大山顕 分譲マンション売り文句のポエム性と魅力を語る

大山顕 分譲マンション売り文句のポエム性と魅力を語る たまむすび

ライターで写真家の大山顕さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。分譲マンションの売り文句がポエムのようになっていて非常に面白いことについて語っていました。

(赤江珠緒)さあ、続いてですね、大山さんが2014年。これにも熱を入れていらっしゃる、マンションポエム。

(ピエール瀧)なんです?マンションポエムって。

(大山顕)マンションポエムって、新聞の折込チラシとか、駅のポスターとかで、高級分譲マンションの売り文句。

(赤江珠緒)ああー!はいはいはい。キャッチコピーみたいなね。

(大山顕)そう。『洗練の高台にそびえるこの地に』。

(ピエール瀧)ああー!あるある!

(大山顕)そう。『あなただけの夢を思い描く』。

(ピエール瀧)『杜の都に○○』って。『もり』っていう字が・・・

(大山顕)仙台の『杜』みたいなね。

(ピエール瀧)あっちの『杜』みたいな。

(大山顕)そうそう。

(ピエール瀧)あるあるある!

(大山顕)あれ、ポエムじゃないですか。どう考えても。なにを言ってるんだ?みたいな。あれが面白いなと思って。膨大な数を集めて。僕、全部ね、分析してるんです。この1年、分析しまくって。

(赤江珠緒)へー!

日本で1人だけのマンションポエム評論家

(大山顕)もうね、僕、マンションポエム評論家ですよ。日本に1人しかいないと思いますけど。

(赤江珠緒)(笑)

(ピエール瀧)あれはなんです?要は売るための宣伝文句というか。キャッチコピーみたいなもんだと思うんですけど。それはもうポエムの域まで達しちゃっていると。

(大山顕)ポエムの域に行っちゃってる。ただ、さっき言ったみたいに、色の名前がどうでもいいのと同じように、マンションに『洗練の高台か。よし、買う!』みたいなことってあり得ないじゃないですか。ねえ。モデルルームに行って、いろいろ長い時間をかけてやるから。もうその頃には、なんてポエムで謳っていたかなんて買う方は忘れているから。あれね、正直たぶんどうでもいいんですよ。

(赤江珠緒)たしかに、そうですね。

(大山顕)あれがいいポエムだから買うっていう人はたぶんいない。

(赤江珠緒)うん。このポエムにグッと来た!っていうようなね。たしかに。

(大山顕)そうそう。だからあれね、非常に我々が高度消費社会に生きてるなと思うのは、たぶん作る方も半笑いで作っていて。受け取る方も本気にしないっていう、誰も本気にしていないメッセージがこの世に流通してるっていうのはすごくいい話だなと思って。

(赤江珠緒)そうかー。

(ピエール瀧)そこのコピーライターに払う金も料金に含まれてるんじゃねーかってね。

(大山顕)いや、あれすごいんですよ。分譲マンションにおける広告費用ってすごいから。あれ、気合の入った、かなり・・・

(ピエール瀧)サイトも作ってますもんね。

(大山顕)そうそう。いいコピーライター使ってるんだけど、誰も本気にしていないっていうのが、これはいい話だなって。

(ピエール瀧)なるほど。

(赤江珠緒)ひとつ、ちょっと読んでみましょうか。

(ピエール瀧)たとえばどんなのが?

(大山顕)ぜひ。

(赤江珠緒)じゃあ、これいってみましょうか。『FROM 神楽坂 東京を掌るすべての時は、ここからはじまる。』

(大山顕)いいねー!僕、プロのアナウンサーさんにこれ、しっとりと読んでもらうのが夢だったんです。

(赤江・瀧)(笑)

(大山顕)叶ってうれしいです!

(ピエール瀧)来た来た!って思うんですね。

(大山顕)ありがとうございます。

(赤江珠緒)ありますね。こういうのね。『時』とかたしかに多いですね。『時を刻む』。

(大山顕)『時を刻む』。そう。でね、マンションポエムで頻繁に言われる表現、言い回しが、さっきおっしゃったみたいに『もり』は『森』じゃなくて『杜』。『とき』はね、『刻』っていう方で。『家』っていう字は絶対に使わなくて、『邸』で『いえ』って読ませる。

(赤江珠緒)はい。

(ピエール瀧)あー!あるね!

