町山智浩 2015年 第87回アカデミー賞の結果を振り返る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で2015年の第87回アカデミー賞受賞作品、受賞者を振り返り。受賞理由の考察や、事前予想との答え合わせなどをしていました。

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(赤江珠緒)アカデミー賞関連のお仕事で忙しいと。

(町山智浩)アカデミー賞。はい。外しました。結構・・・

(山里亮太)いや、珍しく。

(赤江珠緒)『バードマン』がね、すごかったですね。

(町山智浩)バードマンが、そう。がっつりとっていて。監督賞はとっちゃうし、作品もとっちゃうしね。びっくりしましたね。でも、バードマンって日本でも作れるような話なんですけどね。

(赤江珠緒)(笑)

(山里亮太)あまり納得してない?

(町山智浩)だって昔、特撮ヒーローだった俳優さんがその後、要するにジャリ番っていうんですよね。子ども向けの番組って。『ジャリ番の俳優だ』ってバカにされて、なかなか俳優として大成しないんで、俳優としての力を示すためにブロードウェイで芝居をしたっていう話なんですよ。

(赤江珠緒)ほう。

(町山智浩)なぜ日本でいままで誰も作らなかったか?いっぱいいますよ。そんなの。昔、ヒーローだったけど、その後、当たりのない人。名前は出しませんが。俳優としてまともに思われてないような人たちのドラマとかね。本当にね、日本でやるべきことだと思うんですけどね。

(山里亮太)だからそんなに賞は関わってこないだろうと思ったら・・・

(町山智浩)そう。がっつりとったですね。

(赤江珠緒)でも、町山さんおっしゃってたじゃないですか。なんかワンカットで撮った風になっているのが映像として面白かったっていう。

(町山智浩)まあ、面白いっていうかすごい大変な作業ですよ。だからいちばんすごいのは、エドワード・ノートンっていう俳優さんが、この中でどうしようもないスケベな俳優の役で出てるんですけども。彼は、なんかアレが自慢でですね。楽屋でずっと全裸なんですよ。

(赤江・山里)えっ?

(町山智浩)このバードマンっていう映画の中でね。で、ワンカットで撮ってるんですけど、彼が全裸のまま楽屋を歩きまわるのを、カメラが追っかけるんですよ。でも、見えないんですよ。アレが。上手く、こういうペットボトルとか、こういったものがですね、電話とかいろんなものが微妙に股間を隠し続けるんですよ。

(赤江珠緒)ほー!

(町山智浩)で、カメラが常に動いてて、彼も動いているんで、常にカメラが彼を追っかけるんですけど、その股間のところにはかならず障害物があるようになっているんです。

(赤江珠緒)すごい!

(町山智浩)ものすごい技術で。これでアカデミー撮影賞をとってるんですよ。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)股間をよく隠しましたで賞ですね。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)すごいなと思って。これはすごいなと思いましたね。

(赤江珠緒)そうなんだ。でも、それはたしかにすごいですね。ちょっとのズレでもあればね。

(町山智浩)で、昔、『座頭市』とかで勝新太郎ってよくね、風呂場で・・・風呂に入っていると武器を持ってない状態だから。時代劇で。そこで敵が襲ってきて、うわーっ!と敵が襲撃してくるところを風呂場でやっつけるっていうシーンが結構多いんですよ。勝新太郎さんの映画って。それもね、よく隠してるんですよ。

(赤江珠緒)(笑)

(町山智浩)すごいな!って思う。『えっ、映りそう!』って思うと、なんかたまたま何かがあるっていう。木の枝があるとかで。すごい隠してるんですよ。これはすごい。勝新太郎の影響がこれ、バードマンに影響を与えて・・・ねえよ!与えてねえよ!

(赤江・山里)(笑)

(山里亮太)途中で気づきましたね。

(町山智浩)いやー、バードマンのやっぱり股間隠しで作品賞も監督賞もいったかな?っていう。

(山里亮太)いやいや(笑)。町山さん、それはさすがに・・・

(赤江珠緒)それだけじゃないでしょ?

(山里亮太)おっしゃってましたもんね。選ぶ人たちにこう、いろいろあるあるがあるというか。悲哀が感じるからっていう。

(町山智浩)そうそう。やっぱり俳優の人たちが投票者なんで。アカデミー賞っていうのは。16%くらいが俳優さんなんですよ。で、やっぱりマイケル・キートンがですね、パンツ一丁で、60いくつで駆けずり回ってですね、がんばっているんで。やっぱり同情を誘ったりしたと思うんですね。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)で、聞いたらその、ワンテイクっていうんですけど。1回撮りでやっているわけじゃなくて、パンツ一丁でタイムズ・スクエアっていうニューヨークのど真ん中の、いちばんの繁華街を走り回るっていうシーンも、何回も何回も録り直ししているらしいんですよ。実際は。

(赤江・山里)へー!

(山里亮太)大変だったろうなー!

