アクション監督 谷垣健治 るろうに剣心と香港アクションを語る

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映画『るろうに剣心』のアクション監督などをつとめた谷垣健治さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。るろうに剣心のアクションや、日本と香港のアクションの特徴などについて話していました。


(赤江珠緒)本日の面白い大人、ゲストは元スタントマンでアクション監督の谷垣健治です。こんにちは。はじめまして。

(谷垣健治)はい。よろしくお願いします。

(ピエール瀧)はじめまして。お願いします。

(赤江珠緒)もう、始まる前からね、このスタジオの窓ガラスのところにずーっと。

(谷垣健治)あの楽器屋の黒人の子どもみたいになってましたよね(笑)。

(赤江珠緒)ピターッとはりついてらっしゃったので。まさかあの方が谷垣さん?みたいな。

(谷垣健治)いや、めっちゃ緊張してるんすよ。生ですから。あ、そうだ。瀧さん。樋口真嗣監督が、『進撃の巨人』、早くアフレコに来てくれって(笑)。

(赤江・瀧)(笑)

(ピエール瀧)そうっすね(笑)。聞いたら、すげーアフレコが増えたって、ゾッとしてるんすけど。まあまあまあ(笑)。

(赤江珠緒)でも、ともにはじめましてですよね。瀧さんもはじめましてですか?

(ピエール瀧)そうです。はい。

(谷垣健治)もう『凶悪』の人だと思って。なんか怖くて(笑)。

(赤江・瀧)(笑)

(ピエール瀧)でも、そんなアクションが多いような映画には・・・

(谷垣健治)ガラス越しで見てると、本当にあそこのね、面会室で会っているみたいな感じで、めっちゃ怖かったです(笑)。

(ピエール瀧)なるほど(笑)。今日は安全ですから、ご安心ください。

(赤江珠緒)さあ、谷垣健治さんのプロフィールご紹介させていただきます。谷垣健治さんは1970年、奈良県のお生まれです。子どもの頃、ジャッキー・チェンの映画『スネーキーモンキー 蛇拳』をテレビで見たことがきっかけでアクションに興味を持たれまして、高校時代には少林寺拳法部に所属。県大会で優勝。全国大会にも出場されています。で、高校卒業後、大学に通いながらアクション俳優倉田保昭さん主催の倉田アクションクラブで学び、スタントマンとして活動されていましたが、93年。谷垣さん22才の時、特に何もツテがないままアクションの本場香港へ単身で渡られます。その後、本場香港でもスタントの実力が認められた谷垣さんは香港映画界のアクションスター、ドニー・イェンのもとで多くの作品を経験し、アクションの指導もするようになります。2012年、谷垣さんがアクション監督をつとめた映画『るろうに剣心』が大ヒット。現在もジャッキー・チェンが会長をつとめる香港スタントマン協会の唯一の日本人会員として国内外を問わずアクション監督、スタントコーディネーターとして活躍されていますという。

(谷垣健治)いま、『スタントコメディアン』って言いそうになりましたね(笑)

(赤江珠緒)ごめんなさい。ごめんなさい(笑)。おっとっと。見た目はね、本当にね、陽気な感じですけど。

(ピエール瀧)すっごいな。でも。

(赤江珠緒)すごい経歴ですよ。

(谷垣健治)半分ぐらい、嘘ですけどね。

(ピエール瀧)(笑)。やっぱり入り口、ジャッキー・チェンなんですね。

(谷垣健治)ジャッキー・チェンです。

(赤江珠緒)蛇の拳と書いて蛇拳。

(谷垣健治)そうですよ。知らないっすか?

