやってそれで稼いでいたらバチが当たるみたいなさ。仕事っていうのは辛いものだっていう前提があるんだと思うんですけど。

(石井大裕)なるほど、なるほど。

(ジェーン・スー)そんなことはないと思うよ。

(石井大裕)ちょっといいですか、スーさん。

(ジェーン・スー)はい。

(石井大裕)めっちゃいいこと、言いますね。

(ジェーン・スー)なにを言ってんの、あんた?開始25分でなにを言ってんの?

(石井大裕)ちょっと、かなり感銘を受けましたけど。

(ジェーン・スー)まあ、田中先生の本を読んでよ。売ってるから。Amazonで売ってるから。もっと詳しく書いてあるから。

(石井大裕)あ、いまの、受け売り系?

(ジェーン・スー)そう。受け売り。受け売り。

(石井大裕)あ、なんだなんだ。

(ジェーン・スー)なんですけど、なんだろう?やっぱり、その、新しい・・・ここね、気になるのが、『いまの仕事をもっと好きになってこの道を全力で走るか、思いきって砂丘を越えて蜃気楼のような向こうの世界に飛び込んで、新しい世界を探して砂まみれになるか』。なんか、『真面目にやっている限り安定はするけど、絶対につまらない』とか・・・

(石井大裕)いや、でもこの文章は確実に上手いですよね。

(ジェーン・スー)ねえ。文章、まあ文を書くのが好きなんだなっていう感じはするし。で、『新しい世界をやったら、かならず苦労する』みたいなことだと思うんですけど。これね、相談者さん、男性だからこれ、抱えてしまう問題のうちのひとつだと思うよってことにまず気づいてほしい。私、すごい好き勝手生きてきて、やりたいことしかやって来てないんですよ。本当に。

(石井大裕)なるほど。

(ジェーン・スー)だけど、これたぶん女で独身だからだと思う。だって、35才まで働いてさ、会社でウワーッ!って働いて、『もう辞めた。もうここの会社にいても、出世もできないし、つまんなくなった。あたし、インドに行きます。ヨガの先生になりまーす』って言っても、『バイタリティーあるねー、君は!』って言われるけど、男だったら、『あっ、あいつ、ドロップアウトだな』とか。

(石井大裕)いや、結構あの、『自分探しの旅に行きます』っていう人ね。結構多いですよね。

(ジェーン・スー)うんうん、そうそうそう。自分探しをいつするか?とか、どうやるか?っていうのは問題、いろいろあると思うんですけど。やっぱり男性だと働き続けなくちゃいけないっていうプレッシャーが、自分で自分にそのプレッシャーをかけているところもこの人、あると思うんですよ。

(石井大裕)うんうんうん。

(ジェーン・スー)あのね、好きなことを・・・『楽しい仕事っていうのは、別にいまやっている仕事から楽しさを見つけてやってみることもできると思います』みたいなことも、もちろん模範解答としてあると思いますけど。

(石井大裕)ありますね。ええ。

(ジェーン・スー)うーん・・・まあ、いまこの人がね、いくつなのかっていうのはちょっとわからないんですが。やってみるのも手だと思いますよ。楽しいと自分が思う仕事を。

(石井大裕)そうですよね。まあ、大学生の時は実際に、この編集プロダクションですごい楽しいっていう経験があるから。

(ジェーン・スー)ただ、まあこのまま続けていっても正社員になれないって、これも現実なわけで。だから、好きな仕事をやっていることで、多少収入が不安定になるっていうリスクはあるんですけど。これがさ、いま、このご時世だと、好きじゃない仕事をやっていても、じゃあ一生安定で昔みたいに定年までクビにならないか?っていうと、そんなことがないわけですよ。

(石井大裕)たしかにね。いや、僕自信もそういう恐怖、ありますから。

(ジェーン・スー)っていうかさ、テニスを辞めた時、ガーン!ってなんなかった?

(石井大裕)なりましたよ!もう、その後は。だって私、ずっと入院してたんですから。

(ジェーン・スー)そっかそっか。ケガなんだもんね。

(石井大裕)ケガもありましたし、病気にもなりましたし。テニスを辞めた理由っていうのが、実はもう最後、不眠症になりまして。大体ですね、3ヶ月から4ヶ月、ほとんど眠れない状態っていうのになって。まあ、熱がずっと微熱が。37.5度ぐらい。だからテンション的にも下がる。その中で、最後、もう人とも視線を合わせてしゃべることができなくなって。で、無理やり家族に連れ帰られて、日本で入院してたんです。ずっと。

(ジェーン・スー)うん、うん。

(石井大裕)で、もうその時は『終わったな』と。だって、6才から追いかけてきた夢ですから。

(ジェーン・スー)そうだよね。

(石井大裕)で、その時は21手前ぐらいです。

(ジェーン・スー)しかも、そこそこいい線いってたんだもんね。

(石井大裕)そう。自分で言うのもなんですけど。才能自体はないんですけど、がんばろう!っていう意思はありましたから。まあ、そういう中でも、夢がなくなった瞬間っていうのはまあ、『終わったな』と思ったんですけど、でも誰かにね、家族だったりとか、助けてもらったっていうのが僕にとってはいちばん大きかったですね。

(ジェーン・スー)まあ、もちろんね。でも、好きな仕事、これしかないと思ったものがダメになった人でもいま、これだけ元気ですから。

(石井大裕)いやー、もう、『できるーっ♪できるーっ♪』と思ってますから。私。

(ジェーン・スー)まあ、多少の空元気だと思いますけど。

(石井大裕)いや、空元気じゃない!スーさん、まだわかってないな!私、ここに来る前、2時間ウェイトトレーニングしてきてますかね。

(ジェーン・スー)(笑)

(石井大裕)名古屋出張からのウェイトトレーニング2時間。

(ジェーン・スー)それが空元気だよ!

(石井大裕)で、プロテインをね、家で水入れて飲もうとしたんですよ。で、水を入れたら、手が震えちゃってるから。トレーニングで。バーン!って落としちゃって。粉と・・・

(ジェーン・スー)おめーの話はいいんだよ!相談、戻るぞ!そいで、なにが言いたいか?って言うと・・・(曲のイントロが流れ始める)。あ、話、終わっちゃったよ・・・相談者さん!

(石井大裕)だからプロテインをこぼして・・・

(ジェーン・スー)違うの!そうじゃなくて、好きな仕事、やってみるのも手だと思います。でも、その前に・・・

(石井大裕)まずはウェイトトレーニングだ!

(ジェーン・スー)なんでそんなことを仕事について考えちゃうのか?をまず考える方が先だと思うよ。

<書き起こしおわり>

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