金田淳子が宇多丸にBL伝授!男のためのボーイズラブ入門 書き起こし

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社会学者の金田淳子さんとお菓子研究家の福田里香さんがTBSラジオ『タマフル』にゲスト出演。BL初心者の宇多丸さんにボーイズラブとは何か?を語りました。


(宇多丸)TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』。今夜は『ボーイズ・ラブとはいったい何か? 男のための、よく分かるボーイズラブ入門!!』をお送りしております。いまのところ、全くわからない部分ばっかりなんですけど。ゲストはお菓子研究家にしてボーイズラブもイケる口、福田里香さんとボーイズラブ研究家、社会学者の金田淳子さんです。

(福田里香)福田里香です。

(金田淳子)金田淳子です。

(宇多丸)はい。どうもよろしくお願いします。社会学者よりもボーイズラブ研究家の方が先に来ちゃってるんですけど、これはいいんですか?

(金田淳子)まあ、社会学者はおつまみみたいなもんで。メインじゃないんで。

(宇多丸)メインはボーイズラブ研究。ということで本日は主に金田淳子さんにボーイズラブについていろいろ教わっていきたいと思っています。本当に、先ほどの問答でも明らかな通り、なんにも知らないですから。なんにも、全く門外漢ですから。

(金田淳子)いやいや、『大脱出』のことを聞いていたら、そうとは思えなかったですが。

(宇多丸)いや、だんだん寄ってきちゃって。その磁場がちょっと寄ってきちゃったんですが。今日は。全くわかっていない。まず、そもそもボーイズラブ。先ほどから『尻・尻』って言ってますけど。どういうものなのか?定義をうかがいたい。

(金田淳子)定義。お答えいたしましょう。それは主に女性が女性のために描く男同士の愛や交わりの物語です。なので、一応『ゲイ文学』っていうものはかなり古くからあるんですけども。20世紀のはじめぐらいから。それは男性が男性のために書いているものが多いので、一応除かせていただきます。

(宇多丸)要するに、男性を好む男性のためのナニではなくて。女性のためのものであるというところが定義の結構大きいところということなんですね。

(金田淳子)女性のためのジャンルです。はい。

(宇多丸)でも、それが男性同士と。女の人が喜んで読むものというとね、異性愛的なものっていうのが1ジャンルとしてあるじゃないですか。それでいいじゃないの?って思うんですよ。素敵な気持ちになればいいじゃないの?

(金田淳子)いやいやいや。もうこっちの。ボーイズラブでの素敵な気持ちも負けてないわけですよ。少女マンガの方に。

(宇多丸)まあ、まずそのボーイズラブの本質に行く前に、どうしてこういうものが成り立ってきたのか?っていうあたり。

(金田淳子)じゃあ簡単に歴史を説明いたします。こちらの女が女のために描く男同士の愛、交わりの物語っていうのは、日本の戦後だけを見ても、もう40年の歴史がございます。60年代末に少女マンガで、それの萌芽的なものが出てきます。男同士のキスシーンなどが出てきます。そして70年代にはやはり少女マンガで『24年組』などと言われる有名作家さんたち。萩尾望都先生、竹宮惠子先生、大島弓子先生、青池保子先生、木原敏江先生など、欠かせない才能が一斉に花開きまして。そこで美少年とか美青年たちの愛の世界が繰り広げられて。もう読者の女性たちもウハウハの世界だったわけですよ。

(宇多丸)ぜんぜん最近盛り上がったものじゃないと。

(金田淳子)もうその時代には既にあった。もう生まれてない方もいたと思います。いま聞いている方で。そして78年にはこのジャンル、当時『少年愛』とか『耽美』とか呼ばれてたんですけど、それを好む人たちのための専門雑誌『JUNE(ジュネ)』というのが登場いたします。

(宇多丸)聞いたこと、あります。JUNE。

(金田淳子)聞いたことが・・・なるほどね。で、この時に『やおい』という言葉が初めてできまして。これは同人誌の世界でできたんですけど。元々は『山なし、オチなし、意味なし』ってことで、そういうストーリーとかがなくて、ただカラミとかが出てくる。そういうのをちょっと自嘲的に言った言葉なんですが。

