みうらじゅんが語る 仏像ブームとアウトドア般若心経

みうらじゅんが語る 仏像ブームとアウトドア般若心経 安住紳一郎の日曜天国

みうらじゅんさんがTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』に2013年5月に出演した際の書き起こし。過去3回到来している仏像ブームと、アウトドア般若心経という修行について話していました。

(安住紳一郎)そしてその後、2009年に紹介していただいたのは、セクシー仏像。

(みうらじゅん)あ、仏像。

(安住紳一郎)これは本当にお世辞ではなくて、仏像ブームのいちばん最初の切り口をスパッと斬ったのはみうらさんじゃないなかと思いますね。

(みうらじゅん)僕、小学校の時から仏像ブーム到来したんで。小学校4年の時に突然仏像ブームが来た!と思って。よく、仏像ブームって言ってたんですけど。仏像ブームっていう言葉はないわけじゃないですか。あの、白鳳時代に白鳳の人が『仏像ブームだよ!』とか、言ってないでしょ?新しい言葉なんですよね。仏像ブームっていうのは。第一期が白鳳、平安、鎌倉ぐらいまでかな?第一期としては。第二期に来たのが、僕の小学校の頃。僕の中だけで来た。

(安住紳一郎)(笑)

(みうらじゅん)で、第三期が数年前に阿修羅展で。たくさん人が来てっていうことだったので。はい。ついに来ました。

(安住紳一郎)じゃあ日本には3回あって。

(みうらじゅん)3回あった。僕の中では3回。

(安住紳一郎)僕の中では3回(笑)。第2回は、たいへん静かなものでしたね。

(みうらじゅん)静かでしたね。弘法大師のモノマネとか、小学校でしてたんですけども。

(安住・中澤)(笑)

弘法大師のモノマネをする小学生

(みうらじゅん)独鈷っていう密教法具、僕、ほしくて。よく、ちょっとした古美術商とかお祭りの時に、よく売ってるんですよ。古道具で。

(安住紳一郎)独鈷ってなんですか?

(みうらじゅん)独鈷ってあの、3つにわかれたスプーンみたいなやつが両端についてて。ほら、弘法大師がこうやって、手にお持ちになっているやつで。密教法具なんですよ。

(安住紳一郎)はー。

(みうらじゅん)で、これを正月に買ったのかな?お年玉で。

(安住紳一郎)売ってるんですか?

(みうらじゅん)売ってるんですよ。売ってて。多分、この頃でも1000円ぐらいのものだったんですけども。買って、小学校持って行って、『弘法大師!』って言って真似していたんだけども、まあ当然友達はすごく、いなくなるというか。

(安住紳一郎)シーンとしますよね。

(みうらじゅん)ええ。『ちょっと三浦くんと距離をとろう』っていうことにはなりますよね。ええ。

(安住紳一郎)弘法大師のモノマネをしてたんですか?

(みうらじゅん)してました。これは、ウルトラマンに変身する時の、ハヤタ隊員がビーム持っているじゃないですか。あれみたいなものだと、僕は解釈していたので。

(安住紳一郎)テクマクマヤコンコンパスみたいな?

(みうらじゅん)そうですね。変身グッズの1個だと僕は思っていたので、これは持っていなきゃならないと思って。

(安住紳一郎)で、弘法大師に変身して、なにか説教するわけですか?

(みうらじゅん)弘法大師に変身すると、多分、自分が金色に輝くんだと思うんですよ。悟りを開いた時って、お釈迦さんもそうですけど、表現として金色に輝かれるんですよ。・・・輝いてなかったらしくて、そこらへんはちょっと変身が難しかったんですけども。

(安住紳一郎)で、固まってるんですか?

(みうらじゅん)固まって。結構ね、弘法大師が持っているここの、画もありますけどね。ここをこうやって、不思議な持ち方をしてるんですよ。

(中澤有美子)胸元に。

(安住紳一郎)胸元で、手のひらを向こう側に見せるみたいな。

(みうらじゅん)これ多分、もともと古代インドの武器というか、そういうものから変化して。後に煩悩を断ち切るものっていうことになって。法具は。

(安住紳一郎)へー?小学生の時に弘法大師のモノマネって・・・

(みうらじゅん)僕、将来なりたい人って『弘法大師』って書いてましたから。

(安住紳一郎)はー!それは、その仏教のいろいろな思想を知る前に、もうキャラクターとして?