(赤江珠緒)酔拳の方は知ってるんですけど、蛇拳は・・・

(ピエール瀧)酔拳はその後。

(谷垣健治)やっぱりね、公開は酔拳・蛇拳なんですけど、僕は蛇拳から見たんですよ。

(ピエール瀧)あ、酔拳の方からか。

(谷垣健治)で、本国の公開は蛇拳からで、酔拳は蛇拳のパート2っていうことだったんですね。でね、蛇拳はやっぱり全くできないキャラクターが、だんだんだんだん練習を積んでできるようになるっていうのがね、やっぱりそれが小学生のハートを刺激したわけですよ。『俺、できる!』って思ったんですよ。

(赤江珠緒)へー!で、出てこられたら、もう・・・

(谷垣健治)やっぱりね、いま、蛇拳と酔拳が優秀だなと思うのは、蛇って真似しやすいじゃないですか。蛇拳の形とか。酔拳、こう、こう・・・見えないけど、真似しやすいじゃないですか。やっぱりね、ヤクザ映画とかと同じように、アクション映画もちょっとね、真似したくなるとかっていう要素とか、ちょっと子どもでも真似できる要素って大事で。剣心だったら剣心立ちとかあるじゃないですか。ブルース・リーもそうだし、剣心は必殺技とかもそうじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(谷垣健治)やっぱりね、子どもでも真似できるキャッチーな要素とかね。よく役者さんに言うのは、『癖を自分で作ってください』っていう。自分だけの癖ってあるじゃないですか。

(赤江珠緒)フィギュアスケートでも、羽生くんのなんか、こういうポーズとか。みんなやりましたもんね。

(谷垣健治)そのキャッチーな部分。それをね、たとえばちょっと古いけど、KARAでもペンギンダンスとかあるじゃないですか。一言で言える真似できる要素っていうのを、やっぱりね、るろ剣ほどキャラが多いと、僕らが作るとそういうのって作り物だから腐っていくんだけど、それぞれの人がアクション練習で、『あ、その癖、面白い!っていうところを広げてください』っていう風にします。それはやっぱり蛇拳の蛇のやつとかの、そういうキャッチーなのが大事だなと思ったんで。そこからやっぱりいまでも使うところはありますね。

(ピエール瀧)でもやっぱりジャッキーのね、トレーニングシーンとかもいろいろ真似したくなる・・・僕、いまだにあの甘栗ねってるやつ、見ると・・・甘栗、ほら。炒ってる機械、あるじゃないですか。あそこに手を入れたくなる衝動が・・・

(赤江珠緒)手をシャッ!って入れるんですね。はい、はい(笑)。

(ピエール瀧)そういうの、あるんですよね。入れたら怒られるし、火傷するんだろうなと思いながら。

(赤江珠緒)お店のだ(笑)。そして高校時代は少林寺拳法部で。部活に少林寺拳法部っていうのがあったんですか?

(谷垣健治)あったんですよ。ええ。なんかね、やっぱりその頃からスタントマンっていうかアクションに関わることがやりたいなと思っていて。そうするとね、少林寺拳法って、金剛禅の少林寺拳法っていうのは演舞っていって。決められた手をね、いかにちゃんとやるか?っていうんで。乱取りとはまた違ったんですよ。そこでやっていたのが。ああ、これアクションの役に立つなと思って。それで始めたっていう感じなんです。

(赤江珠緒)はー!

(ピエール瀧)ああ、そうか。最後の決めの感じだったりとか、こうした方がかっこ良くするとか。

(谷垣健治)それとか、受けの攻防が最初から決まっている。だから立ち回りをやるようなもんだったので。それで、体操競技みたいに点数でやるんですよ。

(赤江珠緒)へー!そうですか。で、そこからじゃあ迷わず倉田アクションクラブに入られて。

(谷垣健治)そうですね。そのアクションクラブ入る前に、ジャッキー・チェンの『奇蹟/ミラクル』っていう撮影現場を見に行ったんですよ。香港に。初めて海外旅行、1人で行ってね。それで見に行ったら、やっぱりね、その映画の熱っていうのがすごくて。もう
見たこともないね、いまで言えばクレーンのパワーボットっていうあれですよ。アームで動くような感じのやつとか。ステディカムの機械とかあって、『見たことない。これ、すごいわ!香港映画、むっちゃ進んでるわ!』と思って。で、その中に入りたいなと思って、それで日本帰った時に、なにができるか?って言った時に倉田アクションクラブがいちばん香港アクションに近いなと思ったんで。

