プチ鹿島推薦図書 プロレス少女伝説と井田真木子 著作撰集

プチ鹿島推薦図書 プロレス少女伝説と井田真木子 著作撰集 東京ポッド許可局

マキタスポーツさんがTBSラジオ『東京ポッド許可局』、推薦図書論の中で『井田真木子 著作撰集』と『プロレス少女伝説』を紹介していました。

(サンキュータツオ)じゃあ、もう一巡しましょうか。まず。じゃあ、PK(プチ鹿島)さん、お願いします。

(プチ鹿島)僕はね、じゃあ背景食いっていうお話が出ましたけども。自分の人生の背景食いという。不思議なことがあるんだな、なんて去年思った本をご紹介いたしましょう。これが、『井田真木子 著作撰集』っていう。これ、分厚い本なんです。

井田真木子 著作撰集
Posted with Amakuri at 2018.3.22
井田真木子
里山社

(マキタスポーツ)うん。

(サンキュータツオ)すごい分厚いよね。

(プチ鹿島)そうなんです。出しているところが里山社というところ。

(サンキュータツオ)知らない。

(プチ鹿島)実は、版元をおこして、初めての本です。里山さんという方がどうしても井田真木子さんの作品を全集にしたいということで、もう、いの一番にこの本を出されたという。これね、井田真木子さんというのはノンフィクションライターの方なんですけども。

(サンキュータツオ)そうなんだ。

(プチ鹿島)1970年。マキタさんも同じ、生まれましたよね。で、10代の頃、80年代ですごしたわけです。で、まあテレビとか見てすごしたんですけども、その中でプロレス中継が好きだったんですね。で、あの頃のプロレス中継っていうのはまだゴールデンタイムでやっていましたから。もう、みんなの話題になる反面、やっぱり大人とか冷ややかだったりするわけですよ。人によっては、『あんなもん、インチキだろ?』とか。『あんなもん、ショーだろ?』とか。『興味ない』とか。『意味がない』みたいな。で、僕は本当そういうコンプレックスをずっと感じてて。人前でプロレスファンって言っちゃいけないんだと思って。隠れキリシタンのように。みんな笑われるんですけど。ずっと。

(サンキュータツオ)いや、そうですよね。

(プチ鹿島)たまにプロレスファンだなんて友達に会うと、どの程度のプロレスファンなのかな?なんて。ちょっとこう・・・ね。

(サンキュータツオ)ちょっと好きっていうと、『あれだろ?プロレスって八百長なんだろ?』みたいな風なデリカシーのない言葉にさらされるから・・・

(プチ鹿島)『ああ、あのショーね』みたいなね。だからそういう・・・

(サンキュータツオ)言いたくない。しゃべりたくないよね。もうね。わかりますよ。

(プチ鹿島)そうそうそう。そういうもんだと思ったんですよ。言ってみれば、世の中の中心からものすごく外れたところにあったものが、僕の大好きなプロレスだったんですけども。それが1990年にですね、この井田真木子さんという方が、『プロレス少女伝説』という本を出したんですね。

プロレス少女伝説 (文春文庫)
Posted with Amakuri at 2018.3.22
井田 真木子
文藝春秋

(サンキュータツオ)プロレス少女伝説?

(プチ鹿島)これが翌年、1991年になんと、大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したんです。

(サンキュータツオ)すごい。登竜門。

(プチ鹿島)僕にとっては、なんて言うのかな?僕が認められたようなね。

(マキタスポーツ)(笑)

(サンキュータツオ)そっか。プロレスを扱ったノンフィクション。

(プチ鹿島)はっきり言います。日陰者で、こそこそ楽しんでいたものが、スポットライトがパーン!と当たった感じで。本当に我がことのように嬉しかったんです。ちょうどハタチぐらいの時だったです。僕、大学生で。

(サンキュータツオ)へー。女性のライターなんですね。

(プチ鹿島)女性のライターなんです。で、これ、プロレス少女伝説っていうのはどういうお話か?っていうと、ノンフィクションで。この方が、女子プロレス自体、もうプロレスから、世間から離れた題材ですけども。さらに、その女子プロレスの中でも、異端な人たち何名かにスポットライトを当てた話なんです。いまでこそ有名な神取忍さん。