(宇多丸)自虐的な言葉ですよね。まあ、ポルノ的要素だけを追求してますよと。

(金田淳子)そうそうそう。それがあっという間に広まってしまって。男同士のそういうカラミがあるっていうのを、やおいと言うようになったんですね。

(宇多丸)じゃあ、本当に話とかちゃんとしてても、やおいと呼ぶようになったと。

(金田淳子)ちゃんとしてても、ぜんぜん関係なくやおいと呼ぶと。そして、それとはちょっと別の流れとして、80年代後半にはコミックマーケットを中心としまして、女性たちによる空前のパロディー同人誌ブームが。『キャプテン翼』とか『聖闘士星矢』などの少年マンガに出てくるキャラクターがその同人誌の中で大変なことになっていました。

(宇多丸)大変なことに。その中身はそのキャラクター同士が。男同士のキャラクターがチュッチュッチュッチュ。

(金田淳子)男同士のキャラクターがチュッチュッ以上のことを。

(宇多丸)あ、チュッチュッなんてもんじゃないんだ。

(金田淳子)もんじゃない。まあここで、先ほど話したJUNEとはまた違う文脈で、コメディーとかギャグタッチの作品も非常にたくさん読まれてきます。

(宇多丸)先ほど、耽美なんて言ってたけど。美しい感じだけじゃなくても。

(金田淳子)そうですね。悲劇的な感じのものが多かったんですが、そうではなくギャグタッチの明るい感じのコメディー作品みたいなものも無数に生まれました。で、このような同人バブルを受けまして、90年代に入りますと、女性向けに男性同士の愛とかセックスを描く商業誌が次々登場します。先ほども言いましたように、91年にビーボーイが創刊。で、93年にMAGAZINE BE×BOYと改称して、これが現在まで続くいちばん長い雑誌です。他にもいろいろございますが。そして90年代末にこういう商業誌に載っている作品群を、同人誌とは別の名称があった方がいいよねってことで、『ボーイズラブ』と呼ぶようになったんですね。それが00年代以降に広まったってことですね。

(宇多丸)やっぱり名前がついて、結構助かったってところはあるんですかね?

(金田淳子)まあ、認知。実はやおいとか耽美とかいろいろ呼ばれてたんですけど、そうすると同人誌とか二次創作と全く区別がつかないので、商業誌としてはちょっと困ったなということで。なんとなくボーイズラブと呼びはじめたのが広まりました。そして、00年代の特徴といたしましては、先ほどもちょっとB-BOY対決で出てきましたけど、BLジャンル出身の作家が、BLも描きつつ、一般誌にも登場して大活躍されるようになった。よしながふみ先生とか、雲田はるこ先生ですとか、いろいろな方がいらっしゃるんですね。

(宇多丸)はいはいはい。ということで現在の一大ジャンル化に至ると。これ、まずBL的なとこは昔からあったと。要するに普遍的に女性たちのツボなんですか?これは。

(金田淳子)まあ、そうなのかもしれませんね。ただ文献として女性が書いたものっていうのは戦後にならないとほとんど残らないわけですから。調べようがないですね。もしかすると源氏物語を読んでいる人たちも、平安時代に源氏そっちのけで。源氏だったら女と見るんじゃなくて頭中将との間がちょっとヤバいよねって言ってて、周りの女房たちがキャアキャア言ってたかもしれないんですが。そのような文献は残らないので。

(宇多丸)ちょっと検証しようがないんだけども。でもその作家たちはツボを探り当ててったわけですよね?

(金田淳子)そうですね。作家というか、同人誌と非常に密接なジャンルなので。読者がどんどん作者になるようなジャンルですので、書き手先行のジャンルではないんですよね。

(宇多丸)なるほど。読み手が同時に作り手でもあるような。で、簡単に言うとどこが魅力っていうか。どういう風に楽しんでるんでしょうかね?

(金田淳子)これはですね、私は実は男の人のエロく乱れる姿が見たい。これですね。

(宇多丸)男の人のエロく乱れる姿?

