金田淳子が宇多丸に語る『島耕作』流ビジネス処世術

金田淳子が宇多丸に語る『島耕作』流ビジネス処世術 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

ボーイズラブ研究家の金田淳子さんがTBSラジオ『タマフル』で、弘兼憲史先生の漫画『島耕作』シリーズを紹介。ビジネスパーソンが学ぶべき島耕作流処世術を解説していました。

(宇多丸)『人間交差点』と言えば漫画家弘兼憲史さんの代表作。そして、弘兼先生のもう一つの代表作と言えば、もちろん『島耕作』。出世街道を爆進し、課長から会長まで登りつめたビジネスパーソンの中のビジネスパーソン、島耕作の処世術を学び、ゴールデンウイークでたるみきったその性根を叩きなおしてはいかがでしょうか?そんな意識の高い特集をお送りしてくれるのは、今年3月、富山県特集以来の登場となる、ボーイズラブ研究家、金淳こと、金田淳子さんです。よろしくお願いします。

(金田淳子)はい。よろしくお願いします。男と男の人間交差点を鋭く見つめていくアナリスト、金田淳子です。

(宇多丸)アナリスト。いいですね。たしかにアナリスト。分析家ということですね。

(金田淳子)今日もよろしくお願いします。

(宇多丸)よろしくお願いします。まあ、なにしろ富山県特集のアナリストぶりもね。

(金田淳子)まあね、富山県についてはちょっと私も一家言ありますからね。

(宇多丸)ええ。ちょっとやっていただきましたけども。役に立たなさ加減が本当に半端ない・・・

(金田淳子)いや、まあ橋Pとのコラボレーションによって、東京が富山であることも証明されたってことですよね。

(宇多丸)まあ、あの特集はね、言っちゃえば橋Pと金淳さんの暴走に僕が一言で言えば閉口するという。そこがポイントの特集なので。だから今日はでも、結構ためになると思うんですよね。

(金田淳子)今日はかなりためになると思いますよ。

(宇多丸)あの、結構研究成果の発表というところもありますからね。金淳さんね。えー、ちなみに金田さんと島耕作、どのようなご関係で?

(金田淳子)まあね、島と中年女といえば、普通は肉体関係なんですけど。

(宇多丸)まあ、すぐヤリますからね。

(金田淳子)ねえ。残念ながら、私は肉体関係はなくて。

(宇多丸)まあ、二次元ですからね。

(金田淳子)そうですね。まあ、昨年11月に河出書房新社さんから弘兼先生の40周年記念号ということで、『総特集 弘兼憲史』っていうのが出されまして。まあ、いまも大好評発売中なんですが。こちらにちょっと原稿をね、島耕作を全部読んで、それに出てくる男たちの関係とはどのように描かれているか?みたいなことをちょっと論考を寄せさせていただいたんですね。

(宇多丸)これはもう、オフィシャル仕事ですよね。

(金田淳子)まあ、言うなればそうなわけですよ。

(宇多丸)ちょっ、あの、ちょっと目線のイルな感じがね、伝わるかな?という。

(金田淳子)(笑)

(宇多丸)僕、あの、島耕作特集をやるって時に、『えっ?金淳さんで大丈夫なの?』みたいに思ったけど。まあ、オフィシャル仕事やってるしなって、これ、だいぶ免罪符になりました。正直。

(金田淳子)(笑)。まあね、たしかにね。私も起用されていいのかどうか?っていうのは、私自身の中でもありました。しかし、まあ私、現在レギュラー出演中の、一応インターネットで見れる番組。『真夜中のニャーゴ』の金曜日のパーソナリティーなんですけど。それで2時間熱く、まあ島耕作を語るっていうのを、全体で6回しかやってないのに、すでに2回やってしまいました。こっそりと。

(宇多丸)(笑)。3分の1じゃないですか!

(金田淳子)そう。すでにだから、その番組の成分は3分の1は島であると言っても過言ではない。

(宇多丸)あの、前から本当にお好きだったってことなんですね?じゃあね。

(金田淳子)そうですね。たびたび読んでいて、ちょっとヤバい漫画。いい意味とかいう感じで知ってはいたんですけど。先ほど言った、総特集 弘兼憲史のために1から読みなおして、全部読んでいるうちに、やっぱり愛着がすごい湧いたわけですよね。で、様々な、思っていたのと違う・・・もっとサラリーマンっぽい話かな?って私の中で誤解していたところがあったんですけど。違う。もっと、どっちかって言うと、奇妙な冒険っていうか。アドベンチャー?みたいな。

(宇多丸)ああー。まあその、あらかじめの固定観念、イメージとは違う部分も、改めて発見したりなんかして。

(金田淳子)そうですね。それが面白かったですね。

(宇多丸)あるいはだってそのね、金淳さんのフィールドから言えばですよ、要は島耕作という男はやたらとこう、いろんな女性とね、やっちゃあ、入れ替わり立ち代りなわけじゃないですか。そういったあたりとか、どうお感じになるのかな?なんてのはね、気になるあたりだったんですけどね。まあ、そこも含めて今日は伺えるんですかね?

