菊地成孔 中原昌也『知的生き方教室』を絶賛する

菊地成孔 中原昌也『知的生き方教室』を絶賛する 菊地成孔の粋な夜電波

菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で、中原昌也さんの新刊『知的生き方教室』を絶賛。夢中になりすぎてしまったという話をしていました。

(菊地成孔)この間、あの、最近ちょっと、また仕事が立てこんでまして。散歩したりする時間が減ってたんですけど。時間ができたんで、紀伊國屋まで散歩に行きまして。で、中原昌也さんっていう、私の友人でもあり、非常に尊敬する小説家でもあり、音楽家でもある人が新刊を出してまして。『知的生き方教室』っていうね。パッと聞き、普通のタイトルなんですけど。中原くん的にはもう酷い・・・酷いっていうか(笑)。それが中原マナーなんですけど。

『知的生き方教室』っていう最新刊が出てたんで、買ったんですよね。めちゃめちゃおもしろくて。もう、国文学っていうのは中原昌也さんだけでいいんじゃないかな?と思いながら、年甲斐もなくっていうか、本当に中学生以来なんですが、歩きながら読み始めちゃって。もう、そんなの中学生の頃はね、結構そういうガキでしたから。やれ、マンガ本だの、小説だのと言わずこう、歩き読みして。車がキーッて止まったりして。そういう牧歌的な時代があったんですけど。

さすがにいまの新宿でそれをやると危なっかしいんですけども。あまりの面白さに中学時代に戻りまして。あの、読みながら歩いてたんですね。こう、ずっと。それで紀伊國屋からずっとこう、南口に向かってですね、高野の方からこう・・・まあ、わかりますかね?GUCCIの前を通ってずーっと南口に向かって。エスカレーター上って。で、南口からFLAGSっていうビルに入って。で、CD買いたかったんで。タワーレコード行こうと思いまして。で、その間もずっと読んでいて。もう、やめられなくなっちゃって。本当に。もう、ゲッラゲラ笑いながら読んでいて。

面白すぎて新宿を読みながら歩く

そんでやめられなくなって、そのままエレベーターだと一気に着いちゃうんで、エスカレーターでゆっくりゆっくり、いちばん上のタワーレコードまで上って。で、タワーレコード行って、CDを買いたいんですけど、もう本が面白くて買えないんですよ。閉じられないから。んで、買いたいCDと探したいエリアっていうのは決まってたんですけど、全然そこに行けなくて。ずーっと本を読みながら、フロアの中をウロウロウロウロ回ってたんですよね。これも、本当に中学生・・・中学っていうか、小学校ですね。の頃を思い出しましたけども。もう、あてどもなくフロアの中をグルグルグルグル、その本を読みながら歩いてたんですよね。

で、やっと閉じられて。もう、閉じなきゃどうしようもないっていうんで、エイッ!とばかりに閉じて。そいで、買いたいCD買って。で、買った瞬間に振り向いたら、向こうから手にカゴを・・・いっぱい買う方はカゴを。私なんかは持ちませんけど。そんな10枚と一気に買わないんで。だけど、あそこってカゴがあるじゃないですか。で、そのカゴを手に下げた中原昌也さん本人が向こうから歩いてきた(笑)。で、すげーびっくりして。『あ、どうも。これこれ、買いましたよ』っつったら、『ああ、つまらないものを・・・』って。そういう感じの人なんですけども。すごい礼儀正しい、暗い感じなんですけど。

『つまらないものを・・・どうもありがとうございます』って言われて。で、カゴの中を見たら、1枚だけDVDが入ってたんで(笑)。ポツンと。それだったら手で買えばいいじゃないか?と思ったんですけど。それがまあ中原昌也マナーっていうか。『それ、なんですか?』っつったら、『ああ、これはブラジルのノイズで。工場のノイズと工場で働いているブラジルの最低賃金の労働者のうめき声がずーっと入っているだけのDVDなんですよね』『そんなの、売ってるんですか!?タワーレコードで』っていう話をして(笑)。

で、ちょっと風邪引いててね。私。もし風邪ひいてなかったら、『飲みに行きましょう』って言ったんですけど。ちょっと風邪ひいてしまいまして。いま、今日も声がこういう状態でね。お恥ずかしい限りというか、そうでもないというか(笑)。そんな感じなんですけども。あの、あんまり気になって。中原昌也さんのことが。『知的生き方教室』のことが気になって。私、すごい下手くそっていうか、ほとんどやんないですけど。検索をかけてみたんですよね。それで検索かけてみたら、日本の文学で1位から100位までに入ってなかったんですよね。まあ、そういう感じなんですよ。それがこの国の民度。国文学読む人の民度っていう感じなんですけど。

上の方にはね、西加奈子さんとかの、すごいこの社会の中でやり場を失った青年が生きる、なんて言うんですかね?それは読んだんじゃなくて、テレビでチラッと紹介したのを見ただけなんですけども。生きるきっかけを見つけて生まれ変わるっていう、現代の太宰治って言われている小説とかが上にきてるんですけどね。まあ、仕方ないですけどね。中原昌也さんの新刊が1位になった国は滅ぶと思いますけども(笑)。まあ、それはともかく・・・

<書き起こしおわり>

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