(大山顕)とか。あろうことか、『邸』って書いておいて、上にルビが振ってあって、『レジデンス』っていうことがあって。

(赤江珠緒)(笑)

(ピエール瀧)あー。

(大山顕)っていうのがあるし。『たのしむ』っていう字も『楽』じゃなくて『愉』。

(赤江珠緒)愉快の『愉』で『たのしむ』。

(大山顕)そういうのが。あとね、『。』をいっぱいつける。最後に。最後にかならず『。』が。

(赤江珠緒)言い切る感じですか?

(大山顕)あのね、『品格。』みたいなやつとか。

(赤江・瀧)(笑)

(ピエール瀧)もう品格しかないっていう。

(大山顕)かならずね、単語に『。』が結構つく。これね、僕が観測するところ、モーニング娘。とおそらく同時期に『。』をつけるのが始まってるの。マンションポエム界。っていうのがあったりとか。

(ピエール瀧)『これ以上もうないです』っていう言い切りっていう意味での『。』じゃないですかね。

(大山顕)なんでか、『。』をつけたがるんですよね。あとね、歴史と緑が織りなしがち。

(赤江・瀧)(笑)

(大山顕)心地よい風が吹きがち。

(ピエール瀧)悠久の、みたいな。

(大山顕)そうそう!

(ピエール瀧)悠久の時を刻む、とか。

(大山顕)悠久の時をこの丘に刻む。そうそうそう。あとね、多くの文化人が愛しがち。

(赤江珠緒)(笑)

(ピエール瀧)ああ、愛しがち。はあはあはあ。

(大山顕)そびえがちだし、洗練されがちだしね。奏でがち。

(赤江珠緒)うん。奏でる。

(大山顕)奏でちゃう。

(ピエール瀧)それはあるね。

(赤江珠緒)ハーモニーをね。

(大山顕)ハーモニーもね、『奏』って書いて上に『ハーモニー』。

(赤江珠緒)(笑)

(ピエール瀧)でも僕もね、実はそういう分譲系のサイトとかを見るの、好きなんですよ。間取りとかを見るのも結構好きなんですけども。やっぱりだいたいフラッシュのムービーが最初に流れて。そこで、そういういろんな謳い文句と、いい感じの写真。手前に紅葉ナメの奥!みたいな。

(大山顕)そうそうそう。

(赤江珠緒)うんうん。

(ピエール瀧)もうガンガン入れてきてっていう。

(大山顕)あれ、面白いのは、お気づきかどうかわかんないですけど。マンションが映らないんですよ。

(ピエール瀧)ああ、ねえ。

(大山顕)紅葉と川と桜並木と、みたいなやつで。要するにね、このポエムは何なのか?っていうのを1年がかりで僕、考えてわかったのは、何かがポエムになる時って、何かをごまかそうとしてる時なんですね。

(赤江珠緒)はあはあはあ。

(大山顕)マンションポエムは何をごまかそうとしてる。『あれは何を表してるんですか?』ってよく聞かれるんだけど。あれは何かを表してるんじゃなくて、何かを隠そうとしている。で、これは一体何を隠そうとしてるんだ?と思って考えたのは、他ならぬマンションそれ自体を隠そうとしている。現にフラッシュには出てこない。

(赤江珠緒)うん。

(大山顕)で、どういうことか?って言うと、高級分譲マンション。これね、だいたい4000万以上のものに多いんです。でね、港区で最低価格が8000万から上が1億2000万みたいなマンションも、たとえばこう、大宮の2000万みたいなやつも、実は建築としては一緒なんですよ。今日び、マンションっていうのはほとんど工業部材みたいになっているんで。

(赤江珠緒)うんうん。

(大山顕)そうするとね、この価格差を建築で説明できないじゃないですか。『この価格差は何だ?』って言った時に、『これは建っている場所が違うんです』って。

(ピエール瀧)下の土地の値段。

(大山顕)値段。そうすると、土地の値段を、そこ価格差を説明できるだけの、ここの土地がいかにいいのか?っていうことを言うためにポエムが総動員される。

(赤江珠緒)はー!

