宇多丸 推薦図書『九月、東京の路上で』と反レイシズムを語る

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宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の中で、関東大震災の朝鮮人虐殺を描いた本『九月、東京の路上で』を映画『それでも夜は明ける』やK DUB SHINEの『物騒な発想(まだ斬る)』と関連付けて話していました。


(宇多丸)今日はもうさっさとね、1曲目いこうと思うんですけど。その前に、このムービーウォッチメンの『それでも夜は明ける』の評、この映画の内容。当然、19世紀アメリカの南部でずっと続いていた黒人奴隷制度の映画ですよね。その映画の内容とも関係するし、この後10時台、かけようかなという曲。まあ、どの曲をかけるかっていうと、来週、3月19日水曜日についに公式の配信がスタートしますK DUB SHINEと私宇多丸。以前、2回ほどかけましたが、『物騒な発想(まだ斬る)』という曲。3月19日、来週配信スタートするので3度目、かけさせていただく。

これ、3度目かけるのはもうひとつ。K DUB SHINEからですね、メールで『ちょっと!本気でプロモーションしてる?』っていう。若干カチンと来るメールが来てたので、うるせーな!ってことでもう1回かけるっていうのもあるんですけど。ちょっとね、それでも夜は明けるのレイシズムとも関係するし。私のヴァースの中でも、レイシストがどうの・・・後ほど聞いていただきたいのですが。の、話をしている。それとも関係する話しでね、いま私が読んでいる本。ちょっとね、まだ途中なんですけど、読んでいる本。非常に今日の内容と関係するなっていうんで、紹介したいんですけど。

この番組に結構いろんな本、送本いただいてて。まあ、読ませていただいたりしてるんですけど。その中でも、あまりにも内容、興味もって。仕事で読まなきゃいけない本、いろいろあるんだけど、さっそく読み始めてしまった本がありまして。ひらがなでころから社っていうところから出ている加藤直樹さんという方の著書で、タイトル『九月、東京の路上で』。副題みるとどういう内容かわかると思います。『1923年関東大震災ジェノサイドの残響』。ジェノサイド。大量虐殺ですよね。なんのジェノサイドか?っていうと、これみなさん、教科書などでは、歴史の授業ではちょろりとは。知識として、頭ではわかっているんじゃないでしょうかね?1923年、関東大震災、ありました。

関東大震災の際のデマと大量虐殺

当然、それ自体も大きな、甚大な被害を出したんですけど、それと同時に、要はいまとなってはデマですよね。デマとわかってるんですけど、『朝鮮人が放火している・井戸に毒を投げている』といったようなデマ、噂を真に受けた人々が、刃物や竹やりなどで行った朝鮮人、さらには中国人なども含まれているんですけど、朝鮮人の無差別虐殺が起こったという。で、これ、そういうことがあったっていうのは歴史の授業などでも。どうなんだろうね?いま、入ってるのかな?教科書とかにちょろっと。頭では知っている人、多いと思うんですけど。

この本はそれの、当時、リアルタイムで書かれた、なんて言うんですかね?手記であったりとかを元に、実際になにが起こっていたのか?っていうのを、頭ではなく、再体験させるというか。追体験するような感じの本で。いろんな人の視点から書かれててですね。という本で。これがなんでこの時期にこの本ね、本としても出されて。僕も紹介しようかなと思ったかって、要するに、後ほどかける物騒な発想の中で僕も言ってますけど、要は、ね、みなさん。ここんところ世の中、右傾化、右傾化と言われて久しいですけど。ちょっとそれとは別の次元で、なんて言うんですかね?排他主義と言いますか。レイシズム。特定の人種に対して、なんて言うの?どんな思想を持っていてもいいけど、ちょっとそういう言葉遣いで。いわゆるヘイトスピーチですよね。どうなんだ?っていう風潮が非常に色濃くなっている。

みなさんご存知だと思うんですけど。そういうね。たとえばプラカードにはさ、『韓国人出て行け!』。出て行けっていうのもあれだけど、殺せ!とか書いてあったりするわけ。で、そういうことをシュプレヒコールで言ってたりして。行進とかしてるんでしょ?と。そういう時代。いまの話ですよ。大正時代じゃないよ。いま、そういう人が行進とかしてるんでしょ?で、なおかつもうすぐこの東京にもまた大地震。遠からず、確実に来るわけでしょ?っていうね。この著者、加藤直樹さん。そういうヘイトスピーチなどがまかり通る。もちろんその、昔と違っていま良識もそれなりにある人が多いですから。『それはアカンぞ!』ってね、カウンターの声もいっぱい上がってます。そっちの方が多く上がっていると思いますけど。

とは言え、そういう空気が世の中にある。そういう突出した人でなくても、メディアとかでさ、なんて言うの?もう空気としてさ、そういう韓国の人なり中国に対して、なんかこう、必要以上に敵意を煽るようなさ、空気。醸成されてんじゃん。現にさ。で、そういう中で、地震。もうすぐあるかもしれない。これ、ねえ。1923年関東大震災の時に、デマで朝鮮人が殺されました。ひでー話だなって普通に僕ら、現代人としてまともに思うけど。えっ?でもいまこの状況で、いまこれマズくない?っていう、その問題意識の元に加藤直樹さん、この本を。最初ブログでいろんな情報を集めて書かれてて。本として出されたと。