(町山智浩)普通、1回だよね(笑)。そんなの、恥ずかしいから。でも、何回もやってるんですよ。だからそういうことで、まあパンツ一丁でがんばりましたで賞も入っていると思いますけども。

(赤江珠緒)そう言っちゃうと本当、学校の賞みたいな。学級の賞みたいになっちゃう(笑)。

(町山智浩)でも、マイケル・キートンは賞をとれなかったのがね、ちょっと辛かったですよね。エディ・レッドメインっていう彼がホーキング博士の役を演じた『博士と彼女のセオリー』でとったんですけどね。

(赤江珠緒)主演男優賞。

(町山智浩)まあ、ホーキング博士をもう完璧にコピーしてるんで。それも、ハタチぐらいの頃から50ぐらいまでを1人で演じてるんですよね。これはやっぱりすごい!ということで。

(山里亮太)文句なしと。

(町山智浩)まあ、化けたで賞みたいな感じですね。はい。で、視覚効果賞っていう特撮賞を『インターステラー』がとったのも、これもすごかった。

(赤江珠緒)あ、これね。

(山里亮太)『これがとったらすごいぞ』っておっしゃってましたね。

(町山智浩)だって、これ昔の、僕が子どもの頃に見ていたウルトラマンとかの特撮技術を使っているんですよ。

(山里亮太)CGとかじゃないんですよね。

(町山智浩)CGじゃないんですよ。宇宙船がこう、ガーッ!って揺れていて、周りでその風景とか流れていくっていうのは、風景のところを大きいスクリーンに映写して。風景を。その前で、実物大の宇宙船をガタガタガタッて移動して撮ってるだけなんですよ。

(赤江・山里)はー!

(町山智浩)昔の、40年前の撮影技術を使っているんですよ。

(山里亮太)監督が、そういうのにこだわるって。

(町山智浩)そう。監督が『俺は子どもの頃に見た特撮映画をやりたいんだ!CGとか俺、大っ嫌いだから』って、全部なしにしちゃったんです。

(赤江珠緒)へー!昔の遊園地のマジックハウスみたいな。

(町山智浩)マジックハウス(笑)。そうそう。昔の、要するにウルトラマンとか円谷とかゴジラの特撮技術を現代のやり方で撮っていて。しかも、フィルムで撮っているんですよ。それが賞をとったから、もうこれからCGなしですね。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)『CGダセー!』みたいな話になって。『全部、もうぬいぐるみで行け!』とかね。

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)そういう時代に入っていいんじゃないかな?と。

(赤江珠緒)そうですか。視覚効果賞はインターステラーということでね。

(町山智浩)そういう感じで。あと、『セッション』が結構賞をとったんですね。

(赤江珠緒)あの、バンドの。

(町山智浩)『ウィップラッシュ(Wiprush)』っていうタイトルでここでは紹介しましたが。スパルタの。ジャズのドラマーの男の子を、すごく鬼コーチが、殿山泰司さんそっくりの鬼コーチが徹底的にいじめ抜くっていう映画なんですけども。これがたくさん賞をとったのはすごいなと思いますね。で、あれ制作費3億円なんですよ。

(赤江珠緒)へー!そんな少なく。

(町山智浩)少ないですよ。日本映画より少ないんですよ。下手な。

(山里亮太)普通、何十億って言いますもんね。あっちの。

(町山智浩)そう。それで、これだけの映画を作っちゃったから。だから要するに『ハリウッドには予算で勝てねえよ』とかよく言うんですよ。みんな。もう、そんなことねーよ!3億円で向こうはやってるよっていうね。これはもう、みんな誰も言い訳できなくなったなって思いますね。

(山里亮太)なるほど。

(町山智浩)とにかく、エキサイティングなクライマックスがあって、みんなが燃えれば勝ちだから!っていうね。まあ、すっごいですよ。セッションは。

(赤江珠緒)そうですか。

(町山智浩)という感じですけど。

(赤江珠緒)あと、『6才のボクが…』。これが意外にあんまりとらなかったっていうのが・・・

(町山智浩)これがね・・・まあ、やっぱり地味だったんでしょうね(笑)。

(赤江珠緒)ああ、そうですか。

(町山智浩)だから、そっちも制作費4億円ぐらいなんだけども。やっぱりセッションのガツンと行け!みたいなところには勝てないのかな?と思いましたね。映画っていうのは見てスカッとしないとダメなのか?っていうところもちょっとあったですね。

(赤江珠緒)うーん。

(町山智浩)まあ、映画としてはいいんだけど。しっとりと。っていうところもあるんですが。

(赤江珠緒)割と日常をっていう感じだったんですか。描いているのは。

(町山智浩)そうそうそう。でも、バードマンとセッションの最後のイケイケ感っていうには勝てなかったのかな?と。ガツーン!というのが必要なのかな?という気はしましたね。

(赤江珠緒)へー。昨日、町山さんは生でね、放送されているのをご覧になりながら。アカデミー賞を。中継されてましたもんね。

(町山智浩)はいはい(笑)。他局なんで、あんまりそんなとこ細かく言わなくても・・・はい。

(赤江珠緒)それはどんな感じなんですか?ハラハラしながら一緒に?