(ピエール瀧)うん。

(谷垣健治)それで、大学行きながらね、そうそう、僕、関学です。関学。

(赤江珠緒)あ、関学。うわー、近く。

(谷垣健治)近いですよね。行きながら、アクションクラブに行ってたっていう感じです。

(赤江珠緒)あ、そうなんですか。

(ピエール瀧)えっ、じゃあもうその頃はもう、漠然と俺、このアクションの世界で食っていこうかな?っていうのは、決め打ちだったんですか?やっぱり。

(谷垣健治)ただね、そういうルートは全くないですから。香港で、スタントマンってその時は考えてなかったですけど、アクションでやっていきたいなと思ったんですけど。でも、道がなかったんですよ。なり方がね。なり方がなかったから、ただただ、とりあえずアクションが上手くならなきゃ話は始まらないと思ってやっていました。

(赤江珠緒)どんな練習していくんですか?

(谷垣健治)アクションクラブで?アクションクラブね、最初はまあ柔軟やるじゃないですか。柔軟、すごい重要ですよ。柔軟、すごい時間をかけて。で、その後ね、体操の基本からやるんですよ。前回りからいって、前転、前転ジャンプ、前転切り込みみたいなの。ロンダートで、ロンダバク宙とか、いろいろ基本があって。で、その後、空手の基本があったりとか。木刀の基本があったりとか。立ち回りとかリアクションとか。やっぱりアクションでもいろいろあるんですよね。

(赤江珠緒)うん。

(谷垣健治)あの、立ち回り。それからアクロバット的要素。それから、なんて言うのかな?リアクションです。やっぱり、やられる人の・・・

(赤江珠緒)ああー。

(ピエール瀧)殴られ方とか。

(谷垣健治)そうです。だからリアクション、やっぱりね、立ち回りでも、その芯の人。だから立ち回りの主役になる人と絡み。芯と絡みにわかれるんですよ。だから芯の練習もすれば、絡みの練習もするっていう風に、いろいろやったりしますね。

(赤江珠緒)そういうことですか。いろいろ求められますね。

(谷垣健治)いろいろね、ジャンルがあるんで。素手の立ち回り、刀の立ち回り、それから最近で言うと軍事格闘技なんか流行ってますから、短いナイフとかでね、カリとか。カリ、エスクリマとかフィリピン武術とかあるんですよ。

(赤江珠緒)あ、そうか。武器によっても違うと。

(谷垣健治)武器によっても違うんで。その仕組みをやっぱり僕たちが短い時間で、そのシステムを知って。そして、プロの人よりもプロらしく画面の中でやるってことを求められるんで。そこですよね。

(ピエール瀧)でも、まあ言ってもね、いままであった、過去の少林寺ですとか、そういう香港アクションみたいなやつとかだったらいいですけど。最近だったらもう近未来の話とか、近未来格闘みたいなやつを求められることもあったりするわけじゃないですか。なんかレーザーガンみたいなのを持って。その時の格闘スタイルとか、もう想像で作っていかなきゃいけない部分もありますよね。きっとね。

(谷垣健治)でも、嘘はつきやすいんですよね。

(ピエール瀧)ああ、やっぱりそういうのは。

(谷垣健治)実際にあるものを、じゃあ実際にやったら面白いか?ってところから始まって。それを面白く見せるってことの方が難しいですよね。そこの説得力というか。

(赤江珠緒)ああー、そうですか。あの、るろうに剣心は本当に日本刀の戦いじゃないですか。それは、しかもすごいスピードで。あれ、ちょっといままでになかったぐらいのスピードですもんね。

(谷垣健治)そうですよね。あれ、早いでしょ?いろいろね、みんながんばりましたから(笑)。

(赤江珠緒)そうですか。もう、かなりの練習をして?それもアクションの方がつけて、こういう感じでやりますっていうのを演出されるんですか?