(サンキュータツオ)はいはいはい。

(プチ鹿島)あの方が、もともと柔道出身なんですよ。ただ、まあ本当にあの、神取さんの学生時代っていうのは、気がついたら仲のいい友達がバイク事故で死んでいるような、そのぐらいのヤンチャな、言ってみれば、そういう環境で育った神取さんがお父さんの影響で柔道を習うわけですよね。

(サンキュータツオ)はいはい。

(プチ鹿島)で、メキメキと頭角を表すんですが。そこが神取忍の面白いところで。高校を卒業して、普通、ものすごい実力者なんですけど、スカウト、大学とか全部断っちゃうわけです。自分は束縛されたくないから。でも、柔道は続けたいわけで、そうするとどうするか?っていうと、大会に出るからには、自分で自己トレーニングで優勝か準優勝しないと選抜されないわけですよ。

(サンキュータツオ)へー!

(プチ鹿島)そういう環境に自分を置いて生きていた人だから、どんどんどんどん異端何ですよね。

(サンキュータツオ)すごいな!

(プチ鹿島)結局、実力はあるけど、ある程度実績は残すわけですけど、やっぱりもう柔道生活は終わってしまうわけですよ。そこで女子プロレス。新しい団体にスカウトされてっていうお話なんですが。この本がね、ノンフィクションが大宅壮一賞を受賞したじゃないですか。で、やった!と思ったんですけど。この後ね、審査員の中に立花隆さんっていう方が。

(マキタスポーツ)知の巨人。

(プチ鹿島)そうなんです。知の巨人なんです。まあ僕、あの頃も読んでましたよ。立花隆さんの本、面白いじゃない。宇宙行ったりとか、サル学の現在とかね。田中角栄研究とか。ねえ。その方が、こんなコメントを残したんです。選考委員の。『私はプロレスというのは品性と知性と感性が同時に低レベルにある人だけが熱中できる低劣なゲームだと思っている。もちろんプロレスの世界にもそれなりの人生模様が様々あるだろう。しかし、だからと言ってどうだと言うのか?世の大多数の人にとってはそんなことはどうでもいいことである』っていう論評を出して、俺、逆にもうものすごく傷ついたわけです。

(サンキュータツオ)(笑)

(プチ鹿島)スポットライトが当たってのこのこのこのこ、ああ嬉しい!って思っていたら、もう返り討ちでしょ。で、だいたい世間の大人っていうのはこういうことだなって。本当にプロレスに対して憎しみとかアンチだったらまだいいんです。そうじゃなくて、目の前にフッとプロレスっていう話題が出てきたら、『こんなもんは品性と知性・・・』。そりゃそうですよ。立花隆さんにとって、だって宇宙のこととか、田中角栄のロッキード金脈とか、大事なことが毎日あるんですもん。

(サンキュータツオ)(笑)

(プチ鹿島)仕分け作業ですよ。そん中にプロレスなんか、いらいないんです。だからこういうことを、本人は悪意とかないんです。だからこそ、傷ついたわけ。うわーっ!と思って。で、そういうことが91年にあって、この井田真木子さんっていうのは実はその10年後なんですけど、2001年。44才で亡くなるんです。

(サンキュータツオ)ええっ!?早い!

(プチ鹿島)だからこのプロレス少女伝説っていうのは、もう幻の絶版の状態だったんですよね。

(サンキュータツオ)ええー?そうなの?

(プチ鹿島)そうなんです。

(サンキュータツオ)ずっとスポーツライターをなさっていた方なんですか?