(金田淳子)はい。乱れ咲いている姿が見たいわけですよ。

(宇多丸)男の人っていうけど、それって描かれるのはちょっとフィクショナルっていうか、すごくキレイな感じの男の人ですよね?リアルなさ・・・

(金田淳子)いや、私は二次元とかでも。いろんな嗜好がある。ヒゲもじゃの人とかもすごいいいと思うんですけども。あの、AVとかをあんまり見ないのは、AVはストーリー性とかが少ないんで。やっぱりそのバックグラウンドをすごい見た上で乱れているのがいいんですよ。

(宇多丸)バックグラウンド。関係性というか。この人がこことこうなって、この人がこうなちゃって、うわーっ!みたいな。

(金田淳子)そう。あのシュワちゃんが!?みたいなのが面白いわけじゃないですか。

(宇多丸)たしかにそうですね。シュワちゃんとスタローンの、何十年の歴史があって、ついに!デート!っていう。


(金田淳子)シュワちゃんとスタローンが絡むことになったか!と。それが全く知らないムキムキの人ふたりだと・・・

(宇多丸)本当だ。これ、ただのサムソンだ。

(金田淳子)でしょ?サムソン好きならそれでいいと思いますけど。やっぱりバックグラウンドがあった方が燃えると思うんですよ。

(宇多丸)なるほど。逆に言えばバックグラウンドの部分を理解してさえいれば、別に僕筋肉そのものにフェティッシュな興奮を感じるわけじゃないけど・・・

(金田淳子)そう。誰でも。どんなのでもよくなってしまう。

(宇多丸)イケたりするってことか。

(福田里香)私はだから、『関係性萌え』なんですよね。

(宇多丸)これね、前に『テニスの王子様特集』の時におっしゃったりしてましたよね。まさにその部分。

(福田里香)そうなんですよ。で、私が言っているのは主観的読者と客観的読者がいるんですよ。主観的読者っていうのは、たとえば主人公のヒロインに感情移入できちゃって。私がモテモテっていうのが好きなんですよ。で、そうじゃない読者っていうのが、これは少数派なんですけども、どうしてもいて。居心地が悪くて。ヒロインにどうしても感情移入できないんですよ。そうすると、『目線が上がっていく』って私は言ってるんですけど、どんどんどんどん上がっていって、雲の上に行っちゃう。

(宇多丸)上がるっていうのは客観視的な。俯瞰目線になっていくってことですね。

(福田里香)私がいちばん近い形態としては、『洛中洛外図』とか、屏風絵ですね。だからどこまで行ってもパースが一緒で、雲の上から見てると。で、雲で隠れているところは自分で想像して補いなさいと。

(金田淳子)これですよ、まさに!

(福田里香)で、どこを見てもいいと。

(宇多丸)(笑)。いま、初めて聞いたみたいに感心してるけど。金淳さん。

(福田里香)で、手前の部屋も奥の部屋も同じ大きさで書いてあるから、奥の部屋に興味があったらそこにフォーカスして見たいんですよ。

(宇多丸)ああ、どこにフォーカスするかは自分の勝手でいきたいと。

(福田里香)で、近い雲に乗っている人と話が合うから紅茶を飲みながらずっと感想を言い合っている。遠い雲の人とは離れているから。だって違う部屋を見てるでしょ?だからその人と話は合わない。たぶんね。ただし全体図も見えてるんですよ。屏風ですから。だから、だいたいそういう嗜好がある人に、たとえば文部大臣賞を取れるような感想文を書きなさいって言ったら、まともにちゃんと全員書けると思います。

(宇多丸)おー。

(福田里香)だけれでも、つまんないんですよ。だって脳が余っているから。だからずーっとそういう、『あ、作者が言いたいのはこういう目線だな』っていうのを。

(宇多丸)あ、それをみんなわかった上で。

(福田里香)『行間を読む』っていう言葉がありますが、脳がずーっとカタカタカタカタ動いていて、もうちゃんと読み込めているっていうのは前提の上でぜんぜん違う話をするっていうことですね。

(宇多丸)これ、男同士が絡んでいるところでいくと、僕、いつもね、すごく卑近なっていうか、こっちサイドのあれでいつも考えるのは、男でもレズものが好きな人と、ぜんぜんピンと来ない人がいるんですよ。俺、正直ピンと来ないんですよ。なんでかっていうと、俺いないじゃん!って思って。入れないんですよ。

