玉袋筋太郎・春日太一 新宿ミラノ座の思い出を語る

玉袋筋太郎・春日太一 新宿ミラノ座の思い出を語る たまむすび

玉袋筋太郎さんと春日太一さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、2014年12月末で閉館する新宿の映画館、ミラノ座の思い出について語り合っていました。

(小林悠)今日は、こちらのニュースです。

(玉袋筋太郎)さらば!そして、ありがとう!俺の青春、新宿ミラノ座!

(小林悠)新宿歌舞伎町の映画館、新宿ミラノ座が12月31日をもって閉館。58年の歴史に幕を下ろします。ミラノ座が開業したのは1956年。昭和31年です。座席数1064席。縦8メートル、横16メートルの巨大スクリーンを持つ、日本最大級の映画館として、洋画を中心に大作・話題作を上映。82年12月に公開された『E.T.』には連日お客さんが長い列を作り、1ヶ月でおよそ19万人を動員しました。しかし、時代の移り変わりととに複数のスクリーンを有するシネコンが主流となる中、ミラノ座は徐々に観客数が減り、また建物の老朽化や歌舞伎町の再開発もあり、閉館が決定。今月20日からは過去に大ヒットした作品を再上映するさよなら興行『新宿ミラノ座より愛をこめて ラストショー』が開催され、多くの映画ファン、そしてミラノ座ファンがその別れを惜しんでいます。そして、ここでゲストのご紹介です。時代劇研究科の春日太一さんです。こんにちは。

(春日太一)どうも、よろしくお願いいたします。

(玉袋筋太郎)よろしくお願いします。春日先生、徹夜明け。

(春日太一)徹夜明けでございます。

(小林悠)お疲れで。

(玉袋筋太郎)もう春日先生がいま閉館しちゃうんじゃないか?って。

(春日太一)もうボロボロですよ。老朽化してますよ。

(玉袋筋太郎)30代半ばなのにね(笑)。

(春日太一)相当ないま、老朽化が起きてますね(笑)。大変ですよ。

(玉袋筋太郎)ミラノ座状態ですよ。

(春日太一)建て替えないとマズいです。これから(笑)。

(玉袋・小林)(笑)

(玉袋筋太郎)寝ちゃうんじゃないか?という。ハラハラしてますよ。

(春日太一)いや、しゃべりながら寝る自信ありますよ。これは。油断すると。

(小林悠)しっかりと、よろしくお願いしますよ(笑)。

(玉袋筋太郎)まあ、でもね、新宿ミラノ座閉館っていうね、時代劇とは関係なくなっちゃうのかもしれないですけど。同じ新宿生まれっていうか、育ちとしては。うん。

(春日太一)僕にとっては思い出しかないというか。思い出の塊みたいな映画館で。子どもの頃の遊び場ですから。特別な映画館というよりは、本当に遊び場としてあの一角はずっといて。その中でもやっぱりミラノ座って、よく行っていたところだったのでね。寂しいですよ。あれはもう、本当に。

(玉袋筋太郎)やっぱりミラノ座があって、その対面にね、新宿プラザがあって。この2つね、両横綱。これが良かったんだな、うん!

(春日太一)その間に、グランドオデヲンとね。

(玉袋筋太郎)アカデミーとか。

(春日太一)トーアとがあって。あの一角で。で、どの映画館でどれをやるんだろう?みたいなので。ちょっと高級感が違うんですよね。いちばん高級なのが、プラザなんです。コマ劇場の。

(小林悠)そうなんですか?

(玉袋筋太郎)そう。プラザ。もう赤絨毯で。

(春日太一)絨毯があって。両側に分かれて入っていくっていう。

(玉袋筋太郎)そうそう!これが良かったんだよ。

(春日太一)で、ミラノ座はちょっと庶民派なんですよね。それで言うと。だからイメージとしてはなんか、だからちょうど、僕が初めてミラノ座に行ったのが、『グーニーズ』なんですよ。85年の。

(玉袋筋太郎)出ました!今日もグーニーズの帽子。

(春日太一)それでグーニーズの帽子かぶってるんですけど。その時に、ミラノ座はグーニーズで、向かい側のプラザが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』やってたんですよ。同日公開で。だからね、そういうイメージですよね。ちょうどその、ちょいB級感があって娯楽性の高いミラノ座と、本当に超A級娯楽のプラザみたいな雰囲気の気持ちでしたよ。だから、『ターミネーター2』とかはプラザなんですよ。

(玉袋筋太郎)そう。でも、中にはプラザも失敗作で『メガフォース』やっちゃったりとかね。メガフォースでコケたりすることもある。うん。この張りあいですよ。

(春日太一)ありましたね。

(玉袋筋太郎)どっち行こう?どっち行こう?どっちの映画を見に行こう?なんつってさ。俺は初めて見たのが『ジョーズ』だからね。

(春日太一)あー!