(谷垣健治)ええとね、まずは僕らの、るろうに剣心に関して言うと、まずはアクション練習が始まるわけですよね。で、アクション練習ってみなさんたぶんね、役者さんを10人ぐらい並べて、『はい、素振り。1、2!』とかってやると思うじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(谷垣健治)じゃなくて、アクション部っていうね、アクション監督、スタントコーディネーターで、スタントをやる人たちみんな、8人、9人ぐらいいるんですけど。るろうに剣心の時は。その人たちが1人の役者に対して、2時間、3時間やるわけですよ。

(赤江珠緒)ほー。

(谷垣健治)もう、その1人だけです。一緒にやると、当たり前なんですけど、他の格闘技と違ってね、役柄に対してのアプローチなわけだから、それぞれ持っている武器も違えば、戦い方も違うので。同じように教えられないじゃないですか。だから、大友監督が面白いことを言ってたんだけど、『僕たちはその段階ではトレーナーではあるんだけど、トレーナーっていうよりもカウンセラーだよね』っていう言い方をしていて。

(ピエール瀧)うん。

(谷垣健治)つまり、この役に近づくためにアクション的な要素、フィジカル的な要素としてはこういうことをやりましょうね。あ、今回これやりました。でも、あなた、これ足りないですよね。じゃあ、次回はこれをやりましょう、っていう風に、その処方箋を書くというか。

(赤江珠緒)それは殺陣師の方プラス、アクションの方もっていうことで付くんですか?

(谷垣健治)あのね、殺陣師っていうか、アクション部の中にみんなそういう要素はあるんで。

(赤江珠緒)あ、そういうのもあるんですね。

(谷垣健治)はい。だからアクション監督って僕じゃないですか。それで、監督がこういう感じっていうのを、僕がアクションのコンセプトを言いますよね。そん中でスタントコーディネーターとかみんなで立ち回りを作ったりして。それで役者さんに移していくっていう感じだと思うんですよ。

(ピエール瀧)でもね、そういう現場にたまに僕もアクションの瞬間、ありますけど。すっごいですよ。そのアクションの方、来ると。まあまあ無茶言うんですよ(笑)。

(赤江珠緒)(笑)

(ピエール瀧)最初に。『監督がこういう画を撮りたいから、ここでこうなって、こうやって、こっちでこうやって、グルン!って回って、こっちでバーッ!って避けてさ・・・』みたいな。『ゴロンって転がって、そこで下から斬り上げて、それを避けて・・・』みたいなことを言って。こっちは『なに言ってんの?』って話になるんです。こっちは(笑)。『バカじゃないの?なに言ってんの?おっさん!おっさん!素人!こっちは!』って思うんですけど。

(赤江珠緒)そうですよね。

(ピエール瀧)それを、こういう方たちが、順序立てて、『こういう風に見えるし、ここでこうすれば安全だし・・・』っていうことを全部教えてくださるんです。

(谷垣健治)そこが大事で。なんで僕たちがみんなで寄ってたかって1人をやるか?っていうと、いっぱいいると、『バカじゃないの?』になっちゃうんですよ。

(ピエール瀧)そうなんですよ。『バカじゃないの?』っつって(笑)。

(谷垣健治)僕たちは、『なんでできないの?』にできるわけですよ。みんなで1人をやると、『できないあなたがおかしい』に持っていけるわけですよ。つまり、それがね、5、6人並ばれると、『できるお前らがおかしいんだ』ってなるんだけど、僕たちは『できないあなたがおかしい』に持って行きたいんですよ。で、一人ひとりやりますよね。他の役者さんの状況はみんな知らないわけですよ。

(赤江・瀧)うん。

(谷垣健治)ということは、リミッターがどんどん外れてくんですよ。それでいつの間にかできるようになっていくから、現場が始まる頃にはこっち側になってるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ!?