(金田淳子)はいはい。それですよね。私、最近二村ヒトシさんとお知り合いになって。一昨日、トークショーがあったんですけど。二村ヒトシさんはまさにそのレズものを新しく作り変えたような方で。それまでのレズものは、やっぱり宇多丸さんのような方が見てて物足りないから、最後に男が乱入してきて。レズが2人でやっているんだけど、最後は男とやるっていうような話だったんだけど。実は二村さんはそれが嫌いだったと。男の体を見たくないから・・・

(宇多丸)それね、好きな人はそれを言うんですよ。

(金田淳子)そうそう。女同士だけでやってほしいと。それはかなり私たちというか、BL好きの人に近い感覚の百合好きっていうんですかね。

(福田里香)だぶんその人が腐女子とミラーの腐男子だと思うんですよ。

(金田淳子)そうそう、これが。たとえばBLマンガを読む人が腐男子って言われてるけど、本質的なところでは二村さんは腐男子ですね。

(宇多丸)要は同性の中で閉じた世界が構築されていて。別に自分は関係なくて、上から見てていいっていうのがあれば。さっき、ミラーっておっしゃいましたけど、腐女子的な視点を別に男性で持っている人もいるし。これね、でもね僕もポルノのことを出すとそうなっちゃったんだけど、たとえばアイドルグループ。なんで僕見てるかっていうと、どっちかって言うと関係性を見て。別に疑似恋愛を彼女たちとしたいわけじゃないと。むしろ、チーム同士の中でこの人がこうとかそういう話をしたいと。

(金田淳子)それ。それが腐女子の一里塚。

(宇多丸)一里塚!?第一歩と。その感じってことだ。で、ボーイズラブ。楽しむにあたってですね、なんか基本的なルール。楽しみ方の基本みたいなの、あるわけですか?

(金田淳子)そうですね。BLの世界では既に、いろいろな専門用語が確立していまして。もう聞き飽きたよっていう話かもしれませんが、『受け』と『攻め』っていうのが大事なんですね。

(宇多丸)まあでも、わかっているようでわかってないかも。

(金田淳子)あの、2人のカップルがいるわけですけども。男同士の。その男のうち、ババナを挿れる側が『攻め』、そしてピーチで受け止める側が『受け』なんですよ。

(宇多丸)あの・・・金淳さん。比喩により全くわかりづらくなっているんで。大丈夫ですよ、別に。

(金田淳子)いやいや、私最終的に行きつくところまで言ってしまうので。線が引けないので今日は比喩表現でいきます。

(宇多丸)要するに挿入する側、される側と。する側が攻めで、受け入れる側が受けと。これはまあ、想像つきますね。

(金田淳子)そうですね。作品を見ると、まあ挿れる側の方が執着が強い方っていう。恋をしている方。こいつのことが好きで好きでたまらないから、俺のバナナを挿れたい!って思う話が多いんですけど。まあもちろん逆もあるわけですよ。執着の強い受けの方が、私のピーチにバナナを頂戴!っていう風に迫ってくるのもアリ。いろいろですよ。

(宇多丸)なるほどな。

(金田淳子)それで、この2人がいるときに『カップリング』っていうんですけど。カップリングの表記方法っていうのが・・・

(宇多丸)カップリングっていうのは、誰それと誰それが出来ているという。

(金田淳子)出来ているという話なんですけど。書き方がありまして。たとえば宇多丸さんが攻めで古川さんが受けの場合、『宇多丸×古川』。つまり、タマ×フルとなるわけですよ。

(宇多丸)あ、ウタマル・・・はいはい。とにかく攻めの方を先に書くというルールがある。

(金田淳子)そうです。だいたい『◯◯×△△』とか、すでに『×』を省略して『タマフル』とか書いてあるんだけど、そうしたら『宇多丸さん攻めかー』って。特に攻めの人とか受けの人を定めずに、宇多丸さんがどんな男にもピーチを掘られたいって思っていたら、『宇多丸総受け』です。

(宇多丸)宇多丸総受けっていう、読者がこういうのが読みたいなって時にそれを目安にすると。

(金田淳子)そうです。それが目安になるということです。『宇多丸総受け本ください』っていうと・・・

(宇多丸)同人誌とかでこのキャラクターが、要するに自分がほしいあれがあるわけですね?