で、読んでるとですね、なにがゾッとするって、たとえばですね、最初からいきり立っちゃってるね、群衆みたいなさ。もちろんそれも怖いんだけど。あのね、すごくたとえば、最初は、デマがそういうのが流れているらしいと。で、虐殺とかがあちことで起こっているらしいっていうのを聞いて、『そんなのデマに決っている。朝鮮人が毒を投げ込んでいるだなんとかっていうのは、デマに決っている。かわいそうにな・・・デマでそんな殺されちゃう朝鮮人は』って言ってるような人が、数日後には『どうも本当らしいな』って思いだして。で、怒りにかられて自分もちょっと、たとえばバーッとなっているところに杖持って一発やってやるか!なんて一瞬思っちゃう。で、また数日たってから、いやいや、やっぱりあれ、さすがにねーだろ?違うって。後から思い直して書いてる。

つまりその、最初は、そんなのデマだろ?とか、そんなの酷い!っていう風に言うような、一応良識を保っていたような人も、やっぱり異常な空気の中でそういう風になってしまう。これ、たとえばさ、3.11さ。東日本大震災のさ、記憶も新しいですよ。それに関してみなさん、思い出したりする機会、特に今週、多かったと思うんですけど。あん時のさ、もちろんね、K.I.Z.U.N.A。キズナ!ね。再確認する機会も多かったと思うけど、同時にやっぱりちょっと異常な精神状態。不安と恐怖でちょっと異常な精神状態になっている自分っていうのをちょっと思い出していただきたいんですけど。そういう中で、ちょっとスイッチが入るとやっぱり一気にワーッ!と行っちゃう。これ、他人ごとじゃないと思うんですよね。

これはまあ、佐々木中さん、この番組推薦図書特集で来ていただいた時に、まさにその震災後の高揚感っていうのは非常に危険な方に火がつくことは、それは関東大震災の時からもわかるように、まさにそのことを言ってたわけですね。佐々木中くんはね。なので、それも恐ろしいなと思うし。あとやっぱり、実際の無差別虐殺の様子みたいなのがつぶさにですね。これ、事実ですよ。事実として記録されていること。たとえばここの橋でこういうことが起こった、ここの横丁でこういうことが起こったっていうのを見るとですね、たとえばルワンダでさ、何百万人単位の。ツチ族とフツ族の虐殺が起きました。ホテルルワンダなんかで描かれてましたけど。あれ、やっぱりさ、『おっかないわね。アフリカ、おっかないわね』と思うかもしれないけどさ、いや、やってんだけど!っていう(笑)。

全く同じことをやってるのよ。これ、本当恐ろしいことに。ということで、僕、まだ読んでいる途中なんですけど。是非これみなさんにおすすめしたいと。ちょっと今日のムービーウォッチメン、それでも夜は明けるの最後の締めのあたりでも、これにちょっと関連したことを言いたいと思ってますけど。とにかくその、なんて言うんですかね?不逞朝鮮人みたいなさ、ちょっとイメージ付けみたいなさ。要は人間を、人を人とも思わないように、イメージ付けで十把一絡げに感じるような。要するに、人だと思って共感しないようにする動きみたいなさ。そういうものが、やっぱり恐ろしいというかね。逆に、それでも夜は明けるの中にも出てきますけど、要は一瞬でも共感しかける。俺、ダメ!俺、ダメ!みたいなさ。そういうレイシズムみたいなものが成り立つ時の、非常に危ういといういか、弱い人間の心みたいなね。そういうものも。非常に他人ごとじゃないなと思って、ちょっと紹介させていただきました。

ぜんぜん短くなっていない!ということで、ちょっと私。2番目にラップしておりますが。私のヴァースなども注目してお聞きいただきたいと思います。3月19日水曜日に正式に配信がスタートです。前はかなりフライング気味にかけさせていただきましたけど。K DUB SHINE。非常にポリティカルなメッセージを発するラッパーとしては定評がございます。そして、彼と元々は政治、思想信条的には正反対と言われながらも、こういう時には共闘しようという男、宇多丸。ライムスター宇多丸と。あと、サビにはDELIくんというですね、これも非常に社会的にいろいろ考えて活動しているラッパーが参加してのこちらの曲。プロデュースはYAKKOさん。YAKKOという素晴らしいビートメイカーが作っております。お聞きくだいさい。K DUB SHINE feat.宇多丸で『物騒な発想(まだ斬る)』。



(宇多丸)はい。『まだまだ斬る』なんつってね。これ、当然物騒な、それこそ物騒な英語表現とちょっとダブルミーニングなんですけど。これは誰を『MURDER』して『KILL』するか?っていうと、それはもうアホなレイシストってことですから。よろしくお願いします。ちなみにこれ、元ネタはMasta Aceというアメリカのラッパーの『SlaughtaHouse』っていうヒップホップクラシックがございまして。そちらからの引用でございます。



ということで、改めてちょっと。僕、読みかけですけど是非おすすめしたい曲ということで。もう1回言っておきましょう。ころから社というところから出ています、『九月、東京の路上で』。加藤直樹さんという方の著書。関東大震災の時の朝鮮人大虐殺の恐ろしいレポート。これをね、ちょっと胸に刻むためにも、是非みなさんおすすめしておきたいと思います。あの、オープニングでね、ちゃんと俺のアヌスが・・・とか言って。ちゃんといい話とのバランスは取っておきました。

<書き起こしおわり>
宇多丸 映画評論『それでも夜は明ける』
宇多丸さんがTBSラジオ『タマフル』の映画評論コーナー、ムービーウォッチメンでアカデミー作品賞受賞作品『それでも夜は明ける』について語りました。 (宇多丸)さあ、それ...

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