(小林悠)そうだ。ご家族でってね、言ってましたね。

(玉袋筋太郎)ジョーズなの。小学校2年かそこらの、冬だったよね。うん。だからそれでね、まあ今回ほら、さよならってことで。31日まで上映した映画、結構やるんだけど。そこにジョーズが入ってないっていうのがね、寂しい。

(春日太一)ああ、そうなんですか。寂しいですね。

(玉袋筋太郎)もう最後は31日。E.T.で終わりだからね。E.T.ですよ。

(小林悠)ああ、なんかね、E.T.でさよならってちょっと寂しい感じ、しません?

(玉袋筋太郎)でも、上手いのかな?うん。やっぱり宇宙に帰ってっちゃうからね。

(小林悠)お別れだなっていう。

(玉袋筋太郎)まあ、その間に『時をかける少女』とかね、やってたんだよ。

(春日太一)角川映画はあそこ、やってたんですよね。

(玉袋筋太郎)角川映画もやってる。そうそうそう。

(春日太一)僕、『天と地と』行きましたから。あそこで。

(玉袋筋太郎)天と地と(笑)。また、チョイスするねー、天と地と。

(春日太一)いや、本当ね、初日にあれ、毘沙門天像が前売り券についてくるっていうんで。

(小林悠)ええーっ?フィギュアですか?

(玉袋筋太郎)昔はあったんだよ。

(春日太一)まあ、小さなキーホルダーがついてきて。で、上杉謙信の話なので、毘沙門天像がついてくるっていうんで。で、上杉謙信ファンだったんで、ほしくて買ったんですよ。そしたらチャチなあれでしたけど。すっごい前売りが売れたみたいで、本当はね、角川映画は地下にある新宿東急でかけるはずだったのが、初日急遽ミラノ座でかけることになったんです。

(玉袋筋太郎)かけること、あるんだよ。

(小林悠)そんなこと、あるんですか?

(玉袋筋太郎)お客さんが多くなっちゃって。そこじゃあもう回転できねーから、じゃあ上のミラノ座でやっちまおうとか。

(春日太一)で、ミラノ座行って並んでね。こっちでもね、大変でしたよ。子ども心に、初日並んで行ったらね、内容が内容だったんで。『ええーっ!?』っていう。

(玉袋・小林)(笑)

(玉袋筋太郎)まさに、天と地と。

(春日太一)天と地と、本当行くまでのテンションの高さと・・・

(玉袋筋太郎)天!出たら、地!

(春日太一)そう。なにかあるはずだと思って見てたのに、なんでしょうね?

(玉袋筋太郎)(笑)

(春日太一)もう、驚きの映画でしたけども。

(玉袋筋太郎)主役降板もあったしね。天と地とっつーのは。いや、だけどね、昔はやっぱね、映画館の窓口で特別鑑賞券を買うのがまたね、良かったんです。オマケがついてたから。

(小林悠)そうですよね。いまもたまにありますけどね。

(玉袋筋太郎)まあ、あるけどね。それなんだよ。そのワクワク感。チラシも何枚ももらっちゃってさ。そういったものを、クリアファイルに入れて。見せびらかしてたりしてたわけですよ。そういった文化がなくなって。まあ、シネコンも素晴らしいけどね。見やすいんだけどね。やっぱりそういう記憶が入ってるじゃない。

(春日太一)ありますよ。あの映画館でこれを見たっていうのがありますから。だから、映画館とともに思い出があるんですよね。だから、あん時に・・・特にやっぱりミラノ座は印象深くて。初めて行ったのがグーニーズだったんですけど、とにかく面白すぎて。両親に連れられて行ったんですけど、みんなワーワー騒いでいたら、全員荷物を忘れて行っちゃったんですよ。

(小林悠)えー!そんなの、あります?

(玉袋筋太郎)そういうサザエさん的エピソード(笑)。

(春日太一)荷物、全部忘れて行っちゃって。

(小林悠)家族全員ですか?