(金田淳子)同人誌を買うための記号なわけですよ。

(宇多丸)で、見ていて、『あ、宇多丸は攻めだと思っていたけど、受けあるか!しかも、総受けあるのか・・・ください!』みたいな。そういう目安になると。

(金田淳子)もう売る時もちゃんとみなさんはでっかい紙とかに『古川総受け』とか、逆に『総攻め』とか。

(宇多丸)あ、誰でも。あったら挿れる。

(金田淳子)そうそう。総攻めは総受けに比べると非常に少ない方ですけども。わかりやすく書くわけですよ。

(宇多丸)ああ、なるほど。そんな表記のルールがあるんだ。

(金田淳子)わかりやすいですよ。今日から、もうスタローンとシュワちゃんのどっちがピーチでバナナなのか?っていうことを・・・

(宇多丸)大脱出に関して言えば、僕がさっき言おうとしたのはこういうことですよ。シュワルツェネッガーが受けにあえてまわったところに俺は感動を感じるって言ったのかもしれませんね。そこが言いたかったのかもしれない。

(金田淳子)シュワちゃんがいよいよ・・・

(宇多丸)総攻めで知られるシュワちゃんが、スタローンと組んだ時は、『今日は俺、受けにまわるよ』っていう。

(金田淳子)そうそう。『俺は今回はそっちやってやるわ』っていう余裕を持った受け。

(宇多丸)(笑)。そう。その感じに僕はグッと来たのやもしれないですね。

(金田淳子)もう『スタ×シュワ』ですね。順番。

(宇多丸)そうですね。『スタ×シュワ』ですね。はい。

(福田里香)好きだわ、そういう逆張りで。少ないんですよね。そういうサークルって。

(金田淳子)そう!そう!

(宇多丸)逆張り!?あ、普段はしない。

(金田淳子)そうなんですよ。いかにも受けに見える人が受けになったりすることがやっぱり多いので。普通は。私、そういうの好きですね。普段はガンガン攻めてくし、もうアメリカ軍とか全滅させちゃうみたいな人はね。

(宇多丸)そう。だって歴代の人殺し数でダントツらしいですからね。そんな人が、どうぞ!って。お前の行くこと聞くよって。

(福田里香)それをもう俯瞰で見て楽しむって。

(宇多丸)それ、でも僕できてるのかもしれないですね。

(金田淳子)もうすでに、ナチュラルボーン腐女子というか。

(福田里香)だってやっぱりB-BOYだから。

(宇多丸)(笑)。あ、そうか!B-BOYイズムってやっているから!理解してんのか。

(金田淳子)そうなんです。私、B-BOYイズム、聞かせていただいて。言っている歌詞の内容が本当にまさに。『決してゆずれないぜこの美学 何者にも媚びず己を磨く』。これ、ボーイズラブだなって思ったんですよ。



(宇多丸)ちょっと待って下さい。聞き捨てならないですよ、これ。流れ弾、僕だけの問題じゃないんで。どういうことですか?

(金田淳子)いや、私たちもこの美学とかこのカップリングは譲れないっていうのがあるんですよ。この映画はやっぱり『スタ×シュワ』であって逆ではない。とか、『そんなことをやっていて気持ち悪いから。ちゃんと男女のものを読みなよ』とか言われても・・・

(宇多丸)あ、そういう世間的圧力がないわけじゃない。

(金田淳子)世間的に言われても、媚びない。全く媚びない。媚びず、省みず。

(宇多丸)(笑)。別にこの曲、反省しませんみたいな歌じゃないんだけど(笑)。なるほど。まあまあ、でもね。そうか、通じるものを読み取って。

(金田淳子)私もこれ、自分のテーマソングにしていきたいと思いました。申し訳ないですが。

(宇多丸)じゃあもうとにかく、僕のイメージではね、もちろん好みは当然いろいろあるんでしょうけど。実在しないキレイな非常に抽象化された美少年、美青年同士の絡みなんでしょ?って思っていたけど・・・

(金田淳子)ぜんぜん違います。

(福田里香)あの、もう1個あるのは、私が注目してるのは『画力の獲得』っていうことなんですよ。たとえば昔の少女マンガは男性のたとえば上半身裸に乳首がなかったんですよ。それは画力として描けなかったから。

(宇多丸)それをやると変になっちゃう。

(福田里香)変になっちゃう。だからツルンとして、ないんですよ。描けないんですよ。描いたらなんかおかしいと。

(宇多丸)男の体、描き慣れてないっていうか。僕、下手くそなマンガを描くんですけど、女の人描けないんです。やっぱり自分の同性しか描いてないんですよ。そんな感じなんですかね?