(ピエール瀧)そう。だからあのね、『もうここまできたら、もうやるしかねーかな?』とか。あと、こっちがさ、イヤッ!ってやった人がさ、足ワイヤーで吊られてビーン!ってさ、15メーターぐらい上がったりしちゃうのを見てると、『ああ、あそこまでやってるんだったら、こっちもちゃんとやんなきゃな!』っていうことに思うんです。本当に

(赤江珠緒)(笑)。なるほど。大多数ができる側に。こっちが主流だよっていう風に。

(谷垣健治)だって、剣心で言うと、やっぱり難しいのがたとえば普通のウェイトレスさんで、昔、空手の経験がありましたっていう役だったら、それはもう何回か練習したら、そういう過去の経験は追体験できると思うんだけど。剣心は昔、人斬りでしたって話じゃないですか。そんなもん、追体験できるわけないし。

(赤江珠緒)もう江戸から明治へ変わる頃の時代劇ですからね。

(谷垣健治)そうです。昔、人斬りだった人って、昔、空手部で空手経験のあるウェイトレスさんとは意味が違うわけですね。やっぱり、それぐらいやりこまないと、いまのお客さんは目が厳しいですから。

(ピエール瀧)いやー、そうっすね。そこはね。

(赤江珠緒)そうかー。

(谷垣健治)そこはもう、やってやって、やりすぎることないじゃないですか。

(赤江珠緒)なるほど。

(ピエール瀧)って言ってるのが成功例の話で(笑)。いや、まあスタントのね、アクション監督になると、とんでもない瞬間あると思うんです。やっぱり、それは。

(谷垣健治)うん。やっぱりね、とんでもない瞬間。タガが外れた瞬間がね、やっぱり僕らの大好物っていうか。そこが面白いんですよ。いままで言ってることは、すいません。全部正論。正論ですよ。そこじゃなくて、やっぱりちょっとアクシデントっぽいとか、ちょっとタイミングが外れたりしたところが、さっき赤江さん、『早い』って言ったじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(谷垣健治)早いっていうのがやっぱりいろいろあってね。本当に早いってこともあるんだけども、タイミングで早く見えることだってあるんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(谷垣健治)あるわけですよ。『ほう』っていう会話は、こういって、こうだけども。たとえばちょっと、赤江さんが言ったことに僕が食い気味に何か言うとするじゃないですか。それって、会話としては早く見えますよね?

(赤江珠緒)ああ、そうか。

(谷垣健治)それと同じように、立ち回りでかかってきた時に、『いやーっ!』『バサッ!』っていうのが普通だとしたら、『いっ!』『バサッ!』ってやると、早く見えるっていうのを昔、勝さんが言ってたんですよ。

(赤江珠緒)はいはい。

(谷垣健治)勝新太郎さんが、『いやーっ!』で斬るんじゃなくて、普通に段取りは『いやーっ!』『バサッ!』『いやーっ!』『バサッ!』『いやーっ!』『バサッ!』。『これで3人、こんな感じで斬るかな?オシ、行くぞ!』っていう感じで。で、『いっ!』って言った瞬間にパッて斬るんですって。

(赤江珠緒)はあ。

(谷垣健治)『いやーっ!』の『いっ!』って言いながら、ちょうど息をね、『いっ!』って言ったぐらいで斬るのが早く見えるんだ、人間はって。

(赤江珠緒)振っているスピードは一緒でも、もう、そこで?

(谷垣健治)だから相手が振る前に斬っちゃうんですよ。そうすると、早く見えるじゃないですか。振らせる前に斬ってるっていうことがあるし、機先を制するってこともあるし。で、向こうはやることわかっているわけですよ。こう、斬られたら倒れなきゃ。で、明らかに『勝さん、そんな早いの!?』って思いながら、やることはやんないと怒られるから、ちょっと遅れ気味でやることをやるじゃないですか。

(赤江珠緒)はい。

(谷垣健治)で、無理くり倒れてるんですよ。そん時に勝さんはもう刀をしまっているから早く見えるっていうね。だから、早さってやっぱりいろいろあるんですよ。相対的な早さの方が実は賢くて。

(ピエール瀧)斬られる側の人にしてみたら、『僕のアクション終わってないのにもう斬るなんて、ひどーい!』って思って。でも、斬らなきゃ!ってなって。で、もう勝新がチン!ってやっていると、達人に見えるわけですよね。

(谷垣健治)倒れる前にしまっているわっていうね。だから、物理的な早さを求めるよりは、そういう芝居的な、相対的な早さを求めた方が賢いんだって僕は最近になって。先月ぐらいかな?最近になってわかりました。

(赤江珠緒)いや、最近ですね(笑)。でも谷垣さんご自身も、かなりハードなスタントをされてきているわけですよね?