(春日太一)家族全員荷物忘れて。で、かならずミラノ座行ったら、横にあそこ、レストラン街もついてるんですね。で、さん亭っていうとんかつ屋があるんですけど。そこに行くことにしてたんです。で、とんかつ屋行ったら、全員荷物がないから。『あっ、ヤバい!』って言って。で、いまと違って、途中から入れるじゃないですか。だから途中からワーッて入っていったら、荷物置いてあるから誰も座ってないもんで。荷物だけ回収して。

(玉袋筋太郎)グーニーズの続編ですよ!家族で。

(小林悠)(笑)

(春日太一)そのイメージがすごくあって。で、予告編で『ロッキー4』やってたんですよ。

(玉袋筋太郎)ロッキーもやってたんだよ。

(春日太一)で、ロッキー4見に行ってね。そっからだから、絶えずそのミラノ座で予告編やったものをまた見に行くみたいな。あれがあったせいでね、ジョン・ローンの『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』とかね。

(玉袋筋太郎)ずっこけちゃったもんね。

(春日太一)『死霊のえじき』とかね。行きましたよ。

(玉袋筋太郎)まあ当時ね、やっぱり映画館でかかっていた映画館ならではのCMっつーのも良かったんだよ。コマーシャルっつーのも。新宿プラザだったら、オスローバッティングセンターとかさ。サウナレインボー。

(春日太一)サウナレインボーはあっちのね、伊勢丹の方。

(玉袋筋太郎)伊勢丹の方か。

(小林悠)よく覚えてますね。

(春日太一)ホテルシャトンとね。

(玉袋筋太郎)ホテルシャトン!で、焼肉の長春館。スーパーエニイとかさ。

(春日太一)スーパーエニイ!

(玉袋筋太郎)歌舞伎町にあったんだよ。

(春日太一)あれもプラザのね。スーパーエニイ。『なんでも揃います!』ってね。

(玉袋筋太郎)(笑)

(小林悠)知らない(笑)。

(玉袋筋太郎)ドン・キホーテが出来る前は、スーパーエニイだったんですよ!

(春日太一)そう。24時間やっていた。

(玉袋筋太郎)24時間。

(小林悠)そうだったんですか。あの時から。先駆けですね。

(玉袋筋太郎)先駆け。そういったものがなくなって。

(春日太一)新宿ローカルのCMでしたよね。

(玉袋筋太郎)ねえ。ほら。ホテルシャトンなんて久々に聞いたよ!

(春日太一)そう。あの、気まずかったですよね。横にグランドオデヲンっていうもう1個、建物があって。そこんところでやると、かならずホテルシャトン、やったんですよ。で、親に連れられて『レッド・オクトーバーを追え!』とか行くわけですよ。そうすると、ホテルシャトンのCMで『恋人たちが素敵な時間を』とか(笑)。

(玉袋筋太郎)意味、わかんねーからね(笑)。

(小林悠)なんなんだろう?って思いますね。子どもは。

(春日太一)その瞬間だけキッとね、親の視線がビッとなる感じが。

(玉袋筋太郎)ミラノ座だけでこれだけ話ひろがっちゃうんだよ。

(小林悠)本当だ(笑)。

(春日太一)あの一角でどれだけ楽しんだかって、ありますね。

(玉袋筋太郎)そうだね。ちょっと外れたところに、新宿京王っつーのがあってさ。

(小林悠)それはなんですか?

(玉袋筋太郎)映画館だよ。で、映画の休憩時間にくじ引きがあってよ。くじ引きでこうやって当たると、なんか宝石みたいのもらえるの。当たるの。で、宝石だけもらってもダメだから、その土台みたいなのを別料金で作んなきゃいけない。

(小林悠)あ、買わなきゃいけないんですか。うわー、新しい商法だ。

(玉袋筋太郎)そういったものがあったんですよ!アイゴー!映画館が。俺もそうだ。ジョーズ見に行った時、ジョーズのバッグを買ってもらって。

(小林悠)えっ?サメの形の?

(玉袋筋太郎)じゃない。じゃないんだけど、ジョーズのロゴが入っているバッグ。で、あれ持って、神宮球場に野球見に行ったら、やっぱり置き引きにあったんだよね。それ。やっぱりそういったね、思い出が全て詰まっているっていう。しょうがないんだよね。ミラノボウル。上のね、ボウリング場。

(春日太一)そう。だから予告編でまた楽しみになって行くっていうのがあって。で、スタローンの映画をとにかくたくさんやっていたんですよ。ミラノ座って。それがあってね、『デッドフォール』っていうしょうもない映画があるんですけどね。スタローンの。スタローンと、カート・ラッセルがやってるんですけど。

(玉袋筋太郎)デッドフォール。

(春日太一)で、当時僕、スタローンの大ファンで。スタローン信者みたいなところがあって。それとカート・ラッセルが組むって聞いたら・・・

(玉袋筋太郎)最高じゃないですか。

(春日太一)で、これはとんでもない!二大スター共演だから、これは大ヒットするに決まっている!って勝手に思っちゃって。それで、初日に、これは初日はとんでもなく混むだろうから、指定席買っちゃったんですよ。いま、指定席って普通ですけど、当時指定席って2500円かな?