(プチ鹿島)ところがなんです。ところが、僕が名前を覚えていて、その文庫本をもう夢中で読みましたよ。

(サンキュータツオ)じゃあもうリアルタイムで好きだったんだ。

(プチ鹿島)だけど、その井田真木子・・・だってプロレスファンにとっては救われたんだから。この人に。立花隆にぶった切られたけど。で、2001年に亡くなるわけですよ。で、去年ね、里山さんという方が、『私はやっぱり版元をおこすんだったら、この井田真木子さんの著作撰集を全て出したい』って出したんです。やっぱり読んでみると、このプロレス少女伝説も収録されているんですが、他の題材。たとえば、同性愛者たちとか。

(サンキュータツオ)へー!あ、じゃあもうマイノリティーを。

(プチ鹿島)結局、そうなんです。だからそれが全部詰まっているんです。

(サンキュータツオ)へー!俺、もうすげー読みてえ!ヤバい!

(プチ鹿島)そうでしょう?だから結局、プロレスって・・・だから題材をあの時、プロレス少女伝説。女子プロレスを選んだ理由っていうのがわかるわけなんです。

(マキタスポーツ)なるほどね!

(プチ鹿島)で、この『同性愛者たち』っていうノンフィクションを読んでみると、それも結局、当時ですよ。80年代終わりから90年代ぐらいですよね。同性愛を扱ったワイドショーかなんかを見て、戦慄を覚えたらしいんですよ。ドキュメントを追ったら、ワイドショーの司会者が『なんだか普通の人のようなんですけど、かわいそうですね』みたいに言ったり。『お母さんはどんな気持ちなんでしょうね?』っていうのが当時の一般のマイノリティーっていうか同性愛者に対する、なんて仕打ちをされるんだ!ってことで、居ても立ってもいられなくなって、井田さんはこの同性愛者たちの事務所に駆けつけて、『取材させてください』っていうので一本取るわけです。

(サンキュータツオ)あ、じゃあやっぱり当時の大人たちがみんな、立花隆的な物言いをする中で、やっぱり向こう側にいる人たちのロジックというかね。

(プチ鹿島)だからね、この本でね、別の作品で井田さんは『リアリティーとは生きた証であり、いまも生きていると私たちに感じる何者かのものだ』って書いてあって。リアリティーとか切実っていうのがこの人にとってのテーマなんですよ。

(サンキュータツオ)うん。

(プチ鹿島)だからたとえばですよ、同性愛を追っていたり、いわゆるマイノリティーの人を、社会的弱者の方を扱うのがこの人の正義と普通は思ってしまうんです。だけど、違うんです。井田さんにとってのいちばん切実な対象っていうのが、やっぱり社会の中心から外れて。でも一生懸命に生きている女子プロレスラーであり、同性愛者であり。それと対等に扱うことが好きなんです。

(サンキュータツオ)へー。

(プチ鹿島)というのはね、解説を関川夏央さんという方が書いていて。この井田さんっていうのはノンフィクションライターなんだけど、特殊なんだって書いてるんです。とにかく、状況に立ち入って、状況を動かそうとする。自分がなんだったら物語の・・・

(サンキュータツオ)関与するんだ。

(プチ鹿島)そう。

(サンキュータツオ)それ、本当はやっちゃいけないやつだよね?

(プチ鹿島)言ってみれば、すごい親交のある人からすれば、ある種の情が厚すぎたり、面倒くさかったりする、ちょっと変わった人らしいんです。

(サンキュータツオ)面白い!

(マキタスポーツ)へー。

(プチ鹿島)自分が状況を動かそうとする。だから、自分にとって切実な話題こそ、書けるじゃないですか。

(サンキュータツオ)そっか。自分がもう当事者になるんだ。

(プチ鹿島)そうなんです!当事者になる。だからそれ、ノンフィクションとしてはありか?なしか?はわからないですけど、そういう書き手なんです。

(サンキュータツオ)あ、面白いね!