(ピエール瀧)まあ後はあれでしょうね。だいたいモノが建つ前に分譲って抽選とかで売れちゃうのがあったりするんで。要は有りもしないものを説明する時に、どのぐらいいいか?っていうのを・・・

(大山顕)全部土地にお任せなの。

(赤江珠緒)はー!もう言葉で飾り立てる。

(大山顕)そう。先ほどおっしゃって頂いた、しっとり読んでいただいた、『FROM 神楽坂』。

(赤江珠緒)『FROM 神楽坂』。なんかFROMから始まる。

(大山顕)そう。だからこれ、マンションのことをなにひとつ言ってないでしょ?神楽坂のことしか言っていない。だから要するに建築を隠そうとしてるからなんですよ。これね、面白いんです。

(赤江珠緒)はー。これ、関東とかエリアによって差とかってあるんですか?

(大山顕)あ、あります。ポエム自体の傾向はほとんど変わらないです。ぜんぜん変わらなくて、大阪も東京も名古屋も、どこも結構一緒。なんだけど、地域ごとにテンションがすごい高いところっていうのが各都市にあって。まあ、東京だと神楽坂すごいですよ。

(赤江珠緒)はい。

(大山顕)神楽坂のあのテンションの高さはなんなのか、よくわかんないぐらいすごい高いんだけど。大阪で最近見つけて僕がお気に入りなのね、帝塚山ってご存知ですか?

(赤江珠緒)あ、帝塚山。超高級地ですからね。

(大山顕)あ、そうなんですね。僕ね、こっちの人間で知らないので。これね、マンションポエムを通じて帝塚山がそういう場所なんだって知ったんです。

(ピエール瀧)ありますね。赤江さんに読んでもらいましょう。

(赤江珠緒)『帝塚の丘に銘を刻む 匂い立つ帝塚山私邸 帝塚山・・・』。んっ?んっ?

(大山顕)『帝塚山中』かな?

(赤江珠緒)『帝塚山中ニ丁目 その真髄を綴る ゆかしく誇り景に開く? 帝塚山私邸の構え・・・』

(ピエール瀧)なに言ってるかわかんない!

(赤江珠緒)なに言ってるか、意味がちょっとね・・・

(大山顕)ごめんなさい。ルビも振らずにお渡しして。いまのですごくよくわかるのが、アナウンサーさんをもってしても、なんて読むかわからない当て字を使うんですよ。

(赤江珠緒)そうですね。

(ピエール瀧)ああ、そうね。

(大山顕)まさかね、音読されると思ってない。

(ピエール瀧)帝塚の丘に銘(な)を刻む?

(赤江珠緒)銘(めい)を刻むか。この場合。

(大山顕)そうそう。あのね、これね、帝塚山。ぜひこれ読んでいただきたいんですけど。ついにはね、駐車場までポエムになっちゃった。次のをこれ、笑わずに読んでください。

(赤江珠緒)『帝塚山私邸の構えと私邸の資質を高める 自走式平面駐車場』。

(一同)(笑)

(ピエール瀧)なに?自走式平面駐車場って、どういうこと?要は駐車場ってこと?

(大山顕)そう(笑)。

(ピエール瀧)(笑)。平置きの駐車場ってこと?

(大山顕)言いたいことはわかるんですよ。『立体駐車場じゃないぞ』っていうことを言いたいだけど、それをこんなポエムにしなくてもっていうね。

(赤江珠緒)私邸の。私の屋敷の資質を高めると。はー!

(ピエール瀧)自走式。要は自分で運転なさっていって、平面の駐車場に置けますって。要は平置きの駐車場なのね。

(大山顕)そう。立体じゃないですよ!っていう(笑)。

(赤江珠緒)全国的には普通のことだけど(笑)。なるほどなー!