(玉袋筋太郎)高いんです。2500円。

(春日太一)だから子ども心にすごい・・・で、指定席になると、白いシートの席なんですよ。

(小林悠)あ、そこだけ覆われているわけですね。

(春日太一)白いシートの席で。で、2500円前売りで買って、行ったんですよ。デッドフォール見に、初日。で、行ったらですよ、15人くらいしかいなくて。お客さん。

(玉袋・小林)(笑)

(春日太一)本当にいなくて。

(玉袋筋太郎)わかるわかる(笑)。まさにデッドフォール!天と地ととデッドフォールって(笑)。

(春日太一)デッドフォールでね。で、指定席に1人で座ってるんです。子どもが。そしたら、掃除のおばちゃんが来て。『ここは指定席から座っちゃダメだよ』って。

(小林悠)(笑)

(春日太一)で、『俺、指定席ですよ』って。

(小林悠)そんな思い出いっぱい(笑)。春日太一さん、ありがとうございました。

(玉袋筋太郎)ありがとう!ミラノ座!春日さん、ありがとう!

(小林悠)ありがとうございました。

<書き起こしおわり>

※追記 2015年1月9日のTBSラジオ『たまむすび』の中で玉袋筋太郎さんがミラノ座最後の上映に行った際の様子を話していました。

(小林悠)あの玉さん、年末と言えば・・・

(玉袋筋太郎)そうなんだよ。新宿ミラノ座っていう映画館が58年の歴史を閉じたわけですよ。31日。最後の回。『E.T.』が上映されるんだけど。まあ、ミラノ座でいちばんお客が入った映画だけど。見に行ったんだよ。

(小林悠)行けたんですね。

(玉袋筋太郎)二日酔いだったけどさ、行かなきゃ!っつって。行ったらさ、ものすごい人で。

(小林悠)あ、もう行列。

(玉袋筋太郎)そうそう。だから建物をグルッと回っちゃってさ。

(小林悠)そんな光景、見ないですよ。最近。

(玉袋筋太郎)これ、座れねーなと思ったんだけど。まあ、最後尾に並んで。どうにか入ってさ。したらもう満席で。通路でしか見れなかったんだけど。

(小林悠)立つんですか?

(玉袋筋太郎)俺、通路座って見た。

(小林悠)あ、それいい!体育座りで。

(玉袋筋太郎)体育座りで見たけどね。やっぱり映画館が終わっていくっつーのはなんか寂しいもんでね。うん。で、俺の通路の前に座ってんのがさ、子どもで。小学校1年ぐらいのね、男の子と女の子がお母さんに連れられて来てるんだよ。

(小林悠)ええ。

(玉袋筋太郎)その子がたぶん生まれて初めてE.T.を見るんだけど。最初怖がってるんだけどさ、うわーっ!っと。自転車が飛ぶところとかさ、キャッキャキャッキャ言ってるわけ。そういうの見るとさ、うん。そんな時代もあったな、なんていうことで。

(小林悠)自分と重ね合わせる部分もあったりして。

(玉袋筋太郎)そうだよ。それでいちばん最後だからって、入場の時にクラッカーを渡されるんだよ。で、『いちばん最後にクラッカーを引いてください。支配人の挨拶がございますから』って。上映が終わってさ、もう字幕のところなんか泣いちゃってるんだけど。俺なんか。それでまあ、明るくなって。支配人が出てきて。『58年間、本当にありがとうございました』っていう挨拶をする時だよ、『終わった後に引け』って最初に言ってるんだよ?言ってるのに、間違えてパーン!って鳴らしちゃうバカがいるんだよ。

(小林悠)(笑)

(玉袋筋太郎)それが俺だったんだけど(笑)。

(小林悠)えっ、嘘!?(笑)。

(玉袋筋太郎)俺、間違えちゃって(笑)。

(小林悠)気がせいちゃって。

(玉袋筋太郎)感極まって俺、パーン!って鳴らしちゃった。

(小林悠)で、みんなパッて振り返るんですよね。意外と玉さんだ、みたいな。

(玉袋筋太郎)笑いがきた。笑いが。

(小林悠)いいじゃないですか。和んで。でも最後の瞬間をね、見届けることができて。

(玉袋筋太郎)そうそうそう。それで、送り出す時。お客さんを。俺、支配人に挨拶できたんだよ。うん。『ありがとうございました』っつって。で、俺が受けたインタビューを読んでてくれたらしくてさ。

(小林悠)ええ、ええ。

(玉袋筋太郎)『熱くなる文章、ありがとうございました』なんて言われちゃって。

(小林悠)よかったー。

(玉袋筋太郎)よかったよかった。うん。

(小林悠)ねえ。ほら、競輪でね、負けちゃったっていう話もありましたけど。そんな幸せなことがあったんだから、よかったじゃないですか。

(玉袋筋太郎)行って来いですよ、人生!

(小林悠)本当ですね。それでは、今日も行って来いでがんばりましょう。

<書き起こしおわり>

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