(福田里香)それはやっぱり竹宮惠子先生の『風と木の詩』で乳首を描いたんですよ。やっぱりそれは美しい絵なんですよ。で、ここで1つ画力を獲得したと。で、いまどうなっているか?って言ったら、たとえば初老も美しい。老人の方も美しい。


(宇多丸)ちゃんと初老の人に見えて。

(金田淳子)見える上、逆に魅力。

(福田里香)あとは無精髭も描けなかったし、たとえば手足のすね毛。

(金田淳子)足のすね毛も描けなかったんだけど、いまはもう普通にありますね。

(宇多丸)普通にある!

(福田里香)やっぱりそこに感動するんですよ。1人じゃダメなの。何代も何代も時代を重ねて、いつか到達するんですよ。長くずーっとそのジャンルを楽しむっていうのは、そこが・・・

(金田淳子)そこを見ていくのは面白いですよね。

(宇多丸)それこそなんとなく、『トーマの心臓』とかさ、ああいうのでイメージ的にだいたいああいう感じなんだろうなって思っていたら、とんでもない。ぜんぜん進んでいるぞと。


(金田淳子)いまはもう、ぜんぜん。

(福田里香)ガチムチもあり。

(金田淳子)ガチムチもあるし、ちょっとポチャっとした人もおり、老人ももちろんおり・・・

(宇多丸)あと先ほどね、お話ちょろっとうかがったら、もう人どころか無機物でもイケるっていう。

(金田淳子)はいはい。無機物は結構、2000年以降に・・・

(福田里香)一大ジャンルです。

(金田淳子)昔から、やっぱりこの腐女子読みっていうのは慣れてくると、様々な文章とかを見ただけで。『AがBにもたれかかっている』とか見ただけで、『おっ?AはBのことを好きなのか?』とか。

(宇多丸)関係性を勝手に読み取るようになっちゃう。

(金田淳子)そうそう。それは人間じゃなくても。たとえばペットボトルが机の上に置いてあるとか。そんだけでも、『上に・・・!?』って(笑)。

(宇多丸)ええっ!?

(金田淳子)『上にか・・・』みたいな感じで。

(宇多丸)ちょっと待って下さい!金淳さん、日常生活、おくれてます?

(金田淳子)いや、結構まあ大変なんですけども。なんか自宅からそれほど出ないんだけども、そういった塩梅ですよ。なんか・・・

(宇多丸)ちょっと待って下さいよ。『上に』はどっちが受けでどっちが攻めなんですか?ペットボトルが机の上に。

(金田淳子)ペットボトルの形状からして男性器と思われがちだろうと言われつつも、テーブルがどっしりと構えて受け止めている・・・だが、でもやっぱり形状から言って男性器なのかな?

(一同)(笑)

(宇多丸)いちばんバカみたいな!いちばん低レベルなところに戻っちゃったじゃないですか!

(金田淳子)いや、なんでかっていうと、液体が出ちゃうからなって思って。

(宇多丸)やめなさい!やめなさい!

(金田淳子)あ、そしてやっぱり他にも無機物と言えば時計とか見る時に、長針と短針の関係はなんだろう?って思うじゃないですか。

(宇多丸)長針と短針のどっちが攻めで受けなのか?

(金田淳子)そうそうそう。1時間ごとに長針が短針にどんどん迫ってくるわけですよ。

(宇多丸)長針の方が積極的な感じがしますよね。

(金田淳子)そうそう。『待てよ・・・おい、待てよ!』みたいな感じで。どんどん来るじゃない。短針は本当、なんかね、それを受け止めるっていうか。

(宇多丸)毎回ね、向こうからワーッて来たって。

(金田淳子)そして、秒針も黙ってはいない。

(宇多丸)(笑)。いちばん黙っていない。あ、これ三角関係。そういうのもある。

(金田淳子)三角関係はいちばん美味しいところですよ。やっぱり。

(宇多丸)やっぱりどっちに行くのか?みたいな。

(金田淳子)そうそう。どっちに行くのか?誰があぶれちゃうのか?