(ピエール瀧)そうなんだ。えー。駐車場、そうか。いま、ふと違う話担っちゃうけど、大阪で自分の家のことは『駐車場』って言うんだね。『モータープール』って言わずに。

(赤江珠緒)あ、モータープールって言いますね。なぜかモータープール。

(大山顕)自分の家のことは駐車場って言うんですね。

(赤江珠緒)いやー、もういろいろあるんですけど。大山さん、お時間限りがあるので、いちばんこれはちょっと!っていうのを。

(大山顕)これね、行ってみますか?ぜひ。いま、マンションポエム界で、日本中のを調べてるんですけど、いちばんアツいのは東京の臨海部です。

(ピエール瀧)ああ、海っ側。

(大山顕)海っ側。ここにお出ししているのは、『世界へ挑む、東京。』

(ピエール瀧)『。』本当だ。

(大山顕)たった七文字なのに。『世界へ挑む、東京。』

(赤江珠緒)はー!下も読みたいな。

(大山顕)いや、読んでください。その下を。

(赤江珠緒)行きましょうか。『東京を駆け抜ける人々へ その充実の日々はいつしか東京という巨大な年に根付く夢の塊を突き抜けて 世界へ向かい始めていることでしょう。「忙しい」や「多忙」という生き様の言葉を日本流に解釈する時代は終わりました。あなたはその忙しさをしなやかに包みこむ空間を所有すべき時にいます。既存の東京。すなわち、夢の塊で膨張した町に・・・』。

(大山顕)あ、もういいんじゃないですかね?もうずーっと、延々続くんですよ、これ。

(赤江珠緒)すごいな!

(大山顕)延々続くんです。

(赤江珠緒)『無色の東京が、東京の中にあります』。はー!

(大山顕)そうなんです。もう臨海部、こういうテンションです。

(ピエール瀧)でも臨海部のマンションって、ちょっと前も流行ったじゃないですか。あっち側にタワーマンション、バーン!って。

(大山顕)ガンガンやって。

(赤江珠緒)でもこれ、すごいのが『無色の東京』ってことは、色がついてないですよってことでしょ?いまからの町ですよって。

(ピエール瀧)新開発ゾーンってことですよね?

(大山顕)要するにあそこ、行ったことおありの方はわかると思うんですけど。やっぱりこう埋立地バーン!なんで、『ここ、本当に東京か?』みたいな風景なんですよ。なんだけど、ここはたしかに住所で言えば東京。東京に間違いない。東京なんだよ!でも、まあたしかにおっしゃるとおり。よし!『無色の東京』で行こう!みたいな。

(赤江珠緒)(笑)

(大山顕)こう、まっさらだけど、たしかに東京であることには間違いない、みたいなことを、この一言で。

(赤江珠緒)これを考えるプロがいらっしゃるんでしょうね。

(大山顕)いや、もうね、ものすごく会議に会議を重ねられてこれができていると思うと、大人の世界ってミラクルだなって思うんですよね。本当に。

(赤江珠緒)(笑)

(ピエール瀧)ああー。そうですねー。

(赤江珠緒)『無色の東京、いいじゃない!』みたいな会議が、あったんでしょうね。

(大山顕)だから最近あるのは、『これ、免震の一言入れてよ』って営業から言われたんだろうな、みたいな。さっきの駐車場もそうなんだけど。免震ポエムっていうのがあって。『安らぎの免震をここに』みたいなやつとかっていうね。

(赤江珠緒)いや、これは・・・

(ピエール瀧)まあ、ねえ。

(大山顕)いいマンションポエム見つけたら、僕に送ってください、みなさん!本当に。
(赤江珠緒)面白い(笑)。

(ピエール瀧)あと、作れそうじゃないですか?

(大山顕)あのね、来年の僕の目標は、マンションポエムをちょっとスッと、名前を出さなくていいから、黙って作って載せちゃいたいみたいな。関係者の方、ぜひご連絡ください。

(ピエール瀧)そうですね。大山さんの方に。

(赤江珠緒)そうですね。

<書き起こしおわり>

大山顕と安住紳一郎 マンションポエムを語り合う
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