(金田淳子)はい。まあちょっと、今日はね、真実を語っていっちゃいますよ。

(宇多丸)真実?(笑)。いつも真実をお願いしますよ!『今日は』ってね。

(金田淳子)いやいや、いつもですよ。

(宇多丸)いつもですよ。まあ、ということで、人間交差点。我々が明日やるイベント。まあ、弘兼先生公認のタイトルでございますので。今夜はほぼ、オフィシャルの島耕作特集ということで。

(金田淳子)ああー、そう、なのかな?(笑)。

(宇多丸)わかりませんけどね。あの、この特集をやったことで、弘兼先生が激怒されて、公認の名前、使うな!ってことになると本当、私、ビジネスパーソン的にも問題が、ダメージが大きいので。そのあたりちょっとね・・・

(金田淳子)気をつけなくちゃいけない。しかし私は、実際島耕作に描かれていることしか言いません。

島耕作のビジネス処世術 3つの『あ』

(宇多丸)まあ、たしかに。嘘を言うわけではないということでございます。ということで、金淳さんですね、今夜は漫画 島耕作から見えてくるビジネススキル。処世術をですね、ビジネスマナーっぽくですね。本、ありますよね。ハウトゥー本みたいなの。そういう感じで、『3つの「あ」』というキーワードにまとめてもらったと。まあ、この時点でもうすでに嫌な匂いというかね。

(金田淳子)いやいやいや。いやいやいや。

(宇多丸)『あ』っていう。もう、ひとつしか思い浮かばない・・・逆に、3つもあったのかよ?っていう。

(金田淳子)あれ?いろいろあるじゃないですか。『あ』と言えばね。

(宇多丸)まあでも、金淳さんと『あ』っていうと、もうひとつしか思いつかない・・・

(金田淳子)まあまあまあ。まあまあまあ。

(宇多丸)ということで、まあ不安はあるんだけど。本編に入る前に、まず本当に島耕作ね。読まれてない方もいらっしゃるかもしれないので。ビギナーのために、漫画 島耕作とはどんな漫画なのか、簡単に解説をお願いします。

(金田淳子)そうですね。こちら、日本一有名なサラリーマンにいまとなってはなってしまいましたけど。この主人公、島耕作。1947年生まれ。もう、団塊ど真ん中ですね。この島耕作を中心に据えまして、初芝という架空の家電大手企業を舞台としまして、まあ独特のファンタジックな作風。そして、時々リアルな感じで、まあサラリーマン模様を描いていく。そういった漫画ですね。

(宇多丸)男性サラリーマンの、『こんなこといいな、できたらいいな』を叶える?

(金田淳子)そう。それですね。『あんな穴、こんな穴♪』ですね。

(宇多丸)言っちゃってるじゃないですか、もう。

(金田淳子)いやいやいや、言ってない(笑)。そして、まあ売上的にはもう累計4千万部になっておりますね。大ヒットですね。しかも、それが面白いのはこう、ずっと続いているということで。しかも、作品内の時間の流れと現実の時間の流れが同じなんですね。だから、いま島耕作で描かれているのが2015年ぴったりということになります。

(宇多丸)ああー、そっか。

(金田淳子)で、始まったのが、連載開始が83年で。はじめの1冊は、やっぱり試験的なところがあって。1年ぐらいかけて描かれていたんですけど。その時、まあ課長島耕作で始まって。昇進していく。部長島耕作、取締役島耕作、常務島耕作、専務島耕作、社長島耕作。現在では、会長島耕作。

(宇多丸)会長ですよ!でも本当に、ビジネスパーソンとしては理想的なキャリアを。

(金田淳子)そうですね。もうトントン拍子に上がっていきました。

(宇多丸)会長ってないでしょ?普通。

(金田淳子)ですね。まず、会長のある会社自体がそんなにないんじゃないかな?っていうね。

(宇多丸)だいたい同族で譲っちゃったりするんじゃないの?だって、そんなの。って感じがしますけど。素晴らしい。まあ、リアルタイムに、83年から2015まで、島さんのその歩みがずっとリアルタイムに来ている。

(金田淳子)そうですね。ここがリアルタイムで。実はやっぱり人気があるから、『若い頃の島のことも見たいな』という要望に応えてなのか、モーニングの姉妹誌であるイブニングで、2001年からヤング島耕作、係長島耕作。そしてさらに、ここまで描いちゃったから、早稲田に入った頃の島耕作ことを見たいなっていう感じになって、学生島耕作とかも。

(宇多丸)が、学生!?学生ってすごいですよね!学生島耕作。

(金田淳子)早稲田の学生だった時の島の話をいま・・・

(宇多丸)『ヤング』と『学生』はもう、役職じゃないですからね。

(金田淳子)まあ、このままいくと、やっぱりどんどんさかのぼって。中学生島耕作。

(宇多丸)幼児島耕作。

(金田淳子)胎児島耕作。

(宇多丸)胎児(笑)。胎児は、まあそうですね。この可能性、お父さん、お母さんのね・・・あるかもしれないですけど。

(金田淳子)って行くんじゃないかな?っていう予測もよくされていることですね。

(宇多丸)なるほどなるほど。その男のね、そういう男性サラリーマンのあんなこといいな、こんなこと・・・夢を叶える、まあある種、スーパーサラリーマンなんだけど。ジェームズ・ボンドと違って、ちゃんと齢をとって、あれになっていくっていうところがちょっと変わってますね。やっぱりね。

(金田淳子)そうなんですよね。そして、現実で起きた政治変動とか不況とか地震とかの災害ですね。そういうのも実際、作品の中で起こって。まあ島がその時、どう感じたか?っていうのとかも語られているんで。他には、あんまりそういう手法の漫画がないかな?とは思うんです。

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