(みうらじゅん)キャラですよね。僕、もうキャラがやっぱり好きなんですよね。仏像もキャラから入りましたんで。キャラ立ちしているのが大好きになって。後に、やっぱりそういう仏像のキャラだけを見ていたら、やっぱりそういうお寺行った時に、どんどん知っていくじゃないですか。後に、いろいろ仏教のこともわかって。アウトドア般若心経っていう活動をしてたんです。

(安住紳一郎)(笑)

(みうらじゅん)あの、外の看板で般若心経の文字を撮っていくっていうのがわかってきました。

(安住紳一郎)アウトドア般若心経はいつからやっているんですか?

(みうらじゅん)アウトドア般若心経はね、10年くらい前に始めたんですけども。やっぱり6年ぐらいかかるんですよね。あの、270何文字っていう、経典としては短い文字なんですけども。町で見つけるっていうことなんで。『無』っていう文字とか、あるじゃないですか。あれはやっぱり、当然『無煙焼肉』から撮りにいくわけで。

(中澤有美子)(笑)

(みうらじゅん)当然ね、パッと浮かぶのは無煙焼肉じゃないですか。

(安住紳一郎)『無断駐車お断り』とか。

(みうらじゅん)無断駐車お断りとか。まあ、2/3ぐらいは結構それでいけたんですよ。でも、1/3はものすごい難しい字を使ってあるので。後にやっぱり中国まで行こうかな?とは思っていたんですけれども。それでも一生懸命、ネットで調べてもらって。後には。で、北海道の色内町でしたっけ?『色』のつくところ、あるでしょ?わざわざその文字のために、北海道行くっていうのがまたグッときだして。

(中澤有美子)(笑)

(みうらじゅん)修行の一環として。兵庫県行ったり、いろんなところ行ったりして。一文字のために行って。ええ。

(安住紳一郎)アウトドア般若心経。般若心経に書かれている漢字を町の看板から見つけ出して、それを写真に撮るんでしたっけ?

般若心経の漢字を見つけて写真に撮る

(みうらじゅん)写真撮って、並べるんですよ。で、並べると、『仏説・摩訶般若波羅蜜多・・・』ってずっとなるわけじゃないですか。でも、そもそもは無煙焼肉だったり、いろんな要素のものなんだけど、集まると般若心経に見えるっていうことじゃないですか。でも、それがまたバラバラに写真をすると、無意味になるっていうことで。般若心経の真髄の『空である』っていうことがわかってきたんですよね。

(安住紳一郎)はー!それ、強引じゃないですか?

(みうらじゅん)いや、強引じゃないです。町中にはほら、よく駐車場に『空有り(くうあり)』って書いてあるじゃないですか。

(安住紳一郎)はい。

(みうらじゅん)『空有り』って、『空』っていうのはそもそも、『無い』っていう意味なのに。『有り』っていうのはどういうことなんだ?っていうことで。人々に問題提起を駐車場から発せられていると僕、思いまして。

(安住・中澤)(笑)

(みうらじゅん)『空無し』もあるんですよね。『空有り』もあって。

(安住紳一郎)そうですよね。『空車有ります』。

(みうらじゅん)僕それ、ずーっとそれを飲み屋でいろんな人に説いていたら、『それは空き有り(あきあり)って読むんじゃないか?』って。

(中澤有美子)(笑)

(みうらじゅん)正しく言われたんだけども。いや、わかってますよ。そんなわかっているんだけど、そう思うことによって!っていうことですから。

(安住紳一郎)かっこいいですよね。色即是空、空即是色っていう。

(みうらじゅん)そうですよね。かっこいいんですよね。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)ちょうどでも、並べてみると、誘拐犯が脅迫状を出すみたいな。新聞記事の活字を1つずついろんなところから取ってきて文章にするみたいな。

(みうらじゅん)バラバラなものが集まって、ひとつになっているっていうことですよね。人間とて、そうじゃないですか。いろんな要素があって、ひとつですから。ひとつじゃないんですよね。初めからはね。ええ。

(安住紳一郎)みうらじゅん法師は、おっしゃっていることはすごいかっこいいんですけど、なにかこう、自分の軸があって説法してるんじゃなくて、なんか相手と話をしていて、『あ、これはチャンス!乗っかろう』と思って。『ここ、行けそう!』って思う時に叩き込む感じの説法が最高ですよね(笑)。

(中澤有美子)(爆笑)

(みうらじゅん)さすが、昔から僕のことをご存知ですよね。そうなんですよね。なんか隙あらば、自分の方に話を持っていってるだけなんですよね。そうです。

(安住紳一郎)『その通りです。その話、ちょっと乗っかります』みたいなね(笑)。

(みうらじゅん)当たりですね。それは。

(安住紳一郎)さあ、そして実物のさらに仏像をお作りになったって?