(プチ鹿島)で、それを後から改めて考えてみると、そうなんですよ。プロレス少女伝説っていうのも、ひとつのハイライトが神取さんが新団体に入った時に、一方の業界の雄が全日本女子プロレスっていう、長与千種っていう人がいるところなんですね。ライバル団体と絶対に交わらなかったんですけど。長与千種も自分がスターを続けていくにつれて、やっぱりスターって世の中より先に行ってますから。このままだと廃れる。何か刺激がほしい。たとえば神取忍みたいな、言ってみればアスリート的な、ガチの人ですよね。そういう人と戦うことによって、新しいものが生まれるしかないって、長与千種はブームの渦中に、もう危惧を感じていて。思っていたんです。だけどそれは、会社対会社だから、
言えないんですよ。

(マキタスポーツ)うん。

(プチ鹿島)ただ面白いのは、この井田真木子さんっていうのが、長与千種にとっての
語り部というか。言葉を紡いで、たとえばプロレス雑誌で、インタビュアーだったんですね。だから長与千種の言葉を毎号配信している係でもあるわけですよ。

(サンキュータツオ)へー!

(プチ鹿島)つまり、それでだんだんプロレス誌面を通じて、『神取と長与千種は対決させた方がいい』っていうのを。だからアドバルーンを上げてるんです。だから完全に向こう側の人で。平等な立場ではないんですよ。だけど長与千種も頭のいい人だから、たとえばこいつは自分の語り部として使えるということで、ものすごく言葉の語り部として、長与千種インタビューっていうのが売りになるんです。

(サンキュータツオ)ほー!

(プチ鹿島)で、やっぱり持って行き方がすごいんですよ。お互い天才の言葉を紡ぎだす人と、それをどう世の中にアピールするか?っていう、ある意味共犯関係ですよね。その一部がこの本に載ってるんですよ。やっぱり、会社対会社で言えば、絶対神取戦は実現しないんですよ。だけどね、こんなインタビューがね、ここにも収録されているんですよ。

(サンキュータツオ)はい。

(プチ鹿島)まず最初、長与はね、インタビュアーの井田さんに、『最近、ずっと気になっているのね』って。インタビューが始まるんです。『プラトニックラブという言葉が気になってしょうがないのね。ウチ、プラトニックラブしたいんよ。プロレスに』。で、井田さんは絶対全部わかっているわけですよ。『えっ、どういうこと?説明して』ってこと、急かすわけです。

(サンキュータツオ)うん。

(プチ鹿島)そうすると長与がね、『あのね、あるところにプロレスラーがいます。いい?どういう人か、わかんない。どんな顔、どんな体、どんな技つかうのか?』。で、井田さんは、『はい、続けて』『でも、ひとつだけ。ひとつだけよ』。長与が言うんです。『強いんだ、その人は』ってこう、散々匂わせて、インタビューの最後が、長与がこう言うんですね。『ねえ、神取忍って強い?』って言うの。

(サンキュータツオ)おおおーっ!すごーい!

(プチ鹿島)これがもう配信されたら、プロレスファンはもうたまらないじゃないですか!

(サンキュータツオ)たまらない!見たいわ!

(プチ鹿島)で、機運が盛り上がって、さあ!団体同士が交渉して・・・っていうところでプロレス少女伝説は終わるんです。90年。で、実際やっぱり利害が絡んで。実現はしなかったんですよ。これがプロレス少女伝説の1990年のお話。

(サンキュータツオ)へー!

(プチ鹿島)で、先ほど言いましたよね。井田真木子さんがお亡くなり担って。2001年。で、2014年。去年、この本が著作撰集といって、発売されたんです。だからあれから20何年たって。で、去年の10月、神取忍レスラー生活、もしくは50才の記念の大会の時に、長与千種と同じリングに立ったんですよ。

(マキタスポーツ)おおー。

(プチ鹿島)だから、不思議でしょ?だから、結局立花隆があんな・・・『たしかに女子プロレス頑張っているかもしれないけど、世の中にとっては無駄なもんだ』って切り捨てられましたよ。だけど結局ね、井田さんが亡くなって、著作撰集が出て。その2014年に長与と神取、同じリングに10月に立ったんですよ。もうだからこれ、なんか不思議だなって。だからもう、無駄なもんなんて、ある意味ね、見続ければですよ、自分にとってはないんだなっていう答え合わせができたのがこの1冊なんです。

(サンキュータツオ)たしかに!