(宇多丸)これ、だからあれですよね。ずーっと短針と長針が、俺完全にヤバいな。短針と長針が重なっている時間、やっぱり長いじゃないですか。でもそれだけに離れている時間も長いみたいな。

(金田淳子)そうなんですね!秒針は、そりゃあちょくちょく来るけど、ちょくちょくやってるけど、超早い。

(宇多丸)ああ、1回がね。

(金田淳子)1回1回が早いし、ちょっと目移りしてんのかな?みたいな感じはありますよね。

(宇多丸)これ、俯瞰してんのか?(笑)。

(金田淳子)俯瞰してるじゃないですか。これ見ている時に、『俺はやっぱり短針になりたい』とかは思わないじゃないですか。

(宇多丸)まあ気持ちは想像するけども。

(金田淳子)これですよ。

(宇多丸)っていうことは、この調子で行けばもうグルリと回って。別に男女のアレでもそういう風に別にできると。

(福田里香)はい。そういうの、増えてます。コミケでは。

(宇多丸)BLが一回りして異性愛も有り。

(金田淳子)一回りして、やっぱりでも男女カップリングで選ばれる作品っていうのはやはり男女が対等な感じで描かれている作品が非常に多いんですよ。

(福田里香)いまとなっては。単なるパンチラ要員じゃなくて、ちゃんと役割をこなしている。

(宇多丸)パンチラ要員じゃない、それこそかつてだと受け・攻めが固定的で。

(金田淳子)そう。そう見えて面白くないじゃないですか。

(福田里香)あの、どうせ主人公が好きになるヒロインって最後、くっつくんでしょ?っていうのありきで出てきてたとか。いま、もうわかんないんですよ。たぶんバディ感があるっていうか。それを、たとえばよしながふみさんなんかは『やおいの関係だ』って言って。男女でもあると。

(金田淳子)そう。男女でもやおいですよね。

(福田里香)友達以上恋人未満よりも、ライバル以上敵未満の方が燃えるってことなんです。

(金田淳子)ライバルの方が燃えますよ!だから、俺の背中はお前が守るみたいな。

(宇多丸)じゃあなんとなく、要するに同性っていうか純正培養された抽象的な世界がいいんだって、さっきの画力の世界もそうですけど。それもなんとなくイメージでちょっと違うのかもしんないですね。じゃあね。はい。ということでね、あっという間にあと1分っていうところまで来てしまったんですけど。

(金田淳子)時間が足りないな。

(宇多丸)でもなんとなく僕はわかる気もしなくもないかな?くらいな感じはありますね。それこそ高橋芳朗のア↑コガレ師匠のア↑コガレ妄想とかも、本人がそこに介在しないで。天空から関係性を見るっていう神の視点。

(金田淳子)それです!神の視点がまさに腐女子。

(宇多丸)神の視点がまさに腐女子っていうようなあたりで言われるとすごくわかる気がする。

(福田里香)だから世界の中心で恋愛とか叫びたくないんですよ。

(金田淳子)あ、まったく叫びたくない。むしろ、人が叫んでいるのを見る。

(宇多丸)うんうん。それはだから、僕の周りにはそういう人物が結構多いので。なんかそう考えるとわかる気もしますよね。なんかすごい悔しいけどいいのかな?っていう。最初のB-BOYの覇権争いみたいなところでこんなに譲歩して。安易に譲歩しない方がいいんじゃないか?ってちょっと思わなくはない。

(金田淳子)どんどん開いて来ましたよ。宇多丸さんの菊が。

(宇多丸)菊の門が。入門して・・・受け攻めで言うと僕、いま金淳さんに攻められている状態ですもんね。完全にね。ということで、総受け宇多丸がね、この時間はお送りしておりますが。時報のあともちょっとだけおふたりにはお付き合いしていただいて、お話をうかがいたいと思います。

<書き起こしおわり>
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