(谷垣健治)結果的にです。だからスタントってね、難しいのはその、難しいスタントほど、みんな気をつけるから結果怪我がないんだけど。しょーもないことでやっぱり怪我とかしますね。

(赤江珠緒)へー!たとえば?たとえば?

(谷垣健治)うーんとね、ドイツでね、こう蹴られて。顎を蹴られて、そのまま背面で1人バックドロップみたいな感じで落ちるやつ、あるじゃないですか。

(ピエール瀧)サマーソルト食らったみたいなやつね。

(谷垣健治)それで、一発目がすごく低くて。ドニー・イェンっていうね、僕の師匠みたいな人がいるんですけど。ドニーがね、チャウワンっていう言うんですけど。その技。『そんな低い落ち方しやがって!』って。で、それで僕がパッて腹立って。『もう俺のスタントマン生涯でいちばん高いチャウワン見せてやる!』って言っちゃって。それで、マスクしてたんですよ。で、空中感覚わかんなくなって、そのままね、まあバックドロップなんだけど、オーバーローテーションっていうか、回りすぎて。

(赤江珠緒)うん。

(谷垣健治)回りすぎて、想像してもらうとわかるんですけど、普通はチャウワンっていう技をやる場合、背面落ちなんで、肩から後頭部の当たりを打つんですね。それが、本当にね、頭のてっぺん打って、それでそのまま気絶したんですよ。で、ドイツの病院に行って、『骨、折れている』って言われたんですよ。気がついたらもうね、2、3時間ぐらいたってたと思うんですよ。気がついたらそういう状態になっていて。『骨、折れている』。頭の骨かと思ったら、どこだと思います?

(赤江珠緒)えっ?でもこう、後ろに倒れていってでしょ?

(谷垣健治)足の親指です。

(赤江珠緒)えっ!?

(谷垣健治)つまり、こう回りすぎて、頭と同時にここのつま先が地面に刺さったんです。

(赤江珠緒)頭を軸に、足がもうグルっと回っちゃって。

(谷垣健治)そうそうそう。そんなフォームになると思わないじゃないですか。

(ピエール瀧)そうか。1/4回転して落ちるつもりが、1/2回転しちゃったんで、クルンって逆になってドーン!って足がおりて・・・

(谷垣健治)でも、面白い形だったんでね、採用っていう(笑)。

(赤江珠緒)採用。その映像は。

(ピエール瀧)そこを使うか、使わないかもあるでしょ?

(谷垣健治)面白いからOK!っていうのがね、僕らの現場はすごく多いんです。

(ピエール瀧)(爆笑)

(赤江珠緒)はー!

(谷垣健治)実はやっぱりその、予想通りに行くと面白くないところ、あるじゃないですか。立ち回りとかって。どうしてもその、予定調和。やればやるほど、慣れてきて。

(ピエール瀧)キレイになってっちゃいますね。

(谷垣健治)キレイになって、息のあった立ち回りって、いま、本当に息のあった立ち回りって、たとえばジャッキーとかジェット・リーがやるくらい息のあった立ち回りと同じ土俵に乗ると僕らはなかなか勝てないですよ。やってる年数がね、役者さん同士も違うから。そこでやっぱり僕らが求めるところってね、息のあわない面白さってあるじゃないですか。本当の試合を見ているような。それを見ると、もしかしたら本当に息のあったプロの立ち回りよりも、本物っぽい。もしかしたら、本当?って思うかもしれないっていうところを、特にるろうに剣心とか追求した感じはありますね。

(ピエール瀧)ああ、ちょっとタイミングをズラす。こぼすというか。そっちの方が生々しくて・・・

(谷垣健治)はい。芝居もそっちの方が面白くなること、ありますよ。

(ピエール瀧)だいぶ、何テイクもやって、後半になってきちゃうとセリフも全部わかってるんで。キレイにはまとまるんだけど、監督来て、『なんかつまんない』って言うんですよね(笑)。そういうのって。