(町山智浩)いや、まあ予想がね、どんどん違っていくのは、だから面白いっていうのはあったんですけど。僕がいちばん気にしていたのは、ご近所に住まわれている堤大介監督が『ダムキーパー』でとればいいなと思いながら見てて、とれなかったりとか。まあ、『かぐや姫』がね、取れなかったりして。それでどっちもカネをめちゃくちゃかけてるディズニーがとりやがって!バカヤロー!と思いましたけどね。

(赤江珠緒)あっ、長編アニメーション。

(町山智浩)バカヤロー!とはっきり言ってしまいました。はい。

(赤江珠緒)あ、そん中で?バカヤロー!って言っちゃったの?

(町山智浩)いやいや、そこでは言ってないですけども。

(山里亮太)いま、ここではっきりと。

(町山智浩)ここで言ってますよ。

(山里亮太)外れた悔しさから来るものもありますよ。

(町山智浩)いやいや、ダムキーパーって本当にいい話しでね。闇の力が押し寄せてくるのをダムで抑えている子ブタちゃんの話なんですよ。その、闇が迫っているんですよ。でも、その町に入らないようにダムを管理しているのが子ブタちゃんなんですよ。でも、その子ブタちゃんが『ブタだ!ブタだ!』っていじめられるんですよ。学校で。『ブタ野郎!』って言われるんですよ。

(赤江珠緒)うん、うん。

(町山智浩)で、そうすると、どんどん闇が大きくなって迫ってくるんですよ。

(山里亮太)自分の中の闇がそのダムの底に?

(町山智浩)素晴らしい解釈ですね!素晴らしいですね。

(赤江珠緒)合ってる?

(町山智浩)そういうね、非常に深い話を手描きで。その堤大介さんが1コマ1コマ手描きで色を塗っているんですよ。だから、CGのようでいて、CGでないっていうね。本当に手作り感あふれる素晴らしい作品がダムキーパーなんですけどね。ぜひとっていただきたかったと思いますがね。



(赤江珠緒)へー。

(山里亮太)あと、このタイミングで言うのもあれなんですが。僕、町山さんにおすすめしてもらった『アメリカン・スナイパー』、見てきましたけど。

[関連リンク]町山智浩 クリント・イーストウッド監督 アメリカン・スナイパーを語る

(町山智浩)あっ、どうでした?

(山里亮太)いやー、心がズシーンとなって映画館から出てきました。

(町山智浩)最後あれ、音楽がないんですよ。

(山里亮太)そうなんですよ。エンドロール、すごいですよね。

(町山智浩)そう。ドーン!とね、びっくりさせて終わるんですよ。

(赤江珠緒)ああ、じゃあもう、観客としてはドーン!と突き放される感じ?

(町山智浩)突き放される感じ。

(山里亮太)でも、その時間がすごいいろんなこと考えるの。ずっと。

(町山智浩)なんでこんなことになっちゃったんだろう?みたいなことですよね。いま、アメリカでは大論争になっているんですけどね。すごく。そのへんはね、『映画秘宝』っていう雑誌が出まして。僕が創刊した雑誌なんですが。それの新刊で、いまちょうど書店に出ている号で、クリント・イーストウッドに『アメリカン・スナイパー』についていろいろ聞いて。それの記事が出ています。すごい長い記事で。


(赤江珠緒)ロングインタビュー。

(町山智浩)これ、アメリカでは要するにイラク戦争を賛美した映画であるってアメリカン・スナイパーは言われてるんですよ。で、それに対していわゆる左翼の側が、『アメリカのやった犯罪であるイラク戦争を賛美しているアメリカン・スナイパーはよくない!』って怒っていて。それに対して、いわゆる右翼の側の人は、『この映画は愛国的な映画なんだから最高なんだ!』って。その人たちが争っているんですけど。どっちもバカですから。

(赤江珠緒)はー。

(町山智浩)そんな映画じゃないじゃないですか。見ると。

(山里亮太)違いますね。もう。

(町山智浩)愛国者がイラク戦争に行ってひどいことになって、心が破壊されてしまうっていう話なんですよ。罪を背負わされてしまって。っていう話なのに、どっちもわかっていないんで。本当にアメリカ人もどこを見てるんだろう?というのをイーストウッド監督自身が、私はこの映画でなにを言おうとしたか?っていうのをはっきり、聞いてきました。

(赤江珠緒)本当だ。すごい長いインタビューで。ちゃんと映画講義1時間目、2時間目とか。『人殺しっていうのは地獄だ』っていうね。

(町山智浩)イーストウッド監督自身の言葉でね、読んでいただきたいんで。この映画秘宝をリスナーの方々にプレゼントします!

(赤江珠緒)ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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