(プチ鹿島)これ、面白かった。だから本当に、井田さんにとっては本当にあの、社会正義とか、そういう大義名分じゃなくて、自分にとって切実な人をやっぱり取材しようと思ったら、社会のいちばん外にいた人だった。だからこそ、リアリティー、切実なことを書き表すんだと。

(マキタスポーツ)主観的現実ってやつだね。

(サンキュータツオ)面白いね。なかなかいないもんね。そう言うの。

(プチ鹿島)いや、だから僕もこの井田さんの同性愛とかね、そういうのを題材にいろいろ残していたっていうのを去年、初めて通して見ました。

(サンキュータツオ)なんか森達也さんとはまた別のアプローチなんですね。

(プチ鹿島)別ですね。だからかなり癖のあるノンフィクションライターの方なんですけど。

(サンキュータツオ)実際、お会いしたことないの?

(プチ鹿島)ないです。だって、2001年にもうお亡くなりになってますから。

(マキタスポーツ)ねえ。44才で亡くなっちゃって。

(サンキュータツオ)やっぱり有名なの?そのプロレスの世界では。

(プチ鹿島)有名です。有名です。

(サンキュータツオ)あ、そうなんだ。

(プチ鹿島)だからそれがね、またやっぱり売れているらしいですよね。かなり分厚くて、3000円なんですけど。もうあの、重版を重ねてるということなんですよね。

(サンキュータツオ)神取忍さんとか、なんかコメントとかしてないの?

(プチ鹿島)出てます。というのは、神取側からしゃべっても、この本、足りないです。っていうのはみなさん、『心が折れる』って簡単に言いますよね?『心が折れる』っていう言葉を出したのは、井田さんがこのプロレス少女伝説で神取にインタビューした時なんです。

(サンキュータツオ)へー!

(プチ鹿島)1990年に、要は『相手の心を折るために、私はやっている』っていう風に。つまり神取も強すぎて。やっぱりジャッキー佐藤っていう人とデビュー戦で当たったわけですよ。で、何回かやる内に、変な話、相手を仕留めてやろうと思って、ガチで勝っちゃったんですね。

(サンキュータツオ)うん。

(プチ鹿島)で、もうジャッキー佐藤の後援者とか支援者に、変な話、拉致されて。『お前、なんであんな、ジャッキーをコテンパンにやったんだ?』みたいな。拉致られてですよ。当時のプロレス界ですよ。いまはそんなブラックなのはないですけど。当時はそんな状況があったんですよ。

(サンキュータツオ)ええー!?

(プチ鹿島)で、神取は何日も監禁されて。なんかの移動の際に振り払って逃げて、そのままニューヨークに行ったんです。ニューヨーク。

(サンキュータツオ)マンガみたい(笑)。

(プチ鹿島)で、当然あれを振り払って海外に行ったから、お金なんてないわけですよ。じゃあ、神取は何をしたか?っていうと、ニューヨークの街角に立って、柔道着を着てね、帰っていく子どもたちの群れを見て、『あれっ!?』と思ったらしいんです。後を追ったけども、姿がなくなっちゃって。じゃあ明日、この時間にまたニューヨークで・・・って行ったら、柔道着をまた着ている子どもたちがいて。で、後をついていったら、ニューヨークで柔道教室を開いている道場があって。そこに行けば神取忍っていうのは当然知っているわけですよ。道場主の人が。

(サンキュータツオ)うん。

(プチ鹿島)そこで皿洗いのバイトとかを教えてもらって。それで日本への切符代金を稼いだっていうの。

(サンキュータツオ)マンガみてーだな(笑)。

(プチ鹿島)マンガみたいなことを神取はやってるんです!そんな人がプロレスのリングに立って、自分がなにができるか?っていうと、もう相手の心を折る。

(サンキュータツオ)去年、だって横浜スタジアムでなんか・・・

(プチ鹿島)そうです。だからタツオと春日(太一)さんと俺の3人で横浜スタジアムに見に行ったら、神取さんがね、自分のチキンの屋台を出してたんですよ。『カンドリーチキン』っつってね。

(サンキュータツオ)(笑)

(マキタスポーツ)カンドリーチキンね。カンドリーチキン。

(プチ鹿島)で、みんなゲラゲラ笑ってたけど、あれ、すごい人なんだから!