(赤江珠緒)ああ、そうなんだ。キレイに流れすぎてるっていうのも。

(谷垣健治)セリフはね、言えば言うほど、やっぱり決め事になって腐っていくからね。やっぱり。

(赤江珠緒)ああ、そうなんですね。

(谷垣健治)で、スタッフも、『このセリフまで、はい、ここまで埋まりました』って言い方するでしょ?あれ、失礼な言い方ですよね。本当ね。

(ピエール瀧)(笑)

(赤江珠緒)そうか。でもその俳優さんによっては、ここまで体が柔らかくないとできないとかってこともあるじゃないですか。それはその場その場で、じゃあこう変えましょうとか?

(谷垣健治)はい。それはもう、柔らかい立ち回りを作らなきゃいいんです。

(赤江珠緒)はー。それでもう、その人なりに、いちばんかっこよく見えるのを考えたり?

(谷垣健治)僕たちはその、格闘技の試合に出るわけじゃないし。なにかの美しさを競う試合に出るわけでもないんで。右と左、やっぱり利き手とか利き足、あるじゃないですか。じゃあ利き足の得意な方を伸ばしてあげればよくて。苦手な方はもう、見せなきゃいいっていうことですよ。得意なものをいかに?というね。

(ピエール瀧)でもまあ、そうやって言ってるでしょ?赤江さんもそうやって言って。で、こういう話になっているけど。まあ、僕らみたいな素人が来るわけで、基本、素人相手にしてますから。いま言っていた、ちょっとたかぶったりする感じとか、面白いですよねって言ってるのを、with 安全じゃなきゃダメなの。絶対安全が条件なんで。それでこっちが乗りすぎちゃって、役者さんが怪我しちゃいましたじゃ済まないんですよ。この人たち。

(赤江珠緒)ああ、それはそうですね。

(ピエール瀧)だから、そこがすごいっすよね。

(赤江珠緒)それをお仕事にされてるんですもんね。

(谷垣健治)そこの読みは、やっぱりありますよね。

(赤江珠緒)ああ、そっかー。

(ピエール瀧)そうなのよ、だから。『これでちょっと瀧さんも興奮しすぎちゃって、怪我しちゃいましたね、あはは』じゃ済まないんです。

(谷垣健治)そうそう。そこがね、僕、香港でスタントマンやった時に、ちょっと目からウロコだったのは、香港のスタントマンってね、もう信じられないぐらいパッド仕込むんですよ。もうなんか、お前、亀か?っていうぐらいパッドをこう、着込んでて。

(ピエール瀧)肘、膝、全部ね。

(谷垣健治)そうなんですよ。で、このへんのね、マイクの本当に固いやつから、全部入れていて。それとかね、刀とかでも日本だとやっぱりどうしてもね、『今回は全部本物でいきました』とか。やっぱり精神論としてパッドとかも、『パッドつけるか?』『いや、いらないっす』っていうスタントマンの時代があったんだけど。香港はね、やっぱりそれがね、理屈としてガッチガチにやるんですよ。

(ピエール瀧)うん。

(谷垣健治)そのかわり、思いっきり行くっていう。そんだけやったからには、すげーことやるだろうなっていうことがあるわけで。武器も本物だったらやっぱり避けれないじゃないですか。やる方も。『かかってきて。俺、絶対受けるから』っつったって、そんなもん、かかれないですよ。だから、上手く偽物だとか、上手く安全をやりながら、つまり準備をね、臆病にやっておいて、本番パーン!って大胆にやるっていうのが、やっぱり画に見える撮れ高としてはいいなと思いました。

(ピエール瀧)ああ、結局。そうか。上がりがよければ。だって、そのフィルムに焼くためにやってるわけですからね。

(赤江珠緒)実際に仕留めるわけじゃないですからね。

(谷垣健治)そうですよ。だから本当に、いまはね、本身なんか使わないけど。たとえばジュラとかでですよ、瀧さんみたいな人にね、『俺、絶対避けるから、かかってきなよ』って言われたって、もうかかれないですよ。

(赤江珠緒)たしかにね。

(谷垣健治)それで、なんかちょっとね、済まないじゃないですか。だから、ちょっと引いたような感じでやるよりは、思いっきり振れるやつで、思いっきりやってもらった方がいいと。で、役者さんももうね、たとえばハイヒールだって、そんなのアクションをやっている最中はわかんないんだから、もうペッタンコのやつでいいし。香港だと、ジャッキーなんかも革靴なんか履いていたって、普通にデッキシューズとか、そういうやつに色を塗って、それで動きますからね。わかんないですって。

(赤江珠緒)あ、色を塗ってヒールっぽく見せたりとか?