(みうらじゅん)そうです。仏像のフィギュアって、かつて出てたんですけども。あの、まあ言えば、アーティスト非公認グッズなんですよ。あの、武道館の中で売っているものではなく、脇で売っているもの、あるでしょ?あの、なんかバンダナとか、いろいろ売ってるじゃないですか。

(安住紳一郎)本来権利を主張する人たちではない。

(みうらじゅん)非公認グッズ。ずっといままで仏像のフィギュアは非公認グッズとして出されていたけど、今回はそのフィギュア屋さんと組んだ時に、やっぱりお寺の許可をもらって公認で作りたいと僕、思っていたので。

(安住紳一郎)所有しているお寺の許可を?

(みうらじゅん)許可をいただいて。その、鳥取県の三佛寺っていうお寺の蔵王権現像っていうやつなんですけど。投入堂がすごく有名なところなんですけど。三朝温泉よりもうちょっと行ったところなんですけど。

(安住紳一郎)へー。投入堂ってなんですか?

(みうらじゅん)あの、岩のところにひっついているようなお堂、あるでしょ?あれ、役行者がこう、ポーン!と投げたら、ピターッ!っとひっついたというような伝説のお堂なんですけども。

(安住紳一郎)どうしてあそこに作ることができたんだろう?と思うような。

(みうらじゅん)そうです。そこの三佛寺のご住職とフィギュア屋さんが話し合って、公認になったので。許可が下りたっていうことで、プロデュースさせていただいて。その蔵王権現像ってまたちょっと、ザ・仏像っていうイメージではないんですけども。弥勒菩薩とか阿弥陀とかの感じではないんですけども。これ、山岳宗教と結びついている、蔵王権現だから、神仏習合なんですよね。神様のが入っているじゃないですか。権現だから。变化してるんですよ。

(安住紳一郎)はい。

(みうらじゅん)これも役行者が感得したって。ビビッときたんでしょう。で、生み出された仏像で。唯一日本のオリジナル仏像なんです。これ。蔵王権現像って。

(安住紳一郎)へー!中国から来たり・・・

(みうらじゅん)インドから来たやつじゃないっていうことなんですよ。片足あげて、不思議なポーズを取っている像で。

(安住紳一郎)じゃあ日本の本当に山岳信仰から生まれて?

(みうらじゅん)そうです、そうです。

(安住紳一郎)誰かが一からアイデア練ったという仏像ですか?

(みうらじゅん)そうです。役行者です。ええ。

(安住紳一郎)へー。これに魅せられて?

(みうらじゅん)そうです。小学校の時にこれ、おじいちゃんに連れてもらって。鳥取県に行ったんですけど。昔は投入堂の中にあったものなんですけど。いまは国宝館っていう下の方にあるんですけども。

(安住紳一郎)その国宝は本当の国宝?

(みうらじゅん)そうです。そうです。エセじゃない方の。本当のやつです。はい。

(安住紳一郎)でも小学校の時に見てるんですね。

(みうらじゅん)見ました。何体も蔵王権現像って並んでいるんですけども。いろいろ、奈良の吉野とか。吉野の金峯山寺っていうお寺でも3体あって。すごい大きい、巨大な蔵王権現像が。現在、過去、未来をあらわしてるんですよ。だから弥勒とか釈迦と阿弥陀ですよね。っていうのも蔵王権現で。山岳であらわしているという。姿を

(安住紳一郎)このフィギュアを販売してるんですか?

(みうらじゅん)あの、出たんですよ。ついに。プロデュースって言っても、自分がなんかするわけではないんですけども。いろいろ、印象というか、現物の大きさとは違いますので。縮小してありますんで。同じように縮小しても、やっぱり印象が違うと似てないんですよ。

(安住紳一郎)ああー。

(みうらじゅん)今回は公認なんで、似てるように当然作りたかったので。すごく見た時の感じ、あとは、護摩木とか多分焚いて祈祷とかしている仏像なので。ススが多分下から上がっていると思うんで。その、いいススを出している感じをつけさせていただきました。

(安住紳一郎)くすんでいる感じを。カラーリングもかなり。

(みうらじゅん)カラーリングも。こういうところって、プラモデルも汚しとか入れるじゃないですか。そこがグッとくるところなんで。はい。

(安住紳一郎)なるほど(笑)。みうらさんが小学生の時から好きだった仏像をフィギュアで発売されているということで。ぜひね、ちょっと見てみたいなと思いますけども。

(みうらじゅん)はい。ちょっと見てみてくださいよ。かっこいいんで。

<書き起こしおわり>

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