(サンキュータツオ)あれ、すごい人(笑)。

(プチ鹿島)すっごい人なの。だからそういう、異端も異端ですよ。で、長与千種っていうのも、異端の異端ですから。わかっていたわけ。自分は、勝とうが負けようが、こいつと絡まなければ女子プロレスの未来はないっていう。

(サンキュータツオ)うおー!

(プチ鹿島)それがね、当時はやっぱり政治的な思惑で実現できなかったんですが。もうお互いおばさんになって、ねえ。世間は笑うかもしれないですよ。おばさん同士のあれで何が面白いんだよ?って。ただ、違うんですよ。20年なりの物語を知ってれば、答え合わせができた。ああ、井田真木子は喜んでるだろうって思って、僕は10月、見てました。

(サンキュータツオ)喜んでるね。

(プチ鹿島)だから立花隆。立花隆さんっていうのもやっぱり素晴らしい人だと思うんですよ。だけどあの人が切って捨てた無駄なものが、いまだにこういう著作撰集になってスポットライトを浴びてるっていうのは、僕はある意味、立花隆に追いついたなって思ってるんです。井田さんは。

(サンキュータツオ)おおー。

(プチ鹿島)っていうのが去年。不思議だったですね。

(サンキュータツオ)すっげー面白い!分厚いですけどね。

(プチ鹿島)まあ、よかったら読んでみてください。同性愛のこととか、だからいわゆるマイノリティーの、社会の端っこにいる人たちを追っかけている。そういうノンフィクションライター人生でしたね。この方。

(マキタスポーツ)なるほど!じゃあ、続いてはタツオ。

(サンキュータツオ)いや、もう紹介できないでしょ!この後(笑)。また次のターンでいいですけど(笑)。

(プチ鹿島)エンディングで。

(サンキュータツオ)エンディングでね。

(マキタスポーツ)またやる?

(サンキュータツオ)またやりましょうよ。

(プチ鹿島)じゃあ次はタツオ回で。

(サンキュータツオ)まああの、同性愛者とか、あと誰がいるの?そのマイノリティーで。

(プチ鹿島)マイノリティーですか?ええと、だからね、『かくしてバンドは鳴りやまず』っていうのと、あと、そうそう!本木雅弘。モックンですよね。モックンが、アイドルから役者になりかける時にインタビューしてます。

(マキタスポーツ)面白そう!

(プチ鹿島)『脱アイドルの理論と実践』。『村西とおると黒木香』。

(サンキュータツオ)へー!

(プチ鹿島)ほら。最近、亡くなる直前ですけど、神戸の少年Aの手記を読んでっていうので、人間の心の不思議、多様さを見つめる心が不足していたって言うような、いろんなだからこう・・・

(サンキュータツオ)いろんなやつをやってるんだ。

(プチ鹿島)そう。やっぱりマイノリティーっていうか、なるだけスポットライトが当たってない方を選ぶんじゃなくて、そちらを取材することが自分にとっての切実、リアルっていうことなんでしょうね。

(サンキュータツオ)へー!いや、面白そう。

(マキタスポーツ)なんだよ。なんか俺、たいめいけんの話なんかしなきゃよかった・・・

マキタスポーツ推薦図書 洋食や たいめいけん よもやま噺
マキタスポーツさんがTBSラジオ『東京ポッド許可局』、推薦図書論の中で『洋食や たいめいけん よもやま噺』を紹介していました。 (マキタスポーツ)俺、じゃあいい? (サンキュータツオ)じゃあ、マキタさんから。マキタさんの、聞きたい。なんだろ...

(鹿島・タツオ)(爆笑)

(マキタスポーツ)(笑)

<書き起こしおわり>

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