(ピエール瀧)とか、あれだ。革靴っぽく見せたりとか。

(谷垣健治)革靴っぽく見せたり。僕、足をね、『SPL』っていう映画で折ったことがあるんですけど。まだ走るシーン、あったんですよ。でも俺、走んなくて済むと思ったんだけども、こうやって巻いている石膏のところに、アニエスベーの赤い革靴の柄を書かれてね。『いいから走れ!』って言われてね。

(赤江珠緒)(爆笑)

(ピエール瀧)引き画だったらわかりゃしねーから!って(笑)。

(谷垣健治)わからないから!って。

(ピエール瀧)本当にわかんねーんだな!っていう(笑)。

(赤江珠緒)ああ、そう。

(谷垣健治)でも、そういうことです。やっぱり。

(赤江珠緒)うわー!さすがですね。

(谷垣健治)だから結局、目に見えるものが全てっていうことが香港映画ではやっぱり大事だったんで。どうしても、日本の現場とかでお祭りになることあるじゃないですか。役者さんが頑張ったから、『すげー!すっげーっすよ!』って。で、撮れ高を見たら、『俺、なんでこれでOK出したんだろう?』っていうことがやっぱりあるわけですよ。その、お祭りムード。

(ピエール瀧)現場のね。

(谷垣健治)現場祭りで。で、あとでそれがぜんぜん良くなかった時、あるんで。やっぱり香港人はそのへんがね、シビアというか。

(赤江珠緒)映画は虚構の中の・・・

(谷垣健治)虚構の中でいかに嘘をつくか?っていう。もう現場のことなんかどっちでもいいから、お客がどう思うか?っていうことを割と。割とそこが大きかったですね。

(赤江珠緒)そうか。うわー、時間が結構きてしまいました。まだまだちょっと伺いたいことがあるんですが・・・

(ピエール瀧)聞きたいことの1/3ぐらいしか(笑)。

(赤江珠緒)そう。谷垣さんがスタンとコーディネーターをつとめたドニー・イェンさんが映画が公開されると。

(谷垣健治)もう、ここですか?

(ピエール瀧)締めなんです。

(谷垣健治)早えー!

(赤江珠緒)これが『スペシャルID 特殊身分』。これはどんな映画ですか?

(谷垣健治)すごい映画です。ええとね、『SPL』から『導火線』から、現代格闘技路線って。MMAっていうね、そのへんの路線を映画的にどう、フィルムランゲージで落としこんだらどうなるか?っていうのをこの映画で表現したつもりなんで、見てください。



(赤江珠緒)新宿武蔵野館ほか、全国順次ロードショー。

(谷垣健治)それから3月20日、ジャパンアクションアワードがありますんで。お願いします。

(赤江珠緒)世界最強のアクションスター、ドニー・イェンとるろうに剣心のアクションチームがタッグを組んだということで。谷垣さん、ぜんぜん緊張されてないですよ。

(ピエール瀧)(笑)

(谷垣健治)緊張するからこんだけしゃべるんですから!

(赤江珠緒)またぜひ、お越しください。

(谷垣健治)はい。

(ピエール瀧)そうですよね・・・

(生島ヒロシ)(スタジオに乱入して)ヒョー!フォー!

(赤江珠緒)うわー!ヒロシさんが、また。えっ、だから時間がないんだってば!(笑)。まだ放送してるのに(笑)。谷垣健治さんでした。ありがとうございました。

(ピエール瀧)ありがとうございました。

(